経理の業務も自動化へ 日本通運が導入した経理業務DXの中身
日本通運は経理処理に「SAP Account Substantiation and Automation by BlackLine」を採用した。「タスク管理」と「勘定照合」の2つの機能を本社と一部の子会社から導入し、段階的にグループ全体に広げる。
日本通運が経理業務の自動化と効率化を目指して「SAP Account Substantiation and Automation by BlackLine」を採用した。SAPジャパンとブラックラインジャパンが2020年8月3日に発表した。
SAP Account Substantiation and Automation by BlackLineは、経理管理に特化したクラウドサービスを提供するブラックラインとSAPジャパンの協業による経理業務支援サービスだ。このソリューションのベースになっている「BlackLine」はEFCA(Enhanced Finance Controls and Automation、高度な財務コントロールと自動化)ソフトウェアとして「決算自動化に特化した統合クラウドソリューション」を標ぼうするクラウドサービスで、SAP ERPの他、OracleなどのERPの経理業務を連携して業務の自動化を支援する。
日本通運はこれを採用することで経理部門のデジタル化を推進する。まずは本社と一部の子会社で「タスク管理」と「勘定照合」の2つの機能を利用する。その後、段階的にグループ全体に導入し、決算時の入力作業や確認作業の効率化を目指す。
脱・Excel、脱・紙を徹底、グローバルで決算業務を標準化、会計システム統一へ
日本通運は、同社の創立100周年に当たる2037年に向けた長期ビジョンとして、「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」の実現を目標に掲げている。その一環として経理部門については、全世界のグループ会社で決算業務を標準化するため会計システムを統一するなど、グループ全体のガバナンス強化を目指している。今回のSAP Account Substantiation and Automation by BlackLine導入はそうしたグループ全体の最適化の一環といえる。
現在は長期ビジョン実現のためのステップとして2023年までの中期経営計画に基づき、グローバル経営基盤確率を含む「コア事業の成長戦略」と併せて国内事業もさらなる収益力強化を進めている。これらの活動の中に「グループの全体最適を実現する基盤整備」や「業務の効率化(自動化、機械化)、省力化」といった取り組みも含まれている。
SAPジャパンとブラックラインの発表によれば、現在はまだ日本通運グループ全体の経営基盤整備の渦中であり、グループ内に複数種の会計システムが使われている状況だという。このため、データ集計が非効率で、決算業務は紙や表計算ソフトを使った属人的な業務が多く残る。さらに決算業務の進捗度や、決算関連のあらゆる情報が可視化できていないことも課題になっている。
日本通運がSAP Account Substantiation and Automation by BlackLineを導入したのは、こうした経理業務の非効率を解消するためだ。同社は、口座残高などの諸勘定の照合作業や勘定整理の自動化の他、グループ各社の決算業務を標準化し、決算の進捗状況を監視するために、SAP Account Substantiation and Automation by BlackLineを利用する。
具体的には、発生した取り引きを会計システムで仕分け計上し、それを照合チェックした上で試算表を確定するといった決算プロセスのうち、照合チェックと試算表確定をSAP Account Substantiation and Automation by BlackLineで自動化した。これらは決算業務で最も負荷のかかる処理で、手作業では誤りが発生しやすかったという。
試算表確定後に財務諸表を作成するプロセスでは、メールやExcelで管理していたため、状況を把握しにくかった属人的な業務管理をリアルタイムに可視化できるようにした。同時に最終的な会計監査も一元管理できるようにした。
なお、日本通運は、SAP Account Substantiation and Automation by BlackLineの導入によって、決算業務をリモートでも作業できる環境を構築した。新型コロナウイルス感染症対策だけでなく、自然災害の発生時などにも業務に対応できるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「財務部長が決死の覚悟で出社」もあり得る状況、緊急事態のテレワークがあぶり出した企業の明暗
世界的な感染症の流行により経済の停滞が懸念されるが、日本の企業の状況はどうだろうか。財務経理、管理部門では、事業の停滞や資金繰りの懸念だけでなく、押印のために出社するリスクも出てきているようだ。 - 味の素はなぜアクセンチュアと会社を立ち上げるか
2020年4月をめどに味の素がアクセンチュアと新会社を設立する。「グローバルスペシャリティカンパニー」を目指し、持続可能な成長を実現するというが、一体、どういうことだろうか? - 無駄仕事で忙殺される中小の経理、RPA×freeeで何ができるか
経理担当者は本当に経理の仕事で忙しいのか。freeeは、中堅中小企業の経理業務を向上させるためにfreeeとRPAの連携を推奨する。会計業務量を従来の約30分の1に削減した実績もあるfreeeと、RPAを連携させる意義とは。 - 貴社の資金繰りを判定するAI――FinTechはどこまで進むか
決算書なしで銀行から融資を受けられる時代が来た。各所で進むFinTechを支えるAIはどういったものだろうか。