メンタルケアは人よりもロボットに頼りたい? セルフケアアプリを試してみた
メンタルヘルスのサポートを「人よりもロボットに頼りたい」という声は82%に上る。それを背景に、メンタルセルフケア支援アプリの実証実験が実施された。
2020年のコロナ禍は事業のデジタル化を推し進めたが、一方で従業員のメンタルヘルスにおける課題も顕在化された。オラクルとWorkplace Intelligenceが2020年10月に発表した調査によると、70%の従業員が「これまでのどの年よりも2020年は職場でストレスと不安を感じた」と回答した。ワークライフバランスの消失や極度の疲労、気力の減退、孤独感など、メンタルヘルスの課題を共有できず、そのサポートを「人よりもロボットに頼りたい」と回答した人は82%に上った。
それを背景に、メンタルヘルスのデジタルセルフケアを目的とするアプリの実証実験が実施された。年度末の繁忙期に合わせて実施された同実証の効果とは。
年度末の繁忙期で全体的に「病む」中……
AI(人工知能)ロボとのチャットによるメンタルヘルスセルフケアを目的としたアプリ「emol」(エモル)を運営するemolが、早稲田大学人間科学部 大学院人間科学研究科 大月研究室と共同で開発するデジタルセルフケアプログラムによる心理介入実験を実施した。
実証実験の実施期間は2021年3月の2週間で、千葉県市原市の職員を対象に、実証実験用の「ACTデジタルプログラム」を提供した。同プログラムでは、心理テストによって抑うつや不安、心理的柔軟性などへの効果を検証できる。
emolは2020年12月から、AIがケア方法をレクチャーする簡易のカウンセリングプログラムを提供している。大月研究室との共同研究「アプリ内でACTを活用した心理療法の研究」の中で、アプリでの心理介入による影響の検証を進めている。市原市の活性化や地域課題解決に向けたオープンイノベーションプログラム「いちミラ」への採択によって同市の協力を得て実証実験が実施された。
本検証においては、全体的に抑うつや不安のスコアは悪化傾向が出たという。emolは「介入時期が実験参加者の繁忙期と重なったため」と推測している。ただしデジタルプログラムを実施したチームは実施しなかったチームよりもスコアの悪化傾向に軽減が見られたことから、同社は「一定の予防効果が期待される」と述べる。
emolは、コロナ禍をきっかけに非対面のメンタルヘルスサポートはますます重要になると見ている。 今後はデータ分析を通してパーソナライズしたメンタルヘルス介入の実現を目指し、 自治体や企業、教育機関などを対象に「産後うつ予防」や「小中学生のメンタルヘルス不調予防」などに関する各種実証実験の実施を予定する。
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