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日本国内では現在、大手企業を中心にRPA導入ラッシュが続いている。なかでも、代表的な国産RPAソリューションの1つであるWinActor/WinDirector(NTTデータ提供)は、新規提供実績が月50社を超えるペースで伸びており、この1年で800社(最新の数値では1,000社以上)との契約に至ったという。同社の第二公共事業本部 第四公共事業部 第二統括部 RPAソリューション担当 課長、中川拓也氏のコラムによると、特に最近では、RPA全社運用ルールや体制の構築方法というような具体的な手法や、AIによるRPAの高度な自動化に関する内容が問い合わせの中心となってきているというのだ。そこで本稿では、中川氏のコラムを2回にわたり紐解きながら、RPAを軸とするAI活用について考えてみたい。前編では、RPAとAIの定義の違いとよくある誤解について言及したい。
急速なRPA普及の背景にはAIブームがある
いまやRPAは業種を問わず導入が進んでいるが、コラムでは中川氏自身も次のように記している。
「各業種を代表する大手30社が集まる会合にてRPAを紹介する機会を得たのですが、アンケートを取ったところ、既にRPAを導入済もしくはトライアル中の企業が28社、トライアル準備中の企業が2社という、予想を遥かに上回る状況でした」
中川氏自身は、RPAが適する業種や企業規模などを問われる度に「RPAは遅かれ早かれあらゆるところで使われるようなる」と答えてきたということで、コラムではその普及スピードに驚きを隠さない。そしてその急速な普及の背景として、RPAの前に始まったAIによる自動化ブームがあるのではとしている。
AIにより自動化の気運が高まったところに、導入し易く即効性も高い自動化ツールとしてRPAが現れたことで、RPAは爆発的に普及し始めた、というが中川氏の見解だ。一方で、こんな懸念も示している。
「自動化が一気に身近になったという点では良い連動だった訳ですが、この連動が、RPAとAIの関係性を分かりづらくしている面もあると感じます」
そのためRPAとAIを正確に理解してもらうことこそが、効率的な投資と、一層の有効活用に繋がると中川氏は述べている。
RPAとAI、それぞれの定義の違いとは
中川氏はまず、RPAとAIそれぞれの定義について考察している。広く受け入れられているRPAの定義は次のようなものだ。
「RPAとは、ルールエンジン・機械学習・人工知能(AI)などを活用したソフトウェア型のロボットが、パソコンを操作してアプリケーションを扱う各種業務を代行し、ホワイトカラーのデスクワークを効率化・自動化すること」
この中に“ルールエンジン・機械学習・人工知能(AI)などを活用し”とあるが、今のRPAは、人間が「シナリオ」と呼ぶルールを書き、RPAがルールエンジンで再現をするという、ルールベースの段階にある。
次にAIの定義だが、一般的には「機械により人間の知的活動を再現したもの」とされている。その実力は、囲碁や将棋で分かりやすく証明されたことで広く知られているが、医療分野などでもビジネス利用が進んでいる。ここで中川氏が重要なポイントとしているのは、AIは「特定領域では人間を凌駕する能力を発揮している(=特化型AI)」が、「あらゆるものに答えられる賢いAI(=汎用型AI)」はまだ存在せず、その登場は2030年頃と予想されている点である。
RPAとAIの定義を組み合わせると、理論上ではRPAのルールエンジンを汎用型AIに置き換えることで自律型の賢いロボットが何でも勝手に自動処理してくれる仕組みが誕生する。ところが、そのような汎用型AIはまだ存在していない。そのため中川氏は、【自動化率の一層の向上に向け、RPAに特化型AIを組み合わせて考えることが有効】とする。
RPA発展の3段階(Class)に対する誤解
RPAの発展段階は3段階で表現されることが多いが、これももう少し分解して考える方が良いのではと中川氏は指摘している。
ここでRPAの発展段階をおさらいしてみよう。まずClass1はルールベースで動く今のRPAの段階であり、AIの定義でいうと、「弱いAI/特化型AI」に該当する。
続くClass2はRPAによる自動化の中で、特化型AIにより強化された各種技術が活用されるようになる段階だ。例えば、従来型のOCR(光学的文字認識)技術ではテキストデータ化できなかった紙や画像中の文字を、文字認識に特化したAI(AI-OCR)により自動でテキストデータ化することができる。また、音声に特化したAI(AI音声認識エンジン)により音声をデータ化することで、RPAで自動化できる業務範囲が紙や画像、音声を扱う業務にまで広がることになる。
コラムに置いて中川氏は、このようなRPAで自動化できる領域の面的な発展をClass2と考えるのが良いのではとし、RPAツール自体はClass1と変わっておらず、弱いAIで成立できると述べている。
なお、世間ではAI-OCRをRPAツールと称する場合もあるが、中川氏はこうした紛らわしい呼び方に対してOCRの専門家の立場から次のように結論づけている。
「WinActor等のいわゆるRPAツールとPrexifort-OCR等のOCRツールは分けて考えた上で、組み合わせて応用するものとご理解いただく方が誤解は無いと考えています。一方で、OCRツールも「文字入力自動化ロボット」などと定義付け、RPAツールの一種と考えることができるな、とも思います】
そして解釈が難しいのがClass3だ。「強いAI/汎用型AI」が活用され、「自律」的に自動化される段階と説明されているものが多いが、先述の通り、汎用型AIの登場は2030年頃と予想されている以上、Class3に到達するのも2030年頃、ということになる。このため中川氏は「既に実現段階に入っているClass2と大きな乖離がある」点に着目している。
中川氏は、このClass3の手前に、いわゆるClass2とも少し異なる、Class2.5のような中間段階を意識すると、AIとRPAを一層活用し易くなると提案している。Class2がRPAの横への広がり、Class2.5は質的な深まり、といったイメージである。
また、Class1〜Class3は直線的な成長軸で捉えるよりも、Class1・Class2・Class2.5と面で全体像を捉えた方が、RPAとAIの組み合せがイメージし易いのではという持論も展開している。そこで後編では、Class2.5の具体的なAI活用のあり方などに言及していきたい。
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