面倒な税務業務から解放 税処理を自動化する「Stripe Tax」って何?
Stripeは、決済インフラサービス「Stripe」を利用するユーザーから特に要望の強かった「税務処理」に対応するサービス「Stripe Tax」の提供を開始した。ストライプジャパンの共同代表ダニエル・ヘフェルナン氏が語った複雑化する税務業務と、それを解決する「Stripe Tax」の機能を解説する。
2021年12月14日、インターネット向け決済インフラを提供するStripeは、税計算を自動化するサービス「Stripe Tax」の提供開始を発表した。
Stripe Taxは米国を含む35を超える国の消費税や売上税、付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)の自動計算と徴収が可能とする。また、徴税が必要な取引を企業に伝えたり、納税申告に必要な包括的なレポートを作成したりするなど、消費税や売上税の対応もStripeの他のサービスと同水準でシームレスに対応する。
税務業務の複雑化と厳しくなる罰則
税務業務は年々複雑化し、デジタルおよび物理的な商品は現在130カ国以上で課税され、米国だけでも1万1000以上の異なる税務管轄区がある。各国の税制は頻繁に更新され、国や地域に応じた細かい対応が求められる。例えば、日本では2019年に開始した軽減税率が挙げられ、アメリカのテキサス州ではカウボーイブーツは課税対象外だが、ハイキングブーツは課税対象になるなど区分けは細かい。
グローバル展開する企業は、国や地域別に税務コンプライアンスの準拠と維持に巨額の費用を投じており、本来新商品の開発や新市場の開拓に投じるべきリソースが消費され、結果的にビジネス成長の妨げとなる場合がある。しかし同時に、各国政府により納税申告の遅延や不備に対する罰則も引き上げられており、税務コンプライアンスを順守しない、あるいはできない場合は法的または財政的なリスクが伴う。米国では消費税の期日超過には約30%の罰金が課せられる。
数週間に及ぶ税務業務を自動化するStripe Taxの仕組み
以降で税務処理を自動化するStripe Taxの各機能を紹介する。
- リアルタイムでの税金計算では、エンドユーザーの所在地情報を商品やサービスと照合し、常に適切な税額を計算して徴収し、税率や税制の変更にも対応する
- シームレスなチェックアウトでは、顧客の所在地情報を利用して税金を計算し、顧客が最もなじみのある表示方法を用いることで、会計のストレスを低減できる
- 納税者証明番号管理では、顧客の納税者証明番号を確認し(欧州ではVAT識別番号の認証)、必要に応じてリバースチャージやVAT免税を適用する
- 勘定調整では、取引を行う各市場で包括的なレポートを作成し、申告や送金における調整の手間を削減する。今後はアメリカではTaxJar、ヨーロッパではMAROSAやtaxuallyといった納税申告をするパートナーと協力し、納税まで作業の自動化を予定している
以上の機能により、通常数週間かかる税務業務を全て自動化し短期間で処理できるようになる。
数分で実施できる簡単な導入ステップ
Stripe Taxには2つの導入方法がある。1つ目はローコードのセットアップで、「Stripe Checkout」を導入する企業なら既存のStripeにコードを1行追加するだけで設定できる。2つ目はStripeのダッシュボードから利用開始を設定する方法で、「Stripe Checkout」「Stripe Billing」「Stripe Checkout」「Stripe Invoicing」「Stripe Payments Links」を導入済みのユーザーは利用可能だ。
Stripeの共同創業者であるジョン・コリソン氏は「税務処理に胸を躍らせて出社する人はいないでしょう。多くの企業にとって、複雑な税務業務は本業を遂行する上で障害となりかねません。Stripeは消費税や売上税、VAT、GSTの計算と徴収を自動化し、ユーザーの皆さまが本業に集中できるようにします」とコメントする。
ストライプジャパンの共同代表ダニエル・ヘフェルナン氏は「Stripe Taxを日本で提供開始することは、スタートアップからデジタルトランスフォーメーション(DX)を目指す上場企業まで、あらゆる規模の日本企業を支援する継続的な投資の一環でもあります。国内展開のみならず、企業が海外展開する際にハードルの一つとなる税務処理をStripeのテクノロジーでサポートし、効率的な事業拡大およびグローバル展開をお手伝いします」と述べた。
Stripeは今後も企業の税務コンプライアンスの自動化と、複合的な税務サービスを提供する独立プラットフォームの構築に注力する方針だ。
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