ノーコードとは? ローコードとの違いや導入の注意点を解説:IT用語3分リーディング
ノーコードとは、コーディングのないプログラミングのこと。IT人材の不足を背景に、現場部門による開発に注目が集まっている。
サマリー
ノーコード開発でできること、導入の注意点
ノーコード開発ツールの種類
ローコードとの違い、関連用語
ノーコード、およびノーコード開発とは、コーティング作業を伴わない開発を指す。一般的にアプリケーション開発では「PHP」や「JavaScript」「Python」などのプログラミング言語の知識を持つ人材しか開発ができない。一方ノーコード開発は言語の知識は不要になるため、ノンプログラマーもアプリ開発ができる。プログラミングに必要なコードを削減する「ローコード開発」と同時に語られることが多い。
ノーコード開発が注目を集める背景には、いわゆる「2025年の崖」がある。2025年の崖とは、2018年に経済産業省が「DXレポート」で指摘した、レガシーシステムから脱却できないことによる国内企業の生産性低下とそれに伴う日本の国際競争力低下だ。さらにビジネスサイドからの開発ニーズは多様化/高度化する一方で、IT人材は不足している。
企業のIT導入をけん引した世代のエンジニアが退職し、企業のIT部門はレガシーシステムの保守と現場のITサポート、ビジネスサイドからの開発ニーズの対応などに追われている。業務の現場では新しいビジネスやITに沿った開発のニーズがあるが、個別の要求に合わせたきめ細やかなサービスの提供は、ドメイン知識を持たないIT部門には負荷が大きい。そのような中で、業務の現場にいるノンプログラマーが開発を担える仕組みの価値が高まった。
ノーコード開発でできること、導入の注意点
ノーコード開発であれば、業務部門にいるユーザーが、自身のニーズに沿ったコンパクトなアプリケーションを迅速に開発でき、すぐに業務に活用できるようになる。クラウドやAPI連携といった機能も一般的に備わるため、設計段階で基幹システムと連携すればレガシーシステムを抜本的に見直さずとも、必要な機能の追加や改善ができる。
ただしノーコードにはデメリットもある。プリセットされた処理を組み合わせて実行するため、ゼロからの開発よりも柔軟性は制限される。そのため、最先端の技術を要するものや大規模なシステム開発にはノーコードは向かないとされる。
また、各部署が独自にシステム開発すると、RPAにおける「野良ロボット」と同様の問題が起こり得る懸念がある。現場サイドで開発したシステムが他部署のシステムと競合しないか、属人化が起きていないかなどの管理が新たに必要になる。ツールを導入する際は、同時に管理体制を築くなどの取り組みが必要な事は念頭に置いてかなければならない。
ノーコード開発ツールの種類
国内外のベンダーからさまざまなノーコード開発ツールが提供されている。個人で利用可能なツールも多数あるが、本稿では上記の懸念に対応可能な、企業向けの業務ソフトやデータベースとの連携能力が高いツールを中心に紹介する。
サービス名 | 運営会社 | 対象企業規模 | 特徴 |
---|---|---|---|
Forguncy | グレープシティ | 大〜中企業向け | Oracle、Microsoft SQL Server等との連携、Excel関数やJavaScriptの組み込みが可能 |
Salesforce | セールスフォース・ドットコム | 大〜中企業向け | 同社のCRMシステムの一環として提供され始めたが、勤怠管理など顧客とは関連の無いアプリも開発でき、SAPやOracle、Microsoftなどとの連携も可能で公式の学習コンテンツがある |
PowerApps | Microsoft | 大〜小企業向け | Officeシリーズアプリとの連携が充実しライセンスも一元管理できる。コミュニティを通してトラブルシューティングや学習が可能 |
AppSheet | 大〜小企業向け | Google SpredsheetやExecl、MySQL、salesforce等との互換性が充実。機械学習機能が標準で組み込まれており、ドキュメント読み込みなどの画像処理も可能 | |
kintone | サイボウズ | 大〜小企業向け | デザインやUIの分かりやすさに注力したもの。他サービスとの連携はオプションで対象はクラウド型SaaSが多いため、既存のオンプレミスシステムとの互換性を意識しなくていい場合に有用 |
ローコードとの違い、関連用語
ローコードとの違い
ローコードは「従来のプログラミングよりも少ないコーディングでプログラム開発を可能とする開発ツール」だ。拡張性と柔軟性が高く、より高度なカスタマイズや、自動化処理機能、他システムとの柔軟な連携などが可能になるが、ある程度のコーディングの知識は必要だ。
ビジュアルプログラミング言語との違い
ビジュアルプログラミング言語とは、テキストではなくグラフィカルなオブジェクトの組み合わせでプログラムを構築できる言語である。言語にプリセットされた処理を組み合わせてフローを構築するのが、ノーコード開発の一般的な実作業となる。ノーコード開発は「ビジュアルプログラミングによる開発手法の一つ」とも言える。
RPAとの関係
ノーコード開発ツールの中には、開発するアプリケーションにRPAのようなワークフローの自動化機能を実装できるものもある。MicrosoftのRPAツール「Power Automate Desktop」などではビジュアルプログラミング言語が採用されており、ノーコードでロボットの開発ができる。
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