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Web会議ツールの利用状況(2021年)/前編

Web会議ツールを使った非対面での会議体が当たり前になりつつあるが、対面型の会議とは異なる課題が存在する。前編では、Web会議ツールの利用状況を概観するとともに、アンケート調査から得た、Web会議ツールに対する不満、ストレスを感じるポイントを紹介する。

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 キーマンズネットは2021年5月7日〜5月21日にわたり「Web会議ツールの利用状況」に関する調査を実施した。今回は、企業における「Web会議ツールの利用経験の有無」や「オフィス、自宅以外でのWeb会議経験の有無」「ツールに関する不満ポイント」などを中心に利用状況を調査した。

 全回答者数245人のうち情報システム部門が29.4%、製造・生産部門が18.8%、営業・販売部門が10.6%、経営者・経営部門が5.3%などと続く内訳であった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

勤務先で利用するツール、11のWeb会議ツールで最下位なのは?

 対面での打ち合わせや会議が困難なこのご時世、意思決定や社内外とのコミュニケーションにおいてWeb会議は当たり前のものになりつつある。メンバーを会議室に召集しなくても、PCとWebカメラさえあればどこでも参加できるという利点がある一方で、Web会議ならではの作法や、利用者の環境に起因するトラブルなど、新たな課題点も生まれた。

 前編では、Web会議ツールの利用経験の有無と利用しているツールに関する結果からWeb会議ツールの利用状況を概観するとともに、意外な場所での会議実施の有無、Web会議ツールにまつわる5つの不満ポイントを紹介する。

 まず、Web会議の実施状況から見ていく。これまでにWeb会議ツールの利用経験の有無について尋ねたところ、「利用している」が97.6%で、「利用していない」は2.4%だった。(図1)


図1 Web会議ツールを用いた会議の経験の有無(n=245)

 前項と関連して、Web会議ツールを用いた会議を実施した経験が「ある」と回答した人を対象に、無償版を含む11個のツールの中から利用したことのあるツールについて複数選択方式で回答を求めた。その結果をまとめたものが図2だ。

 最多の回答を得たのが「Microsoft Teams」で69.5%、次いで「Zoomミーティング(有償版)」37.7%、「Zoomミーティング(無償版)」37.2%、「Cisco Webex Meetings(有償版)」16.7%、「Skype for Business」14.6%と続く結果となった(図2)。


図2 勤務先で利用しているWeb会議ツール(n=239)

 本アンケートの回答者には、勤務先で「Microsoft 365」や「Office 365」を利用している人が多いためか、Microsoft Teamsに最も多くの票が集まった。またZoomミーティングやCisco Webex Meetingsは、無償版には接続時間やストレージ容量、録画機能などにおいて制限の有無があるため、全体的に有償版が利用されている傾向にある。

読者が実際に体験した、意外な場所でのWeb会議談

 オフィスなど、場所や環境に縛られずにどこでも会議に参加できるのが、Web会議の利点の一つだ。急を要する会議や、自宅には家族がいて環境音が聞こえるなど、状況や利用環境によってはオフィスや自宅以外などからも参加せざるを得ない場合もあるだろう。

 そこで、自宅以外でWeb会議ツールを利用して会議や打ち合わせをしたことがあるかどうかを尋ねたところ、全体の35.6%と約4割が「ある」と回答し、この結果を従業員規模別に見ると中小企業のほうがやや高い傾向にあった(図3)。


図3 自宅以外でのWeb会議ツールを用いた会議経験の有無

 具体的な会議場所を聞いたところ、最も多かったのはカフェや喫茶店、ファミリーレストランといった飲食店だ。次に多かったのは「公園のベンチ」や「図書館」「大学施設」などの公共施設で、無料で利用できるケースが多いのも理由の一つと考えられる。

 中には「裏山」や「海岸」など環境を変えながら会議を実施している人もいた。公共施設と同数だったのは、「交通機関の利用時」で、新幹線や飛行機、電車や長距離バス内、中には「フェリー乗船時」といった珍しいケースもあった。関連して駅の構内や空港、新幹線の待合室という回答も目立った。

 次いで意外にも多かったのが「車中」という回答だ。「移動中の車内(運転はせず)」「コンビニの駐車場に停車した車の中」といった駐車場で行うケースや、「社有車の中(運転者は別にいる)」「移動中の車中(音声のみでの参加)」など車移動中に行うケースもあった。従業員が密になるのを避けるため、公共交通機関ではなく車移動を推奨する企業も一部あったためか、車中で行われたWeb会議もあったようだ。

 最後は「駅校内のミーティングボックス」といったスペースの利用だ。中には「カラオケボックス」で代替するという回答もあった。これらは有料であることや場所や数に制限があることもあってか利用ケースとしてはそこまで多くはなかった。他にも「キャンプ場」といったワーケーションを連想させる場所や、「歩きながら参加」「路上」という声も寄せられた。

これがイライラの原因 Web会議ツール「5つの不満ポイント」

 Web会議では、利用するツールや利用環境によっては、不便やストレスを感じるポイントが対面会議とは異なる。Web会議ツールの利用者は、どういったポイントに不満やストレスを感じやすいのかを調査した。

 現在利用しているWeb会議ツールで、使いづらい、機能が少ないなど、不便や不満を感じる点はあるかどうかを尋ねたところ、「ある」が50.6%、「ない」が49.4%と回答がほぼ二分する結果となった(図4)。


図4 利用しているWeb会議ツールに対する不満の有無(n=239)

 具体的に不便、不満に感じる点をフリーコメントで聞いたところ大きく5つの課題が見えてきた。

 1つ目は「音声」に対する不満だ。「複数人の音声がかぶるとほぼ聞き取れない」「相手の音量や聞こえやすさがまちまち」「時々、ハウリングが発生する」「相手の声が聴きにくい」など、読者の皆さんも経験したことがあるのではないかといった体験が並んだ。中には「誰が話しているのか分からない」「参加人数が多いと音声品質が落ちる」など、話者が画面をオフにしているために生じる不便さや、PCのスペックや通信状況によって左右されるケースも見受けられた。

 2つ目は「資料共有」に関する不満で、「相手に資料をアップロードしてもらった時、自分の見たいところが自由に見られない」「資料や画面の拡大機能がほしい」などがあった。参加者の情報レベルを均一にしなければ合意形成や意思決定は成し得ず、視覚情報は最重要ポイントと言えるだろう。

 3つ目の不満として挙がったのが「通信回線、PCスペック」だ。「Web会議の安定性が通信回線の品質に左右される」「データ転送が遅く、通信遅延で悩まされる」といった声が挙がったが、その背景には「バーチャル背景に使うPCリソースが多すぎる」「PCのリソースを食う」といった理由があり、PCやネットワークのスペックに応じたWeb会議運用を検討する必要があるだろう。

 4つ目は「機能制限」に対する不満で、「音声のみのレコーディングができない」や「セキュリティの観点から考えると有償版を使いたいがコストが高い」「会議室数に上限がある。費用をかければ増やせるが、いつも会議室数が不足している訳でもないので対応が難しい」「無料版には時間制限がある」など、会議効率を向上させたいが、予算の都合で無償版から有償版に切り替えられず、機能制限などにジレンマを感じながら利用している姿が垣間見られた。

 5つ目は「機能が使いこなせない」などといった声だ。「年配の役職者の中には使い方が分からない人が多く、会議が始まるまでに時間がかかることが多い」や「画面を固定する時でも“ピン”と言われても分からない」「会議中に各種操作がスムーズにできず戸惑うことがある」など、ツールを使い慣れていない参加者がいる場合は、対面よりも非効率な会議となってしまう場合もあるようだ。

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