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「クラウド・バイ・デフォルト」が生むクラウドセキュリティ市場への影響

IDC Japanは2023年までの国内クラウドセキュリティおよびモバイルセキュリティの市場予測を発表した。市場予測から見えたこれからの企業に求められるセキュリティとは。

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 IDC Japanは、2019年から2023年までの国内の企業向けモバイルセキュリティ市場とクラウドセキュリティ市場予測を発表した。

 企業向け国内モバイルセキュリティソフトウェア製品市場を国内モバイエンタープライズセキュリティ市場、SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)のパブリッククラウドに対するセキュリティソフトウェア製品市場をクラウドセキュリティ市場として市場規模の算出および予測を行った。

クラウド・バイ・デフォルトが市場を後押しか

 2018年〜2023年にかけての国内モバイルエンタープライズセキュリティ市場の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は11.4%となり、市場規模(売上額ベース)は2018年の82億円から、2023年には141億円に拡大するとIDC Japanは予測する。

 2020年に実施される国際的大型イベントに向け公衆Wi-Fiが整備され始めているが、モバイル環境におけるWi-Fi通信での盗聴やハッキングなどのセキュリティ脅威に備え、データ暗号化通信やウイルス対策、モバイルデバイスでのコンテナ化、ファイル暗号化などの情報漏えい対策に対する需要が拡大するとみている。

 国内クラウドセキュリティ市場の2018年〜2023年のCAGRは19.1%で、市場規模(売上額ベース)は2018年の114億円から、2023年には273億円に拡大すると予測する。IDC Japanは「デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展によって社内/社外にかかわらず、さまざまなエンドポイントデバイスからクラウドサービスを通じて情報資産を活用する機会が増えることで、クラウド環境へのセキュリティ対策需要が高まる」と分析する。

 政府では、クラウドの利用を第一とする「クラウド・バイ・デフォルト」(Cloud by Default)の原則にのっとり、官公庁および地方自治体でのパブリッククラウドサービスの利活用を促進させようとしている(図1)。

 政府はクラウドサービス提供事業者に対する安全評価基準プログラムの「日本版FedRAMP」(Federal Risk and Authorization Management Program)の創設や、行政の手続きを電子申請に統一する「デジタルファースト法」の整備を進めており、これによって官公庁や自治体だけでなく一般企業においてもパブリッククラウドサービスの利用が進むと考えられる。それに伴い、クラウド環境へのセキュリティリスクを懸念し、市場が拡大するとIDC Japanは予測する。


図1 クラウド・バイ・デフォルトに基づくクラウドサービスの利用検討プロセス(出典:「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」より)

世界で強化されるデータ保護規制、これからは内部脅威対策も

 モバイルデバイスに対するマルウェアは増加し巧妙化している。世界の動きを見ると、「GDPR」(EU 一般データ保護規則)やCCPA(米国カリフォルニア州消費者プライバシー法)、米国政府調達における管理すべき重要情報の保護に対するセキュリティ基準「NIST SP800-171」など、重要データの保護規制が強化されてきている。こうした背景から、これからは外部脅威対策だけでなく、脆弱(ぜいじゃく)性管理やセキュリティポリシーの一元管理、アクセス管理など包括的なセキュリティ対策が必要となるとIDC Japanはみている。

 IDC Japanの登坂恒夫氏(ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャー)は、「モバイルセキュリティやクラウドセキュリティソリューションを提供するサプライヤーは、モバイルデバイスからクラウドサービスを安心安全に利用するためにクラウドサービスへの暗号化通信やアクセス管理など、モバイル環境とクラウド環境の両方に対するセキュリティソリューションの統合化を図るべきである。これによって、企業や組織におけるモバイルデバイスを経由したクラウドサービス利用時の情報漏えい対策の強化が図れる」と考察する。


図2 国内モバイル/クラウドセキュリティ市場 製品セグメント別 売上額予測、2016年〜2023年(出典:IDC Japan)

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