帳票類のデジタル化の状況(2021年)/後編
多くの企業が共通して「紙帳票の運用問題」に対してデジタル化でアプローチしている。一方で帳票をデジタル化したからこその課題も顕在化していた。帳票に関する課題は本当にデジタル化で解消できるのか?
キーマンズネットは2021年2月1日〜12日にわたり「帳票の利用状況に関するアンケート」を実施した。全回答者数137名のうち、情報システム部門が27.0%、製造・生産部門が23.4%、営業/企画・販売/促進部門が10.9%、総務・人事部門が8.8%などと続く内訳であった。
後編は帳票がデジタル化されている領域に注目し、業務で利用される帳票の管理方法や企業の実施状況、デジタル管理の課題などを調査した。その結果、データ化された帳票が今後どのように活用されていくかが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
帳票「デジタル化」のトレンドに変化 導入が急進した
前編では、97.0%の企業が帳票をデジタル化している状況に触れた。そこで後編では、具体的にデジタル化の目的や手段、デジタル化した帳票の課題などについて紹介する。
まず全体に対して、帳票のデジタル化をどの程度進めているかを聞いたところ「取り組みを実行している」と回答した方の中では「複合機などを活用したFAXデータのPDF化」(73.0%)や「表計算ソフトを使ったローカルアプリ化」(43.8%)、「帳票Webアプリを使ったデータ化」(23.4%)などに回答が集まった(図1)。
この結果を2020年4月に行った前回調査と比較すると、取り組みのうち「実行している」割合の高さについての順位は変わらない。一方で「計画している」取り組みでは「タブレットアプリの利用」(7.7ポイント)と「RFIDやM2MなどのIoTを活用した自動入出力」(5.8ポイント)が増加していた。この2項目は、前回調査時に「興味がある」回答した割合が高かった項目であり、検討していた企業が順調に導入を進めた様子が見て取れる。
紙運用脱却を図る理由は各社共通、ただしデジタル化ならではの課題も
次に帳票をデジタル管理する理由を聞いたところ、前編で「紙運用の課題」として挙がった運用コストと、検索性、可用性、保管場所の確保などに関連する回答が多く寄せられた。
上位3つは「書類保管スペースに関わるコスト削減」(60.2%)、「効率のよい記録を実現するため」(46.9%)、「紙の出力などに関わるコスト削減」(41.8%)だった(図2)。回答割合の順位は前回調査と変わらず、紙運用からデジタル運用への移行を図る企業の目的が、各社おおむね同様であることが推察できる。
デジタル帳票の“保管”や“命名”ルール……「特に決まっていない」が約4割の実態
それでは、紙運用の課題は本当にデジタル化によって解消できるのか。デジタル化によって紙の保管場所はなくなるものの、データとしての保管や管理が必要になるのは変わらない。そこで、帳票をデジタル化する際のルールを聞いたところ、最も多い回答は「特に決まっていない」(37.8%)だった。(図3)
いくら帳票をデジタル化しても、データが無秩序に保管されているだけの「カオス状態」となっては利活用が難しくなる。「デジタル運用で生じるデメリット」をフリーコメントで募ったところ、紙運用と異なる種類の課題や、類似する課題が顕在化していることが分かった。
- 押印後の書類(帳票)をPDF化するのが面倒
- 契約書など、とじられた書類のスキャンに時間が掛かる
- スキャン機材がオフィスにしかないため、テレワークでは電子化できない
- 保管のルールを明確にしていないため属人化し、担当者以外は探せない
- ファイルの名付けルールが守られていない
コロナ禍をきっかけに働き方は多様化している。業務効率の向上やセキュリティ強化のためにも帳票のデジタル運用に着手する企業は今後も増えると予測される。一方で帳票システムを導入してもルールに従った運用ができなければ、デジタル化の効果を十分に引き出すのは難しく、生産性の低下や情報漏えいといったリスクにもつながりうる。帳票のデジタル化を検討する際は、これらのリスクや前例を参考にしたルール策定や定期的な運用体制の見直しも必要になるだろう。
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