IaaS/PaaSの市場規模がハウジングを抜く 国内データセンタービジネス市場予測
富士キメラ総研の調査によると、従来データセンターサービス市場の中心であったハウジング市場をIaaS/PaaS市場が上回る結果となり、今後もその傾向は顕著になると予測されている。また、これまで半々だった国内のオンプレミスとデータセンター内稼働サーバの割合にも、大きな変化が訪れそうだ。
富士キメラ総研のデータセンターサービス市場予測の調査結果によると、2019年のデータセンターサービス市場は2兆2381億円が見込まれる。従来、ハウジングが市場拡大をけん引してきたが、大手クラウドベンダーによって展開されているIaaS/PaaSが好調に拡大し、ハウジングの市場規模を上回るとみられている。同社は、今後はIaaS/PaaSの伸びが顕著になり市場をけん引するとみており、2024年のデータセンターサービス市場の予測は3兆2549億円になると予測する。(下図参照)
カテゴリー別では、IaaS/PaaSが既存ユーザーの拡張に加え、ホスティングやハウジングでサーバ管理していたユーザーの移行需要が高まり市場を拡大している。2019年は「Windows server 2008」のサポート終了時期だったこともあり、オンプレミスからの移行需要が高まり市場規模は5963億円の見込みとなった。さらにIaaS/PaaSは安価に利用が可能であることや、人工知能(AI)と機械学習、ビッグデータの活用に加え、IoT(Internet of Things)用途のサービス拡大やデジタルトランスフォーメーション(DX)基盤といった新規需要も高まっており、今後も新規ユーザーを獲得し2024年には市場規模が1兆3769億円と予測され、2019年の2倍以上に伸長していくとみられている。
ホスティングは、これまでWebページサーバとして需要を獲得していたが、IaaS/PaaSへの移行が進み縮小傾向だ。また「Office 365(現Microsoft 365)」といったSaaSの普及も縮小の要因とみられる。一方で、アウトソーシング型のホスティングは、グループ企業のシステム運用やプライベートクラウド基盤のフルアウトソーシングニーズの高まりもあり、横ばいから微増で推移していくと予測される。
ハウジングは、システム基盤としての利用は需要が一巡したものの、クラウドアクセスポイントとの接続やインターネットエクスチェンジ(IX)としての利用に加え、自社でデータセンターを運用してきた金融業界などの需要を獲得している。アウトソーシング型のハウジングは強固なセキュリティ環境が求められる基幹系システムでの運用が多く、クラウド利用を敬遠するユーザーから安定的な需要を獲得しているという。
通信回線サービスは、IaaS/PaaSへアクセスする際のセキュリティ強化、回線速度強化などを背景に、専用線やデータセンター内のダイレクトアクセスなど高付加価値となるサービスの需要が高まると予想される。共同利用は、公共系で安定的な需要を獲得しているが、市場構成比の高い金融系では需要が一巡したことから微増となっており、全体でも微増で推移していくとみられる。
2024年には国内サーバ稼働総数の7割がデータセンター内に所在
調査結果では、データセンター内の稼働サーバ台数が2019年の169万台から2024年には251万台まで増加し、国内サーバ稼働総数の内70%以上がデータセンター内に所在するようになるという予測も示された。
一方で、企業や官公庁などが自社に設置するオンプレミス稼働サーバ台数は、2019年の147万台に対して、2024年には102万台まで縮小すると予測されている。これは、BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)などユーザーの災害対策意識向上によって、サーバの移行や新システムの構築でIaaS/PaaSの採用が増加していることなどが要因として挙げられる。富士キメラ総研は、データセンター内の稼働サーバ数はオンプレミスからの移行や既存ユーザーの拡張などで今後も増加するが「仮想化技術によるサーバ統合」「サーバスペックの向上」などを理由に、増加ペースは鈍化していくとみている。
本記事は、富士キメラ総研が2020年4月21日に公表した「データセンタービジネス市場調査総覧2020年版 市場編/ベンダー戦略編」の概要プレスリリースを基に作成したもの。同調査は、2019年10月〜2020年2月にかけて実施された。「市場編」では、ホスティングやハウジング、IaaS/PaaSなどデータセンターサービス8品目と、サーバやストレージ、ルーター/スイッチなどデータセンター関連製品17品目の市場を調査、分析し将来を展望した。「ベンダー戦略編」ではデータセンター事業者の動向を整理し、Webアンケートによるユーザー調査を実施している。
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