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BPOサービスがテクノロジーに傾倒するワケとは?(2/5 ページ)

深刻な人手不足で企業から注目されるBPOサービスだが、もはや人海戦術では生き残れない。そんなBPOの動向を徹底解説する。

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4つの領域に見るBPOサービス動向

 ここで、主要共通業務機能として位置付けている「人事BPOサービス市場」「カスタマーケアBPOサービス市場」「財務/経理BPOサービス市場」「調達/購買BPOサービス市場」の4つの領域において詳細に見ていこう。

 前述した市場予測を、それぞれ4つの領域に分けてその規模を見てみると、カスタマーケア領域がほかの3つに比べて大きなマーケットだということが分かる。この領域にはコールセンター業務が含まれており、他のBPO市場に比べて大きな比重を占めている。そして、2017年で見るとカスタマーケアに次いで大きいのが財務/経理、そして人事、調達/購買と続く。伸び率的には、2017年では人事が最も高く、次いで規模の小さな調達/購買、カスタマーケア、財務/経理の順となっている。

国内ビジネスプロセスアウトソーシング
図2 国内ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)サービス市場、支出額予測 2017年〜2022年(出典:IDC Japan)

人事BPOサービス市場

 人事BPOサービスには、主に新卒や中途など採用に関わる業務や給与計算などが含まれているが、中でも注目されるのが企業において需要が高まっている福利厚生のBPOサービスだ。一般的に福利厚生といえば、事業所が授業員やその家族に対して健康や生活の向上を目的に行う取り組みの総称で、その種類はさまざまだ。

 健康保険など法律的に義務付けられている福利厚生もあれば、保養施設や社員食堂など法定外の福利厚生もある。大手の福利厚生のサービスを見てみると、旅行やライブチケット、リラクゼーション施設優待をはじめ、生活に関わるあらゆる領域のサービスが利用できるようなメニューを備えている。

 福利厚生のBPOサービスが企業で注目されるのは、福利厚生の充実度合いが採用活動に大きく影響してくるためだ。給料を大きく増やすことができない状況の中で、福利厚生を充実させないといい人材が集まらないというのが実態となっている。しかし、自社で福利厚生を充実させようとしても、独自で豊富なメニューを用意するにはどうしても限界がある。そこで便利に利用できるのが福利厚生のBPOサービスというわけだ。

 また最近多くの企業が積極的に進めている働き方改革も、人事BPOサービスには追い風だ。社内風土はもちろん、リモートワークなど新たな働き方に対応した評価制度や人事制度を策定しなければならず、その再設計も含めた形で人事関連の業務をアウトソーシングするという流れもある。さらに、マイナンバー制度に関連したマイナンバー収集/管理のサービスについても、2017年度に人事BPOサービスが高い伸び率を示した要素の1つとなっている。

カスタマーケアBPOサービス市場

 カスタマーケアBPOサービスに含まれる領域は幅広いが、メインとなるのはコールセンター・コンタクトセンター関連のBPOサービスだ。4つの領域の中で最も市場規模が大きく、歴史も古いために需要が一巡している領域でもある。

 ただし、ここ1〜2年の間で状況が変わってきた。それは、クラウドやビッグデータなど第3のプラットフォーム技術を利用して、新しい製品やサービス、ビジネスモデルなど通じて価値を創出するデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の影響を大きく受けているためだ。

 具体的には、AIやコグニティブといった技術を活用して自動化を図ることで、業務の効率化や従来とは異なる価値を提供することが可能になっている。例えば従来のコールセンターでは、音声電話が中心だったが、今はチャットやSNSといった他のチャネルでカスタマーサービスを行うサービスが増加し、その領域にチャットボットなどの技術を活用するといったことが行われている。音声電話に関しても、会話の内容を音声認識にてテキスト化し、テキストマイニングを駆使してマーケティングデータに生かす、という新たな価値提供も、このカスタマーケア領域で行われ始めている。

 マーケティングも含めてテクノロジーの要素がかなり強くなってきているカスタマーケア領域だからこそ、これまで自社で運用してきたコールセンターに高度なテクノロジーをこれまでの人材だけで適用するのが難しいのが実情だ。

 そこで、テクノロジーに強い専門家を有する外部のBPOサービスに、コールセンター業務そのものをアウトソーシングするという動きも顕著になっている。常に進化するテクノロジーをキャッチアップし続けるには、自社内だけでは難しく、テクノロジーに秀でた人材を高額で雇い入れることも困難だ。今まさに、DXの影響を一番受けているカスタマーケア領域のBPOサービスが伸びつつあるといえる。

 なお、CRMから得られた情報を生かすマーケティング領域も一部このカスタマーケアBPOサービスに含まれるが、あくまでコンタクトセンターなどから得られたデータをそのままMA(Marketing Automation)をはじめとしたマーケティング活動に利用するものをこの領域に含めている。ビッグデータ解析などマーケティング単体のBPOサービスは現状含めていない。

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