Wi-Fi 6とは? IoT時代に最適な無線LAN「IEEE 802.11ax」(1/3 ページ)
2019年度後半に最終承認される予定の無線LAN規格「IEEE 802.11ax」。Wi-Fi 6とも呼ばれる新たな規格がいよいよ実装され、既にReadyな状態で製品出荷も始まっている。このIEEE 802.11axとはどんな規格なのか、スループットを支える技術概要に迫ってみたい。
無線LANとは
家庭をはじめ、今や仕事の上でも欠かせないインフラの1つとなっている無線LAN。PCはもちろん、スマートフォンやIoTをはじめとしたセンサーデバイスなどのネットワーク接続に利用され、ワイヤレス環境において快適な通信を実現するための重要な基盤となっている。現在広く利用されてている無線LANの規格は、IEEE(米国電気電子学会:Institute of Electrical and Electronics Engineers)が策定しており、IEEE 802委員会におけるIEEE 802.11グループによって標準化されている。
また、無線LANが登場した初期には機器同士の互換性に課題があったこともあり、現在でも無線LAN技術の標準団体であるWi-Fi Allianceによって相互接続性の認定テストが実施され、合格したものに対してWi-Fi認定ロゴが与えられるようになっている。厳密にいえば異なるものの、無線LANとWi-Fiは同じ意味としてとらえても差し支えない。
現状の無線LAN規格
ここで無線LAN規格の変遷を振り返ってみよう。1997年に標準化された2.4GHz帯の「IEEE 802.11」を皮切りに、1999年には2.4GHzの高速化規格「IEEE 802.11b」と5GHz帯の「IEEE802.11a」が、2003年には2.4GHz帯でさらに高速化した「IEEE 802.11g」が、2009年には送受信双方で複数アンテナを送受信双方に搭載することで通信品質を向上させるMIMO(Multi-Input Multi-Output)を実装した「IEEE 802.11n」が標準規格として策定された。そして現在最も高速な規格として利用されているのが、2013年に標準化された「IEEE 802.11ac」だ。
そして、2019年後半に最終承認が予定されているのが、今回紹介する「IEEE 802.11ax」という規格。IEEE 802.11ax自体は2017年にドラフト2.0版の修正が行われており、2018年5月にさらに改良したドラフト3.0版が策定された。今後最終承認されるのはドラフト3.0版を基にした仕様だ。
IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)とは
IEEE 802.11axは、現在最終承認待ちの新たな無線LAN規格であり、IEEE 802.11acの拡張として登場したもの。5GHz帯のみの対応だったIEEE 802.11acとは異なり、IEEE 802.11n同様に2.4GHz帯にも対応しており、160MHz幅を利用した場合、最大無線(PHY)レートは理論値ながら9.6Gbpsとなる。また、MIMO使用時には最大8ユーザーが同時接続可能な規格だ。PHYレートが6.9GbpsだったIEEE 802.11acに比べると1.4倍ほど向上、同時接続も2倍まで拡大することになる。
PHYレートだけを見るとスループットが劇的に向上したようには感じないが、実はIEEE 802.11axが目指すのは単一端末のスループットではない。その目的は、無線空間を高効率(High Efficiency:HE)に利用することで、接続する複数端末全体のスループットを増やすことにある。ようは端末単体でのスループットを重視するのではなく、無線空間全体を最適な形で利用できるようにした規格なのだ。屋外環境も想定し電力効率を改善させることも目標の1つとなっている。
なお、Wi-Fi Allianceは「IEEE 802.11ax」「第6世代のWi-Fi」ではなく「Wi-Fi 6」と呼ぶことがアナウンスされている。この変更に合わせて、IEEE 802.11nは「Wi-Fi 4」、IEEE 802.11acは「Wi-Fi 5」と呼ぶことになる。
IEEE 802.11axが登場した背景
新たな規格が策定される無線LANだが、今回のIEEE 802.11ax策定にはどんな背景があるのだろうか。
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