日本は現金主義とはもう言えない? 増税で一変しそうなキャッシュレス事情
中国や韓国に比べてキャッシュレス後進国だといわれる日本だが、その状況が変わりつつあることが、スマートサウンド・ラボの調査レポートから分かった。さらに、増税を受けてキャッシュレス決済の利用が加速するという。その要因は? 台頭する決済サービスは?
スマート・ソリューション・テクノロジーが運営する「Smart Sound Lab」(スマートサウンド・ラボ)は2019年9月27日、「10%増税でのキャッシュレス決済促進に関するアンケート調査」の結果を発表した。アンケート調査は、全国の10歳代から60歳代の男女206人を対象に、2019年9月2日〜3日にかけて行ったもの。
同社は調査結果を受けて、消費増税とともにキャッシュレス決済への移行が加速すると見ているが、何が具体的な要因になるのか。どの決済サービスが台頭するのか。近年、利用率を急激に増やしているスマホ決済の人気は? 調査結果から見えてきたことを明らかにする。
■記事内目次
- キャッシュレス決済の現在地
- 利用したい決済サービスは?
- キャッシュレスポイント還元制度、国民の反応は?
現金は既にマイノリティーか、キャッシュレス決済の現在地
キャッシュレス決済の利用状況に関する質問項目では、キャッシュレス決済を「利用している」と回答した割合は全体の91.7%に上った。利用しているキャッシュレス決済サービスの内訳は、「クレジットカード」が最も多く85.4%、次いで「プリペイドカード」が55.8%、「スマホ決済」が35%だ。
関連して、現在の主な支払い手段を調べると、「割とキャッシュレスで支払っている」と答えた回答者は全体の75.2%、「ほぼ現金で支払っている」と答えた回答者は24.7%となり、キャッシュレス派が現金派の3倍だと分かる。
現金での決済に比べてキャッシュレス決済の利用率が高いと分かったが、今後はさらにこの傾向が強まるという。例えば、2019年10月に始まるキャッシュレスポイント還元制度を契機に、キャッシュレス決済の利用意向があるかどうかを問う質問に対しては、「全てキャッシュレス決済にする」と回答した人の割合が19.4%、「キャッシュレス決済を増やす」と回答した割合が57.7%だった。
スマートサウンド・ラボは、日本人は現金主義というのはひと昔前のことだと考察し「すでにキャッシュレスが主流になりつつあり、消費増税時のポイント還元によってさらにキャッシュレス化が加速しそうだ」と分析する。
増税を期に、利用したい決済サービスは?
では、増税を期にどの決済サービスが台頭するだろうか。
キャッシュレスポイント還元制度を期に「全てキャッシュレス決済にする」または「キャッシュレス決済を増やす」と回答した77.1%の回答者に「キャッシュレスで支払いを増やした場合、どのような決済サービスを利用するか」を聞いたところ、「クレジットカード」と回答した人の割合は87.4%、「プリペイドカード」は57.9%、「スマホ決済」は52.2%だった。
これを「増税後に増やそうと思っている決済手段」とし、「現在の手段」と比較すると最も利用される決済手段がクレジットカードである点は、消費税増税の前後で変化はないが、利用率の増加率はスマホ決済が最も大きかった。
具体的には、クレジットカードが2.2%増(利用率85.5%→87.4%)、プリペイドカードが8.2%増(同53.5%→57.9%)であるのに対し、スマホ決済は43%増(同36.5%→52.2%)だった。
ちなみに、スマホ決済の利用に積極的な層を調べると、すでに「キャッシュレスで支払い」をしている傾向にあり、今回の制度を機に、全てキャッシュレス決済にするか、キャッシュレス決済の手段を増やそうとしていると分かった。
キャッシュレスポイント還元制度、国民の反応は?
同社は調査で、キャッシュレスポイント還元制度がキャッシュレス決済を普及させるための良いアイデアだと思うかという項目も設けている。「良いアイデアだと思う」と回答した割合は43.2%で最も多く、「悪いアイデアだと思う」は11.7%、「どちらともいえない」は42.2%という回答率となった。
また、キャッシュレスポイント還元制度によってキャッシュレス決済が浸透するかどうかという問いに対しては、「浸透すると思う」と回答した人の割合は36.7%、「分からない」は35%、「浸透しないと思う」は28.6%だった。
「浸透すると思う」と回答した理由としては「お得だから。使わないと損だから」という回答が最も多く、「浸透しないと思う」と回答した理由としては「高齢者は使えないと思う」「現金主義者が多いから」が上位に挙がった。
スマートサウンド・ラボの所長を務める安田 寛氏は、キャッシュレス決済が現金の利用を上回っている一方で、ユーザーは「まだキャッシュレスは浸透していない」や「浸透するか分からない」と考える傾向にあることを指摘し、「キャッシュレスで支払える場所がまだ限定されていることが消費者にそう思わせる要因の1つだ。インフラが整わない背景には手数料の問題を避けては通れない」と述べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 総務省が旗を振るQRコード決済統一規格「JPQR」、普及事業の参加企業が明らかに
キャッシュレス決裁の業界では、事業者や標準化団体が多数立ち上がるなど過剰な競争が行われる状況だ。総務省は国内事業者と共同で「統一QR『JPQR』普及事業」を推進する。2019年8月1日から期間と地域を限定して検証する。 - キャッシュレス推進の起爆剤「QRコード決済」の可能性
モバイル決済において存在感を強めるQRコード決済。国内対応状況やその導入意欲など、アンケート結果をアナリストが徹底分析。 - 「決済代行サービス」シェア(2016年度)
2016年度は725億円の市場規模だと見込まれた同市場。EC利用が広がり当該サービス利用も拡大する中、1位ベンダーとは? シェア情報を紹介する。 - 「モバイル決済サービス」シェア(2016年)
訪日外国人の増加を見据え、カード決済への対応ニーズが高まっている。シェア情報を紹介する。