2020年10月の電子帳簿保存法改正で経理の業務はどう変わるか:編集部コラム
2020年10月、改正電子帳簿保存法が施行され、経理業務のペーパーレス化が進むとされる。いま準備しておくことは何だろうか。パンデミックの状況下で従業員に「決死の出社」をさせない働き方の提案が活発だ。
「決死の出社」の悲劇はもう繰り返さない
2020年10月の電子帳簿保存法改正(「令和2年度(2020年度)税制改正」)は、経理業務のペーパーレス化を推進するものとして期待されている。電子データがあれば、紙の領収書や請求書を保存せずにすむため、明細の印刷や紙の伝票のやりとりが不要になる。近距離交通費精算などは、ICカードの記録を読み取って経費精算サービスに情報を記録すれば、領収書や記録を紙で保管したのと同等に扱われるようになる。パンデミックの状況下で経費精算や決算のために従業員に「決死の覚悟で出社」を求める必要はなくなるだろう。
2020年4月に日本CFO協会が発表した「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」では、調査時点(2020年3〜4月)でテレワークを実施できていない企業の77%が紙の書類をデジタル化できておらず、テレワークを実施している企業でも紙の書類のデジタル化に対応できている企業は36%だった。また、テレワークを実施または推奨した企業であっても「テレワーク実施中に出社する必要が発生した」と回答した割合は41%だった(関連記事)。
経理業務の効率化に向けてプラットフォーム化を目指す
経理業務のデジタル化を推進する法整備の進展に合わせ、「楽楽精算」(ラクス)やマネーフォワード、コンカーといったクラウド経費精算サービスが注目を集める。SaaS型のため従業員が在宅でも手続きしやすく、クラウドサービスで一貫して手続きを進めれば、領収書などの保管を不要にできるからだ。また、今後利用企業の拡大が見込まれる経費精算の電子化では、プラットフォーム化を目指す動きも活発だ。経費精算の単機能だけでなく、業務効率改善を目指した協業の動きも目立つ。そのうちの一社がROBOT PAYMENTだ。
ROBOT PAYMENTは2020年7月2日、経理の新しい働き方を共創するプロジェクト「日本の経理をもっと自由に」を始動すると発表した。freeeやランサーズ、マネーフォワードなど、50社の賛同を得ており、年内に賛同企業を100社まで拡大するとしている。同社は経理業務の電子化は取引先の対応も必要との理由から、経理業務を電子化する企業のすそ野を拡大する目的で、プロジェクトの賛同企業に自社の「請求管理ロボ」の導入コンサルティングなどを実施する。「請求管理ロボ」の導入コンサルティング費用の無償化は7月2日〜10月1日までの3カ月間だ。将来的にはおよそ50%以上の企業が請求書電子化サービスを導入する状況を目指すとしている。
ROBOT PAYMENTのプロジェクト発表会の様子 壇上はROBOT PAYMENT社長 清久建也氏。同社は独自の調査を基に請求書の電子化を望む企業の経理担当者の数を184万人と推定している(出典:ROBOT PAYMENT)
2021年度の会計をフルリモートにするには、いつから着手すべきか
経費精算や財務経理業務の電子化だけでなく、決算業務そのものの電子化を進める動きも活発だ。
クラウド型決算プラットフォーム「BlackLine」を提供するBlackLineの日本法人であるブラックラインも、2021年3月までに日本企業の「リモート決算」を目指して、国内のITソリューション/サービス提供企業10社1団体と「リモート決算推進共同宣言」を発表した。参加したのは、アスタリスト、アビームコンサルティング、EY日本有限責任監査法人、SAPジャパン、オープンテキスト、コンカー、セゾン情報システムズ、日本IBM、プロネクサスだ。
BlackLineはSAP、Oracle、NetSuiteといったERPなどの経理財務システムを補完し、決算業務管理と経理自動化を支援するサービス。今回の共同宣言の賛同企業と協業することで、勘定照合業務の自動化や財務諸表の可視化、監査や開示資料の対応などの業務を一元化できるとしている。2020年8月3日にはSAPと共同で日本通運の経理部門における業務改革を支援することも公表している(関連記事)。
同社は3月決算企業の場合、2021年度の本決算と監査をフルリモートに移行するには、2020年10月をめどにリモート決算の利用をスタートすることを推奨しており、その場合は8〜9月で導入検討を進めることを推奨している。
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