産業分野で「5G」の本格展開が始まるターニングポイントは?
産業分野における5Gの取り組みはまだ実証実験止まりが実情だ。この状況から商用導入に踏み切る企業が増えるのはいつ頃か。また、その要因となるのは何か。
2019年11月と2020年12月の2回にわたり、IoT(モノのインターネット)機器サプライヤーとIoT機器バイヤーに対してIDCが調査した結果を見ると、今後、最も重要になるネットワーク規格として5Gを挙げた比率は2019年11月は26.0%で、2020年12月には36.5%になり、10ポイント以上増加した。
一方、IoT機器バイヤーが、パブリック5Gが今後最も重要なネットワークになると回答した比率を見ると、2019年11月は15.0%であったのが、2020年12月には9.3%まで下落した。ローカル5Gについては、2019年11月は8.7%であったのに対して2020年12月は12.3%まで上昇した。無線LANが最も重要になると回答した企業は、2019年11月は19.0%で、2020年12月は28.7%と10ポイント近く増加した。
「5G」商用導入の起爆剤となるのは?
IDCは、ユーザー企業や通信事業者、ベンダーなどに対する調査結果から、国内の産業向け5G関連IT市場の2027年の市場規模を2106億円、2020年〜2027年の年間平均成長率を80.3%と予測する。
今後の展望として、産業分野での5Gの商用導入は2022年頃から始まり、2024年頃に本格化するとIDCは考える。今はまだ、産業分野における5Gの取り組みの多くは実証実験にとどまっている。しかし、2022年以降、産業分野での5G規格の本命とされる5G SA(スタンドアロン)構成のサービスやデバイスなどが増加し、利用環境が整うことによって、商用導入に踏み切る企業が増えるとIDCは予測する。
さらに、5Gと親和性が高い他の技術分野でも、2022年前後に照準を合わせた製品開発や規制緩和の検討が進められている。国内では2022年にドローンの有人地帯での目視外飛行が解禁される見込みだ。また主要なAR(拡張現実)やVR(仮想現実)ベンダーの多くが2022年に新たなデバイスの投入を計画している。こうした新たな技術との相乗作用によって、国内においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みがますます加速するとIDCは分析する。
IDC Japanの小野陽子氏(コミュニケーションズ リサーチマネージャー)は、「産業向け5G市場はまだ揺籃期であるが、企業の5Gに対する理解が進み、実証実験も増加している。5G SA対応のサービスやデバイスが増える2022年以降、5Gの商用導入が増加し、2024年頃には5G導入が本格化するだろう」とコメントする。
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