「こんなんじゃ使えない……」AI-OCR導入企業の8割が課題を持つ理由
業務の手間削減を期待して導入したものの、導入企業の約8割は導入後に課題を感じているという。その原因は一体何か。ユーザー企業のリアルな声をお届けする。
業務プロセスの効率化において、紙に書かれた文字を認識するAI-OCRの有効性が数年来注目されてきた。RPA(Robotic Process Automation)などの自動化ツールを導入している企業では、AI-OCRの活用によってさらなる自動化範囲の拡大を目指すケースもある。特に近年は、各ベンダーがAIエンジンの開発に力を注ぎ、99%以上の認識精度を出すツールも珍しくなく、実務利用に耐え得るものとして認識が広まっている。
このように業務効率化の有効打とされるAI-OCRだが、導入企業の間ではその評価が割れるようだ。ある調査によれば、AI-OCRユーザーの約8割が導入後に課題を感じているという。その原因は一体何か。ユーザー企業のリアルな声をお届けする。
AI-OCRの処理枚数は1日何枚?
ハンモックは2022年6月15日、AI(人工知能)を活用したOCR(Optical Character Recognition)の導入に関する実態調査の結果を発表した。
調査によれば、AI-OCRで1日当たりに処理している帳票の枚数は、「100枚以下」と回答した人の割合が32.9%、「101〜500枚」が34.9%、「501〜1000枚」が23.9%、「1001枚以上」が8.3%だった。100枚以上を処理している割合が7割近くを占めている(図1)。
AI OCR導入前に期待していたこととしては(複数回答)、「業務の手間を削減」が58.7%(複数回答)、「オフィスのペーパーレス化」が49.5%、「担当者のヒューマンエラーの防止」と「スムーズな帳票のデータ管理や検索」がどちらも45.0%だった(図2)。
ただ、このように手間やミスの削減を期待して導入したものの、実際には課題があるようだ。AI-OCRを導入した後に、課題が「かなりある」と回答した人の割合は19.3%、「ややある」は57.8%、「あまりない」は16.5%で、「全くない」は6.4%にすぎなかった(図3)。導入企業は何につまずいているのだろうか。
約8割がAI-OCRに課題あり 認識率99%でも苦労するワケ
具体的な課題としては(複数回答)、「確認作業の手間がなくならない」(56.9%、複数回答)や「文字認識の精度が低い」(43.1%)、「さまざまな帳票に対応できない」(36.3%)などが挙がった。他に、「管理できる人材が不足している」や「くせのある手書き文字の認識精度が低い」といった声も聞かれた(図4)。
実際、AI-OCRでの処理後に、目視で確認や修正を実施している割合は8割を超えている。具体的には、「全項目を目視チェックしている」割合は29.3%、「『確認が必要』と表示された項目のみ目視チェックしている」割合は51.4%、「AI-OCRではチェックせずに後続システムにデータを取り込んだあとシステム側でチェック」している割合は15.6%だった(図5)。
ハンモックによれば、AI-OCRの認識率は、現時点で99.1%程度が一般的だ。「99.1%」の精度では、およそ100項目に1項目の誤りが発生する。さらに「100項目に1項目の誤り」がどこで発生しているか分からないため、データ量が多くなるほど誤りの抽出が困難になる。AI-OCRを導入しても人力による全件目視作業が残ることから、「業務効率化が進まない」「費用対効果が感じられない」とする回答者も散見されたとハンモックは報告する。
こうしたことから、今後AI-OCRに求める機能として「高精度のデータ化」(65.1%、複数回答)や「OCR結果の確認作業の省略」(48.6%)を挙げる人が多かった(図6)。その他の回答としては、「管理の手間が掛からない」「RPAと連携できる」「低コスト」といった回答が挙がった。
また、「AI-OCRに加えて人のチェックによって高精度にデータ化し、自社での入力作業をゼロにするサービス」があれば、それを「かなり利用したい」と回答した人の割合は36.7%、「やや利用したい」は48.6%、「あまり利用したくない」は3.7%、「全く利用したくない」は1.8%だった。
なお、今回の調査は、AI-OCRを導入している企業の運用担当者を対象に実施し、109人から有効回答を得た。
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