レガシー情報機器の利用状況(2022年)/後編
テレワークの普及によって電話やFAXといった「オフィスに出勤することを前提とした情報機器」を利用する機会が減る一方で、「廃止すると失注する」「経営者が廃止を望まない」といった理由で「レガシーな資産」がいまだに使われ続けているケースもあるようだ。
キーマンズネットは2022年3月14〜29日にわたり「レガシー情報機器の利用状況」に関する調査を実施した。調査は、コロナ禍で利用が減少したと想定される固定電話などを“レガシー情報機器”と定義し、利用状況や課題、今後の利用意向などについて聞いた。
調査レポートの前編ではコロナ禍による働き方の変化などによって、FAXや固定電話、TV会議システムといった”レガシー情報機器“の利用状況が変化したことを紹介した。後編となる本稿では、FAXやタイムカードといった機器がどの程度利用されているのかを明らかにする。
“それでも”FAXがビジネスで残る理由
まず、FAXを「利用している」と答えたのは、回答者の79.7%だった。用途としては「受発注の連絡(数値、文章)」(37.5%)、「顧客や取引先への問い合わせ」(31.3%)が高く、主に顧客対応業務で利用されていると分かる(図1)。
フリーコメントでも「業務委託先の企業がFAXでの対応を求めているため」や「FAXで受注しているため(FAXを廃止すると失注する)」など、FAXでのやりとりを希望する一部の顧客のために廃止できないとする声が目立った。
なお、回答者のプライベートにおけるFAXの利用状況を調査したところ、45.9%が自宅にFAXを「持っている」と回答した。一方で、そのうちの約6割(全体の27.2%)は「使わない」と回答している。53.8%は自宅にFAXを「持っていない」と回答しており、ブライベートにおいてはFAXの利用機会は限定的であることが見て取れる(図2)
タイムカードの電子化を阻む意外な壁
本調査では、「タイムカード」もコロナ禍の影響で利用する機会が減少した“レガシー機器”として定義した。タイムカードを「利用している」とした回答者は26.6%で、そのうちの約1割が「廃止予定」だ。 タイムカードを利用している回答者の中には「オフィス出社時にはカードで打刻し、在宅時にはクラウド勤怠管理ツールを利用する」など、紙のタイムカードと勤怠管理ツールを併用している例もあった。
タイムカード廃止後の勤怠管理方法としては「タイムカード機器を電子化したい(データで管理できるようにしたい)」(25.2%)、「詳細な勤怠管理が不要な制度に変更したい」(18.5%)が上位に挙がった(図3)。
一方、紙のタイムカードを今後も利用予定だとした回答者からは「個人的には電子化したいが、経営者が詳細で正確な出退勤の記録を望まない」や「電子化したいと思うが顧客先での管理業務でタイムカードが必要」といったコメントが寄せられ、電子化を進められない切実な事情を吐露する声もあった。
なつかしの“あの機器”も 企業に眠るレガシー情報機器
最後に、自社に残る「レガシー情報機器と思うもの」について聞いた。最も多かったのは「固定電話の子機として使用しているPHS」などの通話関連機器だ。企業によってはコロナ禍を背景にオフィス内で内線を引き継ぐ機会が減少したため、電話関連機器は特に見直しのニーズが高まっているといえる。
「帳票専用プリンタ」や「ドットインパクトプリンタ」「紙折り機」などの周辺機器も挙げられた。複写紙に素早く印刷できるドットインパクトプリンタは伝票処理業務に適しているが、EDI(電子データ交換)で機能を一部代用できるといった背景から、利用機会は減少していると考えられる。
他にも「『Windows XP』や『Windows 7』などサポートが終了したOSのPCを使っている」や「古いOSのサーバが稼働している」「ごく一部の情報をフロッピーディスクでやりとりしている」「いまだにCDで納品しているものが多数ある」といったコメントが寄せられた。
本調査の全回答者は477人で、企業規模別では1001人以上が39.6%、101〜1000人以下が35.0%、100人以下が25.4%。所属部門別では情報システム部門が31.4%と最も多く、次いで営業/営業企画・販売/販売促進部門が15.4%、製造・生産部門が13.6%、経営・経営企画部門が10.1%だった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
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