九州電力が発送電分離対応でIT刷新、法的分離に対応した財務会計の新システムが稼働
九州電力が2020年の発送電事業の法的分離に対応すべく、会計系のシステムを再構築した。法規制と自由化への対応を伴う電力会社のIT変革はどんなものか。
電力会社(旧一般電気事業者)を取り巻く環境は大きな変革の中にある。電力の小売りは既に自由化されており、都市ガスの小売り自由化と合わせ、多様な事業者が参入。2020年4月からは、さらなる自由化に向け、組織として送配電部門の中立性を保つために発電事業と送電事業を組織として明確に分離する「法的分離」が義務化される。
発送電分離では、送電部門の会計のみを他の部門と分離する「会計分離」、送電部門を別会社化して会計や従業員などのリソースを明確に分離する「法的分離」などの方法が考えられる。日本では既に会計分離が導入されているが、2015年の「改正電気事業法」によって2020年4月から法的分離を実施することが決定している。九州電力も法的分離に対応した組織体制とIT基盤の整備が必須だった。
こうした中、九州電力が会計系の業務システムを再構築し、2019年4月より本稼働させている。導入したのは「SAP S/4HANA」だ。主な目的は2020年4月から始まる発送電事業の法的分離に対応した会計システムを実現すること、そしてその際に必要になる会計のリアルタイム更新の実現だ。
- 参考リンク:2020年、送配電部門の分社化で電気がさらに変わる(資源エネルギー庁)
旧一般電気事業者の会計システムとしては初のS/4HANA導入
SAPは「旧一般電気事業者の会計システムとしては初のS/4HANA導入」となるこのプロジェクトを最重要プロジェクトに位置付け、導入プロジェクトを推進。SAPは「SAPソリューションの導入をきめ細かく把握し、フルサポートするプレミアムサポートの『SAP MaxAttention』を提供することで、プロジェクトの成功に向けた品質・性能の確保、コスト低減、工期管理およびSAP S/4HANA標準機能を最大活用したエンド・トゥー・エンドの業務プロセス効率化を実現し、九州電力のデジタルトランスフォーメーション推進を支援」したとしている。
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