ティール組織とは?アメーバ経営やアジャイルとの違い、導入事例を解説
個々の従業員に権限を付与し、マネジャー層に当たる「管理職」は存在しない組織。外部環境の変化に即応できるとされる。
- ティール組織注目の背景
- ティール組織導入のメリット・デメリット
- ティール組織の導入事例
- 関連用語
ティール組織とは、組織を構成するメンバーに多くの権限を付与し、各メンバーが組織共通の目的に沿って動く組織を指す。各メンバーが自らをマネジメントするため、従来型の組織構造における管理職は存在しないか、マネジャーの権限が少ない。環境の変化に適応しやすい、業務効率が向上する、従業員エンゲージメントが向上するといったメリットがあるとされ「進化型の組織」として注目を集める。
ティール組織注目の背景
ティール組織は、2014年にフレデリック・ラルー氏が著書『Reinventing Organizations』で提唱した組織形態だ。同氏はマッキンゼーで組織改革プロジェクトに取り組む過程で、世界の組織を5つに分類した。赤、緑、といったカラーリングで類別した組織形態の中で、もっとも先進的な物がティール(青緑)組織とされる。
ティール組織は、上意下達型の意思決定に基づいて業務に取り組むヒエラルキー構造の組織と異なり、意思決定権が現場に分散する。素早い意思決定と環境の変化への対応が可能として反響を呼んだ。日本では2018年に同著の邦訳版として『ティール組織』が発刊され、働き方改革が叫ばれる中で「従業員がより主体的に働ける組織」として注目を集めた。
ティール組織導入のメリット/デメリット
ティール組織は「目的のために自律的に進化する組織」とされているが、全ての企業にとっても最適な形態とは限らない。下記のようなメリットとデメリットがある。
ティール組織のメリット
- メンバーが業務に主体的に取り組めるようになり、従業員エンゲージメントが向上する
- 素早い意思決定と行動により業務スピードが上がる
- 環境の変化に適応しやすい、柔軟な組織づくりができる
- 管理コストが削減できる
ティール組織のデメリット
- 従業員のモラルやセルフマネジメント能力に問題がないことが前提となっている
- 従業員一人一人の意識改革が必要
- リスク管理が困難
外部環境変化が激しいコンシューマー向けサービスを提供する企業においてはメリットが大きいが、リスク管理がシビアな業界や従来型の組織風土が定着している企業にとってはデメリットが大きい。
ティール組織の導入事例
「ティール組織」である企業は、ビジネスの目的を達成するために最適な組織の編成を模索した結果、似たような特徴を備えるようになるとされる。
国外事例:ビュートゾルフ
2006年創業のオランダの大手非営利在宅ケア組織ビュートゾルフは、2021年時点で1万5000人以上の看護師/介護士を要する。マネジャーやチームリーダーが存在せず、看護師チームにあらゆる権限が与えられている。
国内事例:ネットプロテクションズ
「NP後払い」サービスを提供するネットプロテクションズは、マネジャー職の廃止や360度評価等を盛り込んだ人事制度「Natura」を2018年に開始した。同制度の導入以前から職務内容や配属、異動などの裁量権は従業員が持ち、ティール組織としての制度が「後から追い付いた」ものとされる。
関連用語
進化型組織の概念にはさまざまな類語があり、それぞれ重複する意味を内包しながら使われている。以下に類似の用語を解説する。
アメーバ経営との違い
アメーバ経営とは京セラの創業者である稲盛和夫氏が考案した管理会計手法だ。従業員で6〜7人の小集団(アメーバ)を形成し、アメーバごとの時間当たり採算性をKPIとする。
アジャイルとの関係
ソフトウェア開発で取り入れられるアジャイル手法を他の製品開発にも適用し、実現する組織構造をアジャイル組織という。職種別ではなく製品やターゲット別にチームを形成し、開発やリリースの権限を与えて開発サイクルを促進する。
ホラクラシーとの違い
社内に階級構造を持たない組織形態をホラクラシー組織と呼ぶ。権限が従業員に委譲され、職務内容は職責ではなく役割(ロール)として振り分ける。意思決定プロセスは「ホラクラシー憲法」にのっとって実施され、随時発生する課題に対応する中で組織は自律的に変化する。
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