「IEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)」が日本でも本格普及へ、2019年の目玉となるか(2/3 ページ)
IPベースのLPWAとして注目される「IEEE 802.11ah」がいよいよ日本国内での普及に向けて走り出す。1キロ先に動画を配信可能なポテンシャルに期待して57の企業・団体が結集した。
最後発のLPWA、推進には今が「好機」、その理由は?
IEEE 802.11ahはようやく仕様が確定したところで、具体的な通信モジュールの普及や相互接続検証などは、これから進むことになる。こうした状況からLPWAの中では最後発といえる。この点について802.11ah(Wi-Fi HaLow)推進協議会 会長の小林忠男氏は「良い時期に普及の活動を始められた」と語る。その理由は何か。
「先行する各種LPWA規格では、ビジネスモデルが固まっているわけではなく、とにかくIoTのビジネスモデル検証を進めてきた。いずれも廉価ではあるが、検証を行うにも一定のコストが発生する。中には1国で1オペレーターしか認めないなどの制約があるものもあり、自由な検証や開発を行いにくい点が課題。IoTなどの新しいシステムを開発する際にはトライアンドエラーが必要であり、都度のオペレーター対応待ちとなるとアジリティが足りない。先行利用者はこの制約に突き当たっている。これらの課題の大半を解消するのがIEEE 802.11ahだ」(小林氏)
そもそもIEEE 802.11ahはIEEE 802.11ac規格を10分の1にクロックダウンした仕様をベースにするため、デバイスを開発しやすい。またWi-Fiの長所としてはアプリケーション開発もIP通信を前提にするため、オープンな開発が可能なことが挙げられる。
「キャリアがいなければネットワークを構築できないというわけではない。Wi-Fiでは自分たちがやりたいようにすぐ作れる」(小林氏)
Wi-Fiであることの利点はLPWAプロバイダーからライセンスを得る必要なく、運用できる点にもある。「走りながら考える」ような、トライアンドエラー型の導入も負担にならない。
ただし大容量データを遠くまで伝送できるWi-Fiであるという特長は、他のLPWAと比較した場合、消費電力性能においてはやや不利な面もあるようだ。この点について、推進協議会メンバーである横河電機の長谷川 敏氏は「規格そのものはIoTをターゲットにしているため、バッテリー駆動を前提にスリープモードなどを仕様に取り入れ、対策している」と説明する。
大容量データを1キロ先まで伝送できると、何ができるのか
ユースケースを解説した802.11ah(Wi-Fi HaLow)推進協議会」運営委員の酒井大雅氏によるとIEEE 802.11ahには「IoTのビジネス市場を大きく変えるポテンシャルがある」という。なぜか。
国内での利用周波数などは現在調整中ではあるが、IEEE 802.11ahが920MHz帯を利用することは確定している。酒井氏は「うまくいけば数Mbpsのスループットを期待できる」としており、この場合は映像のストリーミングが可能になる。
「従来のIoTシステム開発では『Wi-FiではオーバースペックだがLPWAでは情報量が不十分』というケースが少なからずあった。センシングデータ+画像程度の情報量が扱えれば裾野が広がる」(酒井氏)
また、IoTデバイスの運用時に課題になりやすい個々の機器のファームアップデートなどのメンテナンスもリモート操作が可能になり、セキュアな環境を維持した運用に寄与できると考えられる。
酒井氏によると、具体的なニーズとして既に自治体からは鳥獣害対策の効率化の案件が持ち上がっているという。
この他、工場や大規模プラントでもセンサー情報に加えて、精細な画像を送ることで「遠隔からの目視点検」も行えるようになる。あるいは、Wi-Fiの設置が進む学校のような場所では、既に敷設されているアクセスポイントがahに対応すれば、例えば教育用端末の通信だけでなく、校舎周りのカメラセンサーの情報も1つのシステムで集約できるようになると考えられる。
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