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勤怠管理システムの利用状況(2021年)/前編

残業時間の上限規制における中小企業の猶予期間終了、コロナ禍をきっかけとした就労形態の多様化など、勤怠管理手法を見直す時期に来ている。企業の対応はどこまで進んでいるのか。

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 少子高齢化や労働人口の減少といった日本が抱える社会問題を背景に、労働者の働き方に多様な選択肢を持たせ、企業にとっても生産性向上につなげる試みとして働き方改革が進められた。2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されたことにより、勤怠管理方法を見直さざるを得なくなった。

 このように試行錯誤している中でコロナ禍が訪れ、多様で柔軟な働き方の実現が急務となった。就労実態に適した勤怠管理が求められるが、企業はどのような対応を採っているのだろうか。勤怠管理に関する企業アンケート調査(実施期間:2021年8月6日〜8月20日、有効回答数:412件)を通して実態を深掘りしていく。

 前編となる本稿では、勤務先でのテレワークの実施有無と勤怠管理システムの導入状況、導入目的などに焦点を当てて、アンケート結果を紹介する。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、あらかじめご了承いただきたい。

テレワーク実施率は2020年よりも減少 徐々にオフィス通勤に

 まず、勤怠管理状況について触れる前に現状の就労状況について尋ねた。ワークシフトが一つの課題となっている現在において、勤務先ではテレワークを実施しているかどうかについて聞いたところ、「全社的に実施」が44.7%、「一部の部門及び職種で実施」が35.7%となり、テレワークを実施しているとした回答を合計すると80.4%となった(図1)。


図1 勤務先でのテレワークの実施状況(n=412)

 この結果を2020年7月に実施した同様の調査と比較したところ、1年前に「テレワークを実施しているかどうか」を尋ねた結果、91.0%が「実施している」とし、2021年はわずかながら実施率が低下していた。内訳を見たところ「全社的に実施」している割合は微増している一方で「一部の部門で実施」が14.3ポイント減少し、もともと限定的なテレワークの実施にとどまっていた企業では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の強化と合わせて徐々に通勤を伴う勤務に戻している様子だ。

 次に、勤怠管理システムの導入状況を尋ねたところ、全体では82.3%が「導入済み」と回答した。2020年と比較すると1.7%と微増で大きな変化は見られなかった。引き続き、従業員規模500人以上の中堅〜大企業を中心に利用されている(図2)。


図2 勤務先では勤怠管理システムを導入しているか(n=412)

多様化する勤怠の打刻形式、2020年と比較してどう変わったか

 次に、導入済みの勤怠管理システムの導入形態や打刻形式に関する回答結果を見ていこう。

 まず導入方式は「パッケージソフト」が37.3%、「自社開発システム」が34.0%、「SaaS(Software as a Service)」24.9%で、それほど大きな差はなく回答が三分している状況だ(図3)。2020年7月の前回調査と比較したところ、パッケージソフトの利用比率に変化は見られなかったものの、SaaS利用割合が21.6%から2.3ポイント増加しており、自社開発システムから移行または併用している可能性がありそうだ。


図3 導入している勤怠管理システムの導入方式(n=365)

 次に、勤怠の打刻方法だが「Webシステムへ時間を直接入力」が69.3%と最も多く、次いで「IDカード認証」25.8%、「PCへのログインにより自動で打刻」25.2%、「スマートデバイスで打刻」7.9%、「ICカード(交通系カードやプリペイドカードなど)認証」7.4%と続いた(図4)。


図4 勤務先で採用している打刻方法について(n=365)

 こちらも前回調査との比較から、IDカードやICカードといった打刻方法の多様化や自動打刻といった機能の拡充によって、柔軟で効率的な打刻方法を採用する企業が徐々に増え始めている。

中小企業の猶予期間の終了迫る 法令対応でシステム導入が倍増

 最後に勤怠管理システムの導入目的や導入きっかけを聞いたところ「法令対応のため(時間外労働の上限規制など)」が69.6%と大半で、次いで「勤務時間の不正申告を減らすため」(34.8%)「タイムカードやExcelでの管理が難しくなってきたため」(32.6%)、「テレワークシフトや従業員の増加などの理由で従来の方法では勤怠管理が難しくなったため」(19.2%)と続いた(図5)。前回調査との比較では、法令対応が33.2ポイントと倍増し、特に従業員規模100人以下の中小企業からの回答が多かった。背景には働き方改革関連法施行について、一定の猶予期間があった中小企業の終了期間が迫っていることが推察される。


図5 勤怠管理システムを導入した目的・きっかけ

 働き方改革関連法は2019年4月に施行されたが、資本金額または出資金の総額、常時使用する労働者数により規定される「中小企業」に対しては一定の猶予期間が設けられていた。

 原則月45時間、年間で360時間までとした「時間外労働の上限規則」については、中小企業以外では2019年4月に施行されたが、中小企業は2020年4月からと1年間の猶予期間があった。他にも月間60時間を超える時間外労働に対して法定割増賃金率を50%以上とする措置に関しても猶予期間があったが、2023年4月からは中小企業も対応が求められる。

 また有期雇用労働法における「同一労働同一賃金」が2020年4月に施行され、中小企業も2021年4月から対象になるなど、猶予期間の終了が迫っている法令が幾つかある。こうした背景から、中小企業を中心にリアルタイムで労働時間を把握し、知らない間に時間外労働の上限を超えてしまうなどの事態が起こらないような管理体制を構築し始めている。

 前回調査との比較で注目したこの2点から考えられるのは、先に挙げたCOVID-19の感染対策や働き方改革関連法への対応が、企業の勤怠管理で少なからず課題に挙がっていることだろう。2019年4月1日に施行された働き方改革関連法では「年間で5日間の年次有給休暇の取得義務」や「時間外労働の上限規制」などが義務付けられ、企業規模によっては施行日に一定の猶予期間が与えられていた。

 1年が過ぎ、2020年の4月には「時間外労働の上限規制」が中小企業で、「同一労働同一賃金」が大企業で施行された。こうした背景もあり、企業はより正確に従業員の勤怠状況を把握することが求められ、加えてCOVID-19の影響によるテレワークに半ば強制的に対応せざるを得なくなったことで、勤怠管理の在り方を早急に見直す企業も少なくなかったと予測できる。

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