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大人の「学び直し」実態調査 リスキリングを阻害、促進させる制度や上司の特徴は

パーソル総合研究所の調査では、リスキリングの実施状況や、リスキリングを促進する人事制度や人事管理、上司マネジメント在り方が明らかになった。

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 リスキリングとは「学び直し」を意味し、社会人が就業を続けながら新たなスキルや知識を得る取り組みを指す。近年は、デジタル技術の急速な発展による「技術的失業」への懸念などを背景に、国を挙げてリスキリングに注力している。どの程度の人が取り組み、どのような企業がリスキリングを成功させやすいのか。

 パーソル総合研究所は2022年7月21日、「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」の結果を発表した。同調査は、就業者のリスキリング(新たなスキルの習得)とアンラーニングの実態を明らかにすることが目的だ。全国の20〜59歳の正社員3000人を対象に、Web調査を実施した(調査期間:2022年5月13〜16日)。なお、第一次産業就業者は除くとしている。

 リスキリングの実態を見ると、「一般的なリスキリング」の経験がある人の割合は3割前後だった。具体的には、「新しいツールやスキルを学んだ経験がある」人の割合は32.6%、「知らない領域の知識を新たに学んだ」人は32.1%、「新たに仕事の専門性を広げた」人は29.9%だった(図1)。

 デジタル領域の新しい技術やデータ分析スキルなどを学ぶ「デジタルリスキリング」の経験がある人は一般的なリスキング経験よりも低い傾向にあり、「新しいデジタル技術を習得した人の割合」は21.0%、「ITツールやプログラミングなどを学んだ」人は20.0%。「統計データ解析や、AI(人工知能)などを用いた分析スキルを新たに身に付けた」人は15.9%だった。


図1 リスキングの実態(出典:パーソル総合研究所のリリース)

リスキリング促進の3つの鍵

 調査では、リスキリングを促進する人事制度や人事管理、上司マネジメントの在り方も明らかにしている。リスキリングを促進する3つの鍵とは。

組織内における「目標」と「キャリア」「処遇」の透明性を高める

 一般的なリスキリングには「目標の透明性」が最もポジティブに影響し、デジタルリスキリングには「キャリアの透明性」が最もポジティブに影響していた。「処遇の透明性」はどちらのリスキリングにもポジティブな影響が見られた。一方「会社都合の異動の多さ」は、一般的なリスキリングに対してネガティブに影響することが分かった(図4)。


図2 リスキリングと人事制度(出典:パーソル総合研究所のリリース)

日常的に新しい仕事のやり方を探索している上司の行動

 一般的なリスキリングには、上司自身が常に新しい市場や知識、スキルを調べ、学ぶ「探索行動」をとっていること、組織の目標やビジョンを信じ、日頃から話しているような「ビジョンの体現」を行っていることがポジティブに影響する。一方、デジタル・リスキリングには、一般的なリスキリングと同様に上司の「探索行動」が影響している他、今後の自分のキャリアを相談できる「キャリア支援」についての上司の姿勢がよりポジティブに影響している。


図3 リスキリングと上司マネジメント(出典:パーソル総合研究所のリリース)

業務の変化を起こすことが負荷になると捉えてしまう「変化抑制意識」を発生させない

 今回の調査では、「変化抑制意識」が高いほどリスキリングをしない傾向にあることが分かった。変化抑制意識は「今の組織で仕事のやり方を変えることは大変」「同僚はこれまでのやり方を好むだろう」など、所業務上の変化を起こすことに大きな負荷を感じて、現状維持を選ぶような心理だという。同心理は、アンラーニングにも負の影響をもたらしていると分かった(図6)。


図4 変化抑制とリスキリング(出典:パーソル総合研究所のリリース)

 変化抑制意識を下げる要因として、「目標公開・共有」「キャリア目標設定」といった目標の領域や、「再挑戦の歓迎」「業務外活動の推奨」が挙げられる。それに対して「相互援助の文化」は、変化抑制意識を高める傾向が見られた。

リスキングを支える「アンラーニング」って何?

 パーソル総合研究所では、リスキリングを支える学びとして「アンラーニング」「ソーシャルラーニング」「ラーニングブリッジング」という3つの特性を示している。同研究所はこれらの定義について、アンラーニングはリスキリングを支える学びとしてこれまでの仕事にかかわる知識やスキル、考え方を捨て、新しいものに変えていくこと。ソーシャルラーニングは、周囲の人を巻き込みながら学ぶこと。ラーニングブリッジングは、学んだ複数の内容や、学びと仕事をつなげて考えることとしている。

 パーソル総合研究所によると、これら3つの特性のうちアンラーニングの重要性が特に認知されるようになってきた。

 調査によると、アンラーニングを実施している正社員の割合は49.8%だった。実施内容を見ると「仕事の計画」(28.5%)、「仕事の手続きや方法」(28.3%)などが高かった。同研究所は「より表層的な取り組みの割合が高い」としており、同研究所が「深層的なアンラーニング」だとする「意思決定のプロセスや方法」(24.4%)や「顧客のニーズについての考え方や信念」(23.7%)といった項目はやや低かった(図4)。


図5 アンラーニングの実態(出典:パーソル総合研究所のリリース)

 アンラーニングを促進する要素としては、今の組織で「これから給与や経験、役職が得られそう」あるいは「学びが生かせそう」といった感覚が挙げられる。

 パーソル総合研究所では、アンラーニングは「それまでの仕事のやり方を続けても、成果や影響力の発揮につながらない」など、自身の限界を感じる経験(限界認知経験)によって促されるとしている。顧客との大きなトラブルや損失計上といった「業務上の修羅場」や、他組織との共同プロジェクトや副業・兼業などの「越境的業務」、新規事業やプロジェクト立ち上げといった「新規企画・新規提案業務」などだ。それに対して自身の「人事評価の高さ」は限界認知経験を抑制してしまう(図6)。


図6 限界認知経験とアンラーニング(出典:パーソル総合研究所のリリース)

 日本の労働者の学習習慣のないことは、さまざまな国際調査で指摘されている。パーソル総合研究所では、学び直しを広く促し、人的資源を最大化するためには、学習機会とより広義の人材マネジメントを組み合わせて実践していく戦略性が必要になるとしている。

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