IT資格の取得状況(2020年)/前編
2020年はコロナ一色の1年だったが、IT資格の保有状況に何か影響はあったのだろうか。また読者が今狙っている資格はどれか。アンケート調査を基に、IT資格取得の今をお伝えする。
キーマンズネットは2020年11月6日〜11月20日にわたり、「IT関連の資格保有に関するアンケート」を実施した。全回答者数144人のうち、情報システム部が31.3%、製造・生産部門が20.1%、経営者・経営企画部門が11.2%、営業・販売・営業企画部門が9.0%などと続く内訳であった。
今回は、IT関連資格の「保有状況」や「保有するIT資格」「資格を取得する上で重視するポイント」「今後取得したい資格」「IT資格を取得しない理由」など、資格取得状況を把握するための質問を展開。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
保有IT資格は国家資格が中心、クラウドや仮想化分野も増加傾向
自らのITスキルや知見を示す手段でもあるIT資格だが、現在の保有状況はどうだろうか。まず「現在何らかのIT資格を保有しているか」と尋ねたところ、64.6%が「保有している」と回答した(図1)。年代別では40代後半から60代前半までの世代では、資格保有率が7割と高い傾向にあった。
取得割合の高いIT資格は「基本情報技術者」(46.2%)、「ITパスポート」(21.5%)、「応用情報技術者」(18.3%)などが上位に挙がり、次いで「情報セキュリティマネジメント」(15.1%)、「ネットワークスペシャリスト」(14.0%)、「MCP(Microsoft認定プロフェッショナル)各種」(9.7%)となった(図2)。
2019年11月に実施した同様の調査と比較しても上位の顔ぶれに大きな変化はなく、例年通り国家資格を取得する割合が高い。また前年から続く傾向として「情報セキュリティマネジメント」や「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」といった情報セキュリティ分野の資格が伸びている点に加え、「AWS認定各種」「Microsoft Azure認定各種」「VMware認定資格各種」といったクラウドや仮想化分野の資格取得割合も増加傾向にあった。COVID-19の世界的流行によるテレワークの浸透により、こうした分野に注目が集まっているものと考えられる。
資格取得者の約7割が「IT資格が役立つ場面がなかった」
全体の64.6%と回答者の半数以上が何らかのIT資格を保有していることが分かったが、資格を保有することで何か役に立った場面はあったのだろうか。資格保有者を対象に「IT資格を保有していて役に立ったと感じることはあったか」と聞いたところ、75.3%と大半が「特に何もなかった」と回答する結果となった(図3)。もちろん「昇進、昇格した」(8.6%)や「入りたいプロジェクト、案件に参画できた」「就職、転職に役に立った」(7.5%)など、役に立ったケースも一定数回答はあったものの「特に何もなかった」とする声と大きな開きが見られた。
関連して「資格取得の際に重視するポイント」についても尋ねたところ、1位は「実務に生かせるかどうか」(67.7%)、2位は「汎用(はんよう)性の高い資格かどうか」(43.0%)と続き、3位は「就職、転職に役立つかどうか」(40.9%)で、このあたりが上位に入る結果となった(図4)。
2020年はコロナショックによる景気悪化で就転職市場が伸び悩み、また働き方のシフトを余儀なくされたこともあり、実務に生かせる機会が減少した。資格は取得したものの“期待外れ”の要因になったと見ることもできそうだ。
「次に狙う資格は何ですか?」読者が答えた注目資格
この先、読者はIT資格の取得をどう考えているのか、またどういったIT資格に着目しているのだろうか。IT資格取得に対する意欲と注目するIT資格について尋ねた。
まず回答者全員に対して「今後、取得したいまたは取得予定のIT関連の資格はあるか」を聞いたところ、50.7%が「ない」、49.3%が「ある」と回答を二分する結果となった。
続いて「今後、取得したいIT関連の資格」について聞いたところ、取得希望割合が高いIT資格は、1位「AWS認定各種」(21.1%)、2位「応用情報技術者」(15.5%)、3位は同率で「Microsoft Azure認定各種」「ネットワークスペシャリスト」(14.1%)などが上位に挙がった(図5)。2019年から2020年にかけて保有割合が伸びたクラウド分野の資格が引き続き注目されている。
一方、「今後取得予定がない」と回答した人に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「必要性を感じないため」(61.6%)で、次いで「仕事などで忙しく勉強時間が取れないため」(34.2%)、「昇給や昇進につながらないなど資格を取得するメリットがないため」(31.5%)、「受験費用が会社負担ではないため」(17.8%)などとなった(図6)。
2019年と比較して外発的な動機で資格取得に臨む傾向が強い中、就転職市場が活発とは言えない現状では資格取得が有利に働かないと捉えている表れではないかと考える。それよりもコロナ収束の先行きが見えない中、自社業務に集中することで企業利益に貢献し、その過程で積み上げた成果や実績、評価を基に、市場が上向いたタイミングでキャリアチェンジにつなげようという思考が働いているとも予測できる。
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