「4人に1人が高評価でもワークメンタリティ不調」 止まらない“びっくり退職”の原因とは
リクルートマネジメントソリューションズは、「上司評価とワークメンタリティに関する実態調査」を発表した。上司から高評価の従業員の多くがワークメンタリティに不調があることが明らかになった。期待している従業員のメンタル不調による"びっくり退職"を防ぐ方法とは。
リクルートマネジメントソリューションズは2021年12月21日、「上司評価とワークメンタリティに関する実態調査」を発表した。本調査は、同社のマネジメント支援ツール「INSIDES」を利用する2万3005人の従業員とその上司を対象に実施したものだ。
ワークメンタリティと上司評価の関係
回答者のワークメンタリティ状態を見ると「良好」が48.8%、上司評価については「期待通り」または「期待を超えている」が56.1%と、どちらも約半数が良好な状態にあった。
ワークメンタリティと上司評価の分布は似ているものの、個人の心理状態と上司評価は必ずしも合致しない。上司評価が高いのにワークメンタリティは不調、あるいは上司評価が低いのにワークメンタリティは好調といった、ワークメンタリティと上司評価がねじれていた人の割合は44.6%だ。
上司評価が高評価かつワークメンタリティ好調者は全体の30.8%、高評価かつ不調者は全体の26.2%だった。リクルートマネジメントソリューションズは、「上司が気付かないまま従業員の心理状態が悪化しており、予期せぬ退職が起きる要注意のパターン」と推察する。
以降では高評価従業員の突然の退職、「びっくり退職」の理由やその具体的な対策を解説する。
勤続年数とワークメンタリティの関係
勤務年数別に従業員のワークメンタリティを見ると、ワークメンタリティの状態と上司評価の乖離(かいり)は2年目以降に大きくなる。
上司が高く評価する従業員の勤務年数別ワークメンタリティを分析すると、勤務年数が長くなるにつれて、ワークメンタリティの「当事者意識を持てる」が維持または徐々に上昇するのに対して、「仕事への誇りを持てる」と「フィードバックと承認がある」に関する得点は6年目にかけて低下する傾向が見られる。1年目からの下がり幅と比べると、ワークメンタリティ不調者の方が「仕事への誇りを持てる」と「フィードバックと承認がある」の得点が好調者に比べて大幅に低下する。
勤務年数別にカテゴリー別の課題選択率を見ると、仕事に関する課題(注1)選択率が2年目以降は頭打ちするのに対して、組織と会社に対する課題(注2)選択率は4年目以降も上がる。ワークメンタリティ不調者に限ると、組織に関する課題選択率は6〜9年目でピークを迎え、ワークメンタリティが不調の人の方が、組織と会社に関する課題の選択率は大きく上がる。
注1: 「納期や締め切りにいつも追われている」「仕事の難易度や達成基準が高い」「仕事で思うように成果が上がらない」など仕事に関する課題
注2:「職場メンバーとの関係がうまくいかない」「仕事の負荷が特定のメンバーに偏りがちである」
「びっくり退職」を防ぐには?
リクルートマネジメントソリューションズでは、「仕事に関する課題は仕事の量や難易度に関するもので、自分自身でコントロールしやすい。それに対して組織や会社に関する課題は、上司や同僚との人間関係や会社の制度や方針などの影響が強く、自身の仕事に比べてコントロールしづらい。組織や会社に関する課題感が高まることが、ワークメンタリティの不調者の増加につながる」と推察する。
リクルートマネジメントソリューションズの宇野 渉氏(HRアセスメントソリューション統括部 アセスメントサービス開発部 INSIDES企画開発グループ エンジニア)は、「期待していた従業員が急に退職してしまう『びっくり退職』を減らすには、社員と上司および会社間のギャップを双方が認識し、日々のコミュニケーションでギャップを埋める必要がある。少なくとも月に1回程度は対話する機会を設けるべきだ。ギャップは評価や仕事、外部環境のそれぞれで存在し、複数重なることで職場への不適応やメンタル不全に陥ったり、退職に至ったりする」と述べる。
お詫び:公開当初、タイトルを「高評価人材の4人に1人がメンタル不調 止まらない『びっくり退職』の原因とは」としていましたが、誤認させるタイトルであったため、訂正し再公開いたしました(2021年12月23日 11:30)。
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