遠隔地勤務や制度作りはどこまで進んだ? ワーケーションや実家で仕事も実現間近か
WHIが実施した「自己都合で遠隔地に居住する従業員の通勤や転勤の扱い」に関する調査によると、毎日の通勤が不可能な遠隔地への居住を何らかの形で認めている企業の割合は68.5%だった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてテレワークが急速に普及し、毎日オフィスに出社しない働き方は一般的になった。これまでは、職場までの通勤時間を考慮して居住地を決めることが多かったが、今後は都市部の高額な家賃を避けて郊外に居住したり、単身赴任せずに別の地域に住む家族と同居したりといった希望を持つ従業員が増える可能性がある。
7割の企業で遠方居住を許可 通勤手当や引越し費用など各種制度の運用は?
法人向け統合人事システム「COMPANY」などHR関連サービスを提供するWorks Human Intelligence(以下、WHI)は2022年2月21日、「自己都合で遠隔地に居住する従業員の通勤や転勤の扱い」に関する調査結果を発表した。同調査によると、毎日の通勤が不可能な遠隔地への居住を何らかの形で認めている企業の割合が68.5%に及ぶことが分かった。
今回の調査では、こうした個人的な理由で毎日の通勤が難しい遠隔地への転居希望に対する企業の対応や、通勤手当の取り扱いについて、COMPANYのユーザー企業を対象に聞いた。
遠隔地への居住を認めると言っても、何らかの条件を付している企業が多い。さらに、定期的なオフィス通勤がなくなった今、各企業は通勤費の仕組みをどう変更したのだろうか。
日々の通勤が難しい遠隔地への居住を「無条件で認めている」企業の割合は11.1%、「条件によって認めている」企業は57.4%だった。
通勤費については、実費支給に変更する企業が増えている。今回の調査で「従来の通勤手当を廃止して実費支給に変更した」と回答した企業の割合は34.4%だ。「従来の制度は廃止せずに、対象者に実費を支給する制度を追加した」と回答した企業は26.6%で、「何らかの形で通勤費を実費で支給している」と回答した企業は61.0%だった。WHIが2020年10月に実施した同様の調査では、通勤費を実費支給している企業は26.4%で、この1年で倍増したことになる。
上限を定めず通勤費を実費で支給する企業もある。通勤費の上限について「従前規定上の通勤手当の上限額を共通で利用している」と回答した企業の割合は42.5%、「対象者の1カ月の通勤定期代などの月額を上限にしている」は20.0%だ。これに対して「上限なし」は30.0%だった。
遠隔地への居住を認めている企業では、通勤費を「通勤の都度実費を支給」する企業の割合が34.6%で最も高い。次いで、「通常の通勤手当などと同様に定期券代を支給」が26.9%、「出張扱いとして、都度実費精算」が23.1%だった。
WHI総研のフェローである井口克己氏は、「通勤可能な距離を超える遠隔地での居住を認める企業が増えてきた。これは、テレワーク主体の就業スタイルが定着し、通勤手当を定期代から実費支給に変更するなど、環境が整ってきたからと考えられる。単身赴任の解消や、職場から遠距離に住む家族の介護のために近隣に転居することも可能で、従業員にとっても望ましい。多様な働き方の尊重は進み、居住場所の制限は少なくなっていくだろう」と述べている。
なお、遠隔地居住を認めていない企業では、その理由として「各種制度が遠隔地の居住を想定していないから」と回答した割合が76.2%(複数回答)で最も高かった。また、遠隔地に転居後、人事異動によって職場付近に戻る場合に、引越費用などの会社負担を「不可」とした企業の割合は33.3%だった。
井口氏は、「自己都合で遠距離に居住する場合には、引越や新居にかかる費用は自己負担が多い。また、転居時にはテレワーク主体であっても、その後出勤が主体となる部署に異動となった場合、会社の転勤者向け制度の利用に一部制限がある企業が多いことが分かった。テレワーク中心の職場と出勤が中心の職場が混在し、定期的に人事異動を実施している企業もある。転居の費用が自己負担になっていると円滑な人事異動の妨げになる恐れがあり、また従業員も遠隔地居住をちゅうちょすることも考えられる。今後、多様な働き方として居住地の自由化を進めるには、テレワーク中心の職場と出勤主体の職場間の人事異動を希望者のみとしたり、自己都合による転居に対しても住宅支援制度を充実させたりするなどの対策が必要だ」と述べている。
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