「クラウドに移行したらコスト増大」が発生するカラクリ:SIが諸悪の根源?(2/2 ページ)
日本企業のクラウド利用は進んでいる。なのに、どうにもコスト削減に結びついていない上にIT部門は煩雑なExcel仕事が増えがちだという。日本企業のITインフラの現状と課題を取材した。
クラウド利用が高くなる理由
クラウド利用による運用コストの変化を問う設問では、クラウドを利用して「大幅に削減された」「やや削減された」とした回答者が77%に上った。だが「大幅に削減された」は16%にとどまる。この状況を裏付けるように「クラウド利用における課題」では、「コストの削減」(45%)、「リソース消費量の抑制」(32%)、「ワークロード分析によるリソースの課題」(32%)と続いた。
クラウドへのリフトだけではハードウェア投資がない分は確かに安くなるが、セキュリティパッチ適用などの従来通りの運用業務は変わらない。石田氏は「クラウドがまだまだちゃんと使えていない」と調査結果を見る。
「クラウドで最もコストが掛かるものの1つがコンピュートリソース。先進的な企業では、リザーブドインスタンスを使うなど、実はIT部門が中心になってコストを下げる施策をいろいろと実施しているが、まだその段階にない企業も多い」(小路氏)
もう1つ、組織内でクラウド利用の最適化ができていない状況もコスト削減効果が出にくい状況を生む要因になっているという。
「クラウドではともすると事業部門が気にせず利用しやすい状況が生まれる。知らぬうちにリソースを大量に食いつぶしていたり、不要なリソースを確保し続けていたりすることもある。利用状況を可視化したりコストを落としたりといったノウハウがなければ、総合的に見てコスト増になることもある」(石田氏)
IT部門は「さみだれ式」課金請求の配賦計算のExcel仕事に忙殺される
一方、利用料の請求処理の担当部署はIT部門(45%)、システムオーナー部門(22%)、IT子会社(12%)の順で多かった。経費処理に掛かる日数は3〜7日未満(26%)、7〜10%未満(25%)、1〜3日未満(21%)の順だった。中には10日以上掛かるとした回答もあり、運用コスト削減の一方で、クラウド利用料の経費処理には大きな労力がかかる状況が明らかになった。
「請求データをそのまま部門に配賦できればよいが、各部門ごとの特殊な条件などを加味する必要があることがほとんど。そのため、請求が来るたびに社内でExcelなどを駆使して手作業で調整する必要がある。クラウドベンダーごとに『さみだれ式』で請求の処理業務が発生する。これをその都度対応していれば対応日数は増える」(小路氏)
モビンギは、クラウドコスト削減ツール「Wave」、クラウドコスト請求自動化ツール「Ripple」、パブリッククラウド環境構築・運用自動化プラットフォーム「Ocean」を提供する企業。サービスはAmazon Web Serviceの他、Microsoft Azure、Alibaba Cloudにも順次対応する。
今回の調査結果からクラウドへのリフト後にコスト削減しあぐねる状況にある企業に対して、自社ソリューションを通じて、まずはクラウド利用コスト削減を支援し、IT部門の請求処理などの煩雑な業務を改善する予定だ。
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