指摘される5Gのボトルネックとは? 6Gにつながる「Beyond 5G」最前線(1/4 ページ)
早くも「5G」の次世代無線通信システムの議論が始まっている。それが「6G」に先駆けてさらなる高速・大容量通信を追求する技術研究開発「Beyond 5G」だ。「5G」に潜むボトルネックとその解決策とは?
キャリアへの5G周波数割り当てもひとまず決まり、実証実験から実用への扉が開き始めた現在、夢のようなユースケースが限りなく語られる一方で、本当の実用化展開をリアル5Gやトゥルー5Gという言葉で具体的に語るベンダーが増えている。5Gユースケースの実現と、さらにその先のさらなる高速・大容量・多端末接続・低遅延の追求のために何が必要なのかを、6Gに向けて開発が始まった「Beyond 5G」の視点から整理してみよう。
「Beyond 5G」って何?
5Gの次の世代の無線データ通信技術のこと。リアル5Gやトゥルー5Gという用語は、5Gの実力を実用レベルで示す製品やサービスが「夢の世界ではない」本物の技術であると強調したいベンダーが好んで用いている。一方、「Beyond 5G」は5Gの本格的なユースケースを拡大していくのに必要な技術、あるいはさらに高度な無線データ通信システム/ネットワーク(6G)の要素となる技術など、「ポスト5G」「6G」に向けた最新の無線通信技術研究開発のことを指している。
海外ではサービスが始まった「5G」の現状
ここで、いったん「5G」(過去記事参照)が目標としている主なスペックを振り返ってみよう。
1つはeMBBと呼ばれる高速性(最大データレート)で、下り20Gbps、上り10Gbpsという高い目標が示されている。次に挙げられるのがmMTCと呼ばれる多端末同時接続能力で、平方キロあたり百万デバイスの同時接続を可能にすることが想定されている。さらにURLLCと呼ばれる低遅延・高信頼性も求められている。Uプレーン遅延時間は0.5ミリ秒、信頼性は32バイト時のUプレーン遅延1ミリ秒時で99.999パーセントという高信頼・低遅延性能が目標になっている。
これらの実現・実装にはそれぞれ異なる技術が必要になる。理想的には全てを備える5Gネットワークを、ユースケースに合わせて「ネットワークスライシング」して必要な機能・性能を利用していくことが想定されているのだが、現時点では全てを実装したサービスはまだ存在せず、一部のスペックを目標に近づけた5Gサービスがスタートしたばかりだ。
日本においては周波数帯割り当てが決定した段階
日本ではこの4月に携帯電話通信業者4社への3.7GHz帯・4.5GHz帯・28GHz帯の周波数帯割り当てがようやく決定したところだが、同じ4月に米国ベライゾンと韓国のSKテレコム、KT、LGユープラスの3社がどちらも「世界初」と称してスマートフォン向け5Gサービスを開始している。日本でも「5G」実用化への研究開発は以前から続けられてきたはずだが、5G対応の機器類開発・製品化についても海外勢が先行しており、日本製5G携帯基地局用機器は世界シェア1パーセントにすぎない。川西教授は「日本はもともとシステムを提供する側だったのに、5Gでは海外製製品のユーザーの立場に立たされている」と、市場の主導権が海外にあることを憂える。すでにグローバルな通信業者に単独で競争を挑むのが困難になっているのが5Gの現状なのだ。そこに足りない要素をどう補い、発展させて、やがて来る(2030年代)6G時代に備えられるかが、この領域の先進的な研究開発の焦点になっている。それこそがBeyond 5G研究開発である。
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