新卒、中途、ハイクラス人材別、採用管理ツールのかんたん選定ポイント
新卒なのか、中途なのか、採用したい人材によって採用時に収集、管理すべき情報が異なる。それぞれの採用シーンに合った採用管理ツールとは。
採用業務においては、いまだに紙の履歴書を活用し、そこから応募者の情報をExcelに集約、管理する企業も少なくないだろう。
大企業ならば、自社の採用業務に合ったシステムをスクラッチ開発するという選択肢もあるが、人手や予算が不足しがちな中堅、中小企業では、そうしたシステムの開発、運用という選択肢は現実的でない。しかし、近年は数十社のベンダーから中堅・中小企業の導入、活用も想定した採用管理ツールが登場している。
採用管理ツールを活用するメリットはさまざまだが、その一つとして選考者の情報を社内の関係者で共有し、活用しやすい点が挙げられる。一口に選考者の情報といっても、採用対象によって重点を置く項目が違い、集めるべき情報も異なるだろう。
本稿では、採用対象別に、応募者に何を求めるのか、何の情報を得ておくべきかを確認した上で、どのような機能を持った採用管理ツールが便利かを解説する。
新卒人材の採用管理のポイント
新卒採用は、スキルよりも仕事への熱意や向上心、主体性、協調性などポテンシャルを重視することが一般的だ。自社のルールや文化になじみ、長く働いてくれる人材を得るためには価値観や人間性にも着目したい。企業や業務について研究し、理解しているかどうかという点も、熱意を見極めるという意味で役に立つ。
採用対象
総合職、一般職などの全ての職種における新卒の人材。
最低限必要な情報
- 学校名
- スキル・資格
- 趣味ほか、ポテンシャルを見られる情報、人間性が分かる情報
新卒採用は、他の採用対象と比較して応募者が多く、多くの情報を取り扱う傾向にある。不採用や内定辞退の場合は個人情報を削除する必要があるが、応募者が多ければそれだけ管理も煩雑になりやすい。
内定辞退もあり得るために、細かな内定者フォローも必要だ。多数の情報を管理しやすい、応募者に簡単に連絡を取れるといった特徴があるツールが便利だ。その他、入社手続きに必要な情報を、他の労務系システムなどに引き継げる機能があれば、情報連携がスムーズになるだろう。
中途採用の採用管理ポイント
中途採用は、従業員の人脈を活用するリファラル採用やハイクラス人材のヘッドハンティングなど、採用の方法は多彩である。採用段階では、応募者が社風をどれだけ理解しているか、理解する努力をしているか、入社後も自主的に馴染む意思があるか、といった点を見極めたい。前職での経験にこだわりすぎず、自社の業務において能力を発揮できそうかという視点での評価も重要だ。
採用対象
エンジニア、事務職、営業などの中途採用の人材。
最低限必要な情報
- スキル・資格
- 職務経歴
その他、履歴書やスキルシートを確認し、現場の技術者も交えた面談も実施して詳細なスキルの把握を行いたい。
中途採用者が早期に即戦力となれるかどうかは、入社後のフォローアップにかかっている。面接時に応募者から伝えられた「希望条件」をあらかじめ配属先に伝えたり、希望する仕事やキャリアの展望と仕事内容に齟齬(そご)がないか、入社後も定期的に確認する場を設けたりする必要がある。
こうしたことを考慮すれば、中途採用のシーンでは、採用時の情報を他の人事系システムと連携できる採用管理ツールが便利だ。
ハイクラス人材の採用管理のポイント
ハイクラス人材とは、転職サービスではヘッドハンティングも含めた年収800万円以上の求人を指すことが多い。「エグゼクティブ求人」という呼称も同様の意味合いで使われることがある。採用目的に合致した専門的な知識・技術を有すること、成果を出すことが求められる。
採用対象
- 部長や、部門の最高責任者など経営目線で価値を発揮する人材。
- 非常に高度なスキルを持った専門職人材
最低限必要な情報
- スキル・資格
- 主なプロジェクトごとの実績
- 他社の選考状況
求人のほとんどが管理職を対象にした募集だ。応募者のスキルはもとより、これまでのキャリアで経験したプロジェクトの内容や役割など、具体的な実績を把握する必要がある。
ハイクラス人材を自社に定着させるためには、応募者が要求する待遇やキャリア志向などが、自社で実現できるのかどうかをあらかじめすり合わせ、配属後も齟齬(そご)がないように対話の機会を設けるのがよい。面接時に得た、応募者のキャリアプランや仕事で大切にしていること、発揮できる価値といった情報を入社後も定点観測できるよう、人事評価システムなどに情報を連携できる採用管理ツールが便利だ。
またハイクラス人材はスピード感を持って獲得する必要があるため、他社の選考状況を把握して、優秀な人材を逃さないようにしたい。短い期間で採用を完了させられるよう、進捗(しんちょく)管理機能に強みがあるツールであれば理想的だ。
非正規人材の採用管理のポイント
非正規人材は、過去に培ったスキルや他社で勤めた経験を生かして、できるだけ早期に業務に参画することが求められる。働く時間がさまざまで、情報の更新頻度が比較的高いことを踏まえて、情報を修正しやすく柔軟に項目を変更できる採用管理ツールが便利だ。
採用対象
全ての職種のアルバイト・パート、契約社員、派遣社員
最低限必要な情報
- 資格
- 職歴
- 働く理由、希望の勤務形態(残業は可能かなど)
正規雇用と比較して勤務時間が短いことが多く、シフト勤務となる場合もあるので、稼働可能な勤務時間を把握しておきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Excel vs 無料クラウドサービス 0円で採用管理を実施する方法
採用管理においては、Excelなどの表ソフトを活用することが一般的だが、採用管理に特化したクラウドサービスの無料プランを試すという方法もある。コストをかけない採用管理に最善の方法はあるのだろうか。 - クラウド型「採用管理システム」とは? 基本機能とメリット、ベンダー選定のポイントを解説
採用業務は従来、紙の履歴書や職務経歴書が重宝され、管理もExcelを使った手作業でという企業が多かった。そういった状況を改善するため、現在では40社を超えるベンダーから簡単に導入と運用可能な採用管理システムが提供されている。本稿は、採用業務が抱えている課題とそれを解決する採用管理システムの機能を紹介する。 - 400人の知人が採用候補――サイバーエージェントが挑むリファラル採用の軌跡
従業員に知人を紹介してもらう「リファラル採用」。サイバーエージェントでは、この手法によって半年で400人の採用候補を集めている。なぜ、多忙な従業員が紹介を“惜しまない”のか。その背景には、地道すぎる取り組みとあるツールの存在があった。 - リファラル採用とは? メリットやデメリット、縁故採用との違いを解説
従業員による人材の推薦や紹介を募る人材採用手法。マッチングの向上や離職率の低下などが期待でき、紹介者と応募者にインセンティブを設ける事例もある。