日本のDXは顧客そっちのけ? 世界と乖離した国内DXの歪み
IDCが調査したDXにおける適用業務を見ると、日本と世界企業とである項目に差が見られた。日本はDXにおいても“ガラパゴス化”するのだろうか。
IDC Japanが発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査の国内と世界の比較結果」によると、国内企業のDXは「顧客エクスペリエンスに役立てる」「デジタルを活用したビジネスの拡大を目指す」といった姿勢においてグローバル企業とで差があることが分かった。
IDCは、DXを実践する国内および世界の企業に対して、実施内容や課題、KPIなどをアンケート形式で問う「IDC DX Sentiment Survey」を実施し、国内と世界の結果を比較し、国内企業のDXの状況について分析した。なお、2020年は日本以外では実施されていないため、本レポートは変則的に、2019年における世界の調査結果と2019年、2020年における国内の調査結果の3つを比較した。
DXにおける日本と世界の企業の“温度差”とは
DXの適用業務では、「IT/情報システム」「業務オペレーション」「戦略策定」「マーケティング」の項目に多くの回答が集まった。その一方で、「顧客エクスペリエンス(Customer Experience:CX)」については、国内企業の回答比率は世界と比較して低く、15ポイント以上の差が見られた。今後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、企業と顧客とのエンゲージメントがよりバーチャルなものになることが予想され、国内企業はいかに顧客エクスペリエンスを高め、顧客当たりのライフタイムバリューを高めていくか、といったことが最重要視されるようになるとIDCは分析する。
また、DXの課題については、「イノベーションのサイロ化」「サイロ化されたDX推進」の項目が、国内および世界で高い回答率を示した。その一方で、国内と世界で大きな差が見られた項目に「戦術的な計画」が挙げられ、2019年の世界の企業の回答結果を見ると、50.9%の企業が課題としているのに対し、国内では31.5%にとどまっている。
世界の企業においては、「サイロ化」とともに「戦術的な計画」に対する課題認識が、国内企業と比較して高い状況にある。国内企業がDXを進めていくに当たり、「サイロ化」の根本にある長期的、戦略的な計画の立案にも目を向ける必要があるとIDCではみている。
国内企業のDXの取り組みにおいては、世界の企業との差が全般的に縮まっていると考えられる一方で、「顧客エクスペリエンス」の項目ではまだ差を感じざるを得ない状況にある。IDC Japanの山口 平八郎氏(ITサービスグループ リサーチマネージャー)は、「国内企業のDX推進体制は、すでに世界の大勢に追い付いている。COVID-19の感染拡大で、社会情勢や顧客との関わり方が変わる中で、国内企業はそうした社内DX体制をベースに、より『攻めのDX』へと軸足を移し、『次の常態(ネクストノーマル)』の道を探るべきだ」と分析する。
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