電話対応の顧客満足度向上をAIが「指示出し」――損保ジャパン日本興亜の3カ年プロジェクト:顧客はどの対応で「ほっとする」か「いらいらする」か
損保ジャパン日本興亜は電話応対ガイドAIの開発に乗り出す。1年間の蓄積情報を基に開発を始め、今後2年かけてAIが顧客対応の品質をリアルタイムで最適化するシステムを構築する。
顧客がどの場面のどの情報に「ほっとする」か「いらいらするか」を可視化できれば、顧客満足度は高められる。これを電話音声を使ったリアルタイム感情分析と組み合わせれば、窓口担当者が次に語るべき話題は自ずと決定できる。
理屈は分かるが、実施には膨大な情報分析が必要だ。音声解析、感情解析の制度も求められることから、実施には相当量の現場データが必要になる。着手するにしてもデータを持ち合わせていない企業も多いだろう。こうした中、損保ジャパン日本興亜は、約1年分の「音声ビッグデータ」をAIに生かす取り組みをスタートする。実に3年以上をかけてAIによる顧客満足度向上を目指す壮大なプロジェクトだ。
損害保険ジャパン日本興亜(損保ジャパン日本興亜)とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2019年4月17日、損保ジャパン日本興亜の保険金サービス拠点での電話応対データを基に、「電話応対ガイドAI(人工知能)」を開発すると発表した。損保ジャパン日本興亜全社員の電話応対品質を高めることが目的としており、NTTグループのAI技術「corevo」を利用する。
損保ジャパン日本興亜では2018年3月に、日本全国の同社保険金サービス拠点に音声認識システムを導入した。同システムはNTT Comが構築したもので、顧客との電話応対内容を音声やテキストで記録する。損保ジャパン日本興亜には、電話応対品質が高く、顧客からの評価が高い社員を「クレドマイスター」として表彰する制度がある。同社では、クレドマイスターの電話応対データを活用して、全社員の電話応対品質を向上させようと検討していた。
損保ジャパン日本興亜とNTT Comは2019年5月から、クレドマイスターの音声データやテキストデータを、自然言語解析技術を用いて分析し、高品質な電話応対の特徴を可視化する予定だ。この特徴を可視化したデータを使って、顧客が電話応対のどの部分に満足したのかを推定する感情分析AIを開発する。例えば、「担当者の応対内容に満足したのか」「その場合はどの言葉や態度に満足したのか」「あるいは応対結果に満足したのか」などを推定するという。
この推定用AIを開発した上で、電話応対中の発話から顧客が満足しているのか、あるいは不満に思っているのかといった感情を分析して、次にかけるべき言葉といった「各場面に最適な応対をリアルタイムでガイドするAI」を、2020年以降をめどに開発する。損保ジャパン日本興亜では、こうしたAI開発の過程で得られた高品質な電話応対の特徴や新たな知見を基に、高品質な電話応対を実践する社員の育成に生かすとしている。
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