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5G市場の動向調査 2030年の世界予測と「消える技術」「拡大市場」

5G市場は一部の機器でピークアウトや「消滅」が予想される一方で、100倍超の拡大が予想される分野も。技術革新に伴う需要の変化を、2030年まで予測する。

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 富士キメラ総研は2021年5月27日、5G関連の世界市場について調査結果を発表した。同調査はアプリケーション(基地局/エッジ機器)、基地局向けデバイス・材料(基地局向けデバイス/基地局向け材料)、エッジ機器向けデバイス・材料(RFデバイス/半導体デバイス/基板・ノイズ対策部品)を対象に、同社の調査員によるヒアリングと関連文献、データベースに基づき、2020年10月〜2021年2月にかけて実施された。

 調査によると、5G通信サービスは先進国の主要キャリアが2020年にサービスを開始したことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や貿易摩擦の影響を受けつつも、5G通信対応エッジ機器や基地局、基地局向けデバイスなどは堅調だという。ただし「中長期的にはピークアウトする」と見ており、その背景に言及している。

基地局の市場の一部は「消滅」、11年で100倍超の拡大分野も


基地局の世界市場予測(出典:富士キメラ総研の発表資料)

 まず基地局について、従来の5G通信市場は、D-RAN(Distributed Radio Access Network|分散型無線アクセスネットワーク)基地局が中心だった。しかし昨今はC-RAN(Centralized Radio Access Network|集中型無線アクセスネットワーク)基地局が増えている。富士キメラ総研は「C-RAN基地局の伸びは当面続く」と予想した上で、5G通信向けの投資が落ち着くこと、BBU・CU・DU(ベースバンド処理装置)の設置場所を親局とし、親局から10km圏内に子局(光張出し局)としてRRH・RU(無線送受信装置)を複数設置することで1局当たりのカバー範囲が広くなることから、市場は「中長期的にはピークアウトする」と見ている。

 C-RAN基地局は、光ファイバーの敷設など初期投資コストがD-RAN基地局よりも高い。そのため光ファイバーの敷設が進んでいる日本や中国などで導入が進む見込みだ。中国は新規投資のほぼ全てがC-RAN基地局で世界需要の半数近くを占め、市場をけん引している。富士キメラ総研の予測によれば、中国の投資が一巡する2023年以降に市場はピークアウトする。

 D-RAN基地局は今後縮小する見込みだ。出力100W以上のD-RANマクロセル基地局は、LTE(4G)向けの投資が一巡した。5G向けは、光ファイバーの敷設が進んでいない新興国や欧州などにおいて、短期的にはSub6を中心に緩やかに伸びる見込みだ。一方、光ファイバーの敷設が十分に進んでいる地域ではC-RAN基地局への移行が進んでいるため、D-RANマクロセル基地局の市場全体は縮小する。

 出力100W未満のD-RANスモールセル基地局は、高トラフィック地域での通信品質の向上やホワイトスペース対策など、カバー範囲が比較的狭い場所に採用されている。今後はカバー範囲の確保にはマクロセル基地局、高トラフィック対応にはC-RAN基地局の『光張出し局』が用いられることから、富士キメラ総研は「D-RANスモールセル基地局市場は消滅するだろう」と述べる。

 C-RAN基地局にはRRH(Remote Radio Head|4Gの無線送受信装置)やRU(Radio Unit|5Gの無線送受信装置)を複数設置する。基地局のカバー範囲確保を目的に「光張出し局」の需要が増加するため、RRHとRUの市場は拡大すると見られる。富士キメラ総研の予測によれば、同分野の市場規模は2021年が4290億円、2030年は対2019年比で38.4倍の4兆8983億円に拡大する。

 RRHとRUに実装する基地局向けRF(Radio Frequency|無線周波数)フロントエンドは、対応周波数やMIMO(Multiple Input Multiple Output)ごとに必要となる。5G通信で推奨される一体型のMassive MIMOアンテナは32個または64個のアンテナ素子を備えており、アンテナ素子1つ当たりRFフロントエンドが1つ必要であることから、今後は大幅な市場拡大が予想される。富士キメラ総研では、基地局向けRFフロントエンドの市場規模を、2021年が6000億円、2030年は対2019年比9.5倍の3兆2230億円に拡大すると予測する。

 スマートフォン市場は、2020年に先進国の主要キャリアが5G通信サービスを開始したものの、COVID-19の影響で消費行動が減退してユーザーの買い替えが進まず、2020年の市場規模は対前年比10%超の減少となった。2021年以降は、2020年の買い控えの反動で緩やかに拡大すると見られる。5G通信対応製品の価格は、中国製を中心にLTE対応ミドルレンジ機と同程度となっており、今後も低価格化が進展し普及していく見込みだ。富士キメラ総研では、2021年の市場規模は13億3000万台、その中で5G対応機は5億3000万台と見ており、2030年には対2019年比3.5%増の14億6000万台、内5G対応機は同119.7倍の14億台になると予測する。


調査対象とした5G関連市場(出典:富士キメラ総研の発表資料)

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