100万台超の無線デバイスを低遅延で接続可能に! 新無線アクセス方式「STABLE」:5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)
多数の無線デバイスが同時接続しても遅延を最小限にして十分な品質で通信できる「超多数接続・低遅延」技術として国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発に取り組んだ「STABLE(ステーブル)」について解説する。
各端末からの送信データを分別する仕組み
同一周波数・同一時間領域での複数端末接続技術のポイントは、複数端末が送信するデータが重なりあって基地局に届くのをどうやって分離するかである。「STABLE」では図4に見るような方法をとった。「STABLE」ではデータを送信する直前に端末固有の参照信号を合わせて送信する。参照信号により、各端末を識別するとともに、端末局から基地局までの伝搬路の特性を推定することができる。重なりあったデータの中から最も受信電波強度が高い端末(A)からの信号のデータを復号し、この復号データと参照信号から得られる伝搬路特性を用いて復元したその端末の受信信号の複製(レプリカ)を作り、受信した信号全体からレプリカの信号成分を除去する。次に強度が高い端末の信号を復元し、これも同様にその端末の受信信号を複製し、残った信号全体から除去する。これを繰り返して、5つの端末からの信号を取り出すという仕組みだ。
周波数利用効率はLTEの2.5倍に
LTEの場合は1回の送信ごとにデータ信号のほか、制御信号、参照信号を合わせて送っている。「STABLE」の場合も同様だが、参照信号が余計に必要なため、実は同じ周波数・同じ時間領域で送れるデータ信号の領域はLTEの半分になってしまう。だがその一方で収容端末数は5倍になるので、収容端末数の数では実質的には2.5倍の周波数利用効率が実現する。これが大きなメリットだ。理論的には参照信号を一部削っても大丈夫なことが分かっており、いずれは周波数効率をLTEの4.5倍にすることも可能だという。
低遅延を実現する仕組み
LTE方式では、端末からデータを送信するごとに、その無線信号を送るための周波数および時間の無線資源の使用許可(グラント)を基地局からもらう処理が必要となるため、送信するデータが発生してから、データ伝送が完了するまでにかかる時間(遅延時間)が各端末で10ミリ秒程度かかる。一方、「STABLE」ではこのデータ伝送毎の前処理時間を必要としないグラントフリー方式を採用することで、データ伝送の遅延時間の短縮を図っている。これにより、重なりあった信号からそれぞれの端末の信号を復元するための処理には少々時間がかかるものの、5台分の端末データ伝送にかかる時間(送信側と受信側の処理時間を含む)は、先ほど触れたように4ミリ秒以下だった。
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