いよいよ始まる「ローカル5G」、何がどうなる?:編集部コラム
「ローカル5G」がにわかに話題になり始めた。キャリアがインフラを整備する5Gと異なり、ローカル5Gは企業や自治体などの単位で地域や建物を限定して運用できる仕組みだ。2019年12月24日には総務省によるローカル5G事業者の免許申請受付が始まり、初日には10の企業や自治体が申請した。
2019年12月24日、総務省によるローカル5G事業者の免許申請の受付を開始した。今回申請を受け付けたのは、28.2〜28.3GHzの100MHz幅についてだ。今後さらに調整を進め、4.6〜4.8GHzや28.3〜29.1GHzもローカル5Gに充てる計画がある。
今回の28.2〜28.3GHz帯の受付初日に申請した企業・団体は、NTT東日本やジュピターテレコム(JCOM)の他、富士通、NECといったITソリューションベンダーや自治体(東京都)も含まれる。
東京都は「ローカル5G」検証設備を中小企業向けに解放
このうち東京都は所有施設である「都立産業技術研究センター」にローカル5G環境を整備する計画だ。東京都内の中小企業向けにローカル5G関連の製品開発支援を目的とするという。これに先立つ2019年8月には小池百合子東京都知事が中心となって「Tokyo Data Highway」構想を発表していた。
東京都「Tokyo Data Highway」構想におけるアセット開放 東京都のローカル5G施策は2019年8月に発表した「Tokyo Data Highway」構想の一部だ。この構想自体は5Gインフラの整備に東京都の資産を解放、民間のインフラ整備の手続きを簡素化するというもの(出典:東京都)
東京都のローカル5G参入申請は、2019年8月に発表した「Tokyo Data Highway」構想の一部だ。この構想自体は5Gインフラの整備に東京都の資産を解放し、民間のインフラ整備の手続きを簡素化するというもの。具体的には東京都が所有する建物や道路(2200Km相当)、公園(2000ha)、都内全域の信号機(1万6000基)などが含まれる。設備の整備が進みにくい状況を解放し、東京に先進的な技術が集まりやすい環境を整備しようという計画だ。この中で都が所有する施設にローカル5Gの実験場を用意する形になる。
この他、NTT東日本は東京大学大学院情報学環 中尾研究室と共同で「ローカル5Gオープンラボ」を設立する。こちらも検証結果に関する情報の開示を条件に、一定の要件に合致した法人に設備を提供する計画だ。NTT東日本が持つAIやIoT関連の共創ラボである「スマートイノベーションラボ」の設備を利用できるようだ。
具体的なシナリオごと提案するITソリューションベンダー
申請した組織の中でB2B向けの具体的な例を多く示していたのがITソリューションベンダーであるNECと富士通だ。
NECは玉川事業場内に共創施設「ローカル5Gラボ」を設置すると同時に、自社グループの工場にもローカル5Gを導入する。同社はWebページで既にスマートファクトリーや、建築・土木における自律施工/遠隔施工、スポーツ中継などの映像配信、サプライチェーンマネジメント高度化などのユースケースを示しており、「2023年度までに100以上の企業・団体に提供」(同社プレスリリースによる)と意気込む。
富士通もNECと同様にスマートファクトリーや遠隔施工、医療改革などにおけるユースケースを示す。この他、富士通は医療改革向けのユースケースの提案も示されている。
ローカル5G、何がどうなる?
キャリア通信設備としての5Gそのものの普及は2020年以降と目されており、5Gを前提としたエッジコンピューティングやデータの発生箇所に近いところで一時データを処理するMulti-access Edge Computing(MEC)が実際に展開されるのは2023年以降と先の話になりそうだ。ローカル5Gはこれより先に普及が進み、実用化が見えると考えられる。
課題は設備投資となりそうだが、いずれのユースケースも規模次第では投資額を上回る生産性向上が期待できる可能性がある。現在、近距離無線通信やLTE回線を利用している設備であれば流用しやすい場合もあるため、スマートファクトリーなどでの出口例が比較的早期に登場するのではないだろうか。
ここで取り上げたものはローカル5G業界の動向のうち、ほんのごく一部に過ぎないが、今後の展開に注目したい。製品選定支援サイトであるキーマンズネットでも直接選定に関わる情報だけでなく、選定者の皆さまに最新の業界動向をお伝えすべく、折を見てこうした話題にも触れていく予定だ。
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