会議室設置のWebカメラで最適なデバイスを選ぶには?
コロナ禍を経て、Web会議ソリューションを用いた遠隔コミュニケーションはもはや当たり前となった。会議室でWeb会議ソリューションを利用するには、Webカメラやマイク、スピーカーなどが一体化した専用端末が用いられる。Web会議ソリューションを会議室で活用する際に役立つWebカメラやデバイスを見ていく。
オフィスに戻りつつある今、顕在化する会議室の課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下で働き方が大きく変わるなか、在宅勤務が中心だった企業も少しずつオフィスに戻り始め、オフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」が浸透しつつある。オンラインで顧客との打ち合わせや商談活動、社内ミーティングの際にWeb会議ソリューションを利用するケースも増えたことだろう。
Web会議ソリューションがこれほど浸透する前までは、拠点間のミーティングや会議にはビデオ会議の専用端末を利用していた。しかし、急速なテレワークへの移行が求められたコロナ禍到来当初は、従来のビデオ会議ツールでは従業員の自宅との接続が難しいことから、クラウドで利用できる「Zoomミーティング」(以下、Zoom)や「Microsoft Teams」(以下、Teams)によって遠隔コミュニケーション環境を整備した企業も多いはずだ。
そして今、少しずつオフィスへと戻りつつあるが、そこで新たな課題が生じる。以前使っていたビデオ会議ツールがうまく使えないことだ。出社したメンバーが会議室に集まり、テレワーカーとミーティングをする時、会議室に設置していた専用端末では社外への接続が難しいことに気が付くだろう。しかも、コロナ禍で多くの従業員が慣れ親しんできたZoomやTeamsといったWeb会議ソリューションが専用端末では利用できないケースがある。
Zoomを使おうとメンバーが会議室にノートPCを持ち込み、PC内蔵のカメラやマイクを使って接続しようとすると、音声がハウリングしたり、メンバー全員が会議室のWi-Fiアクセスポイントに接続することでネットワークの遅延を招いたリといった事態が発生する可能性がある。会議室にいるメンバー全員がITリテラシーが高いとは限らず、なかなか会議が始まらないといったこともあり得る。
こうした状況を打開するために、会議室の遠隔コミュニケーションを最適化する新たな会議ソリューションを導入する企業が増えつつある。
会議室に求められる遠隔ミーティングの実態
会議室におけるWeb会議環境を整備するには、2つのアプローチが考えられる。一つが、会議室全体を映し出す視野角が広いWebカメラや、参加者全員の声が拾える集音マイク、スピーカーがセットになったデバイスを導入し、USBで持ち込んだPCと接続して会議室全体をカバーする方法。もう一つが、ZoomやTeamsの会議室専用ライセンスを契約し、会議室で利用できるデバイスを導入する方法だ。
前者は、Web会議ソリューションは情報システム部門が導入しているものの、会議体験を向上させようと事業部門が個別にデバイスを調達する時の選択肢となりやすい。後者は、情報システム部門などが会議室用のライセンス及びデバイスを一括で調達し、情報システム部門管轄で管理する場合に多く見られる選択肢だ。
具体的なソリューションを見ると、上記の画像右下のモデルが小規模会議室向けの「Logicool MeetUp」、モニター下中央に設置されているのが上から中規模会議室向けの「Logicool Rally Bar」と、そのさらに下にある小会議室向けの「Rally Bar Mini」だ。会議室専用ライセンスで動作可能な専用端末として利用するのはもちろん、PCのWeb会議ソリューションをコーデックに、シンプルなWebカメラやスピーカー、マイク一体型のデバイスとしても利用できる。
どちらもアプローチとしてはあり得るが、デバイスを統合管理してガバナンスを強化しながら、均一かつ最適なユーザー体験を提供しようとするならば、後者の会議室専用ライセンスを搭載可能な専用端末を導入するのが理想的だろう。操作方法もシンプルで、ITリテラシーの差をうまく吸収できる。なお、会議室で利用するためのライセンスは、Zoomであれば「Zoom Rooms」、Teamsであれば「Microsoft Teams Rooms」だ。
海外のWebカメラは日本の製品と違いはあるのか?
Webカメラなどのデバイスにおいて、海外と日本で違いはあるのだろうか。今回は対象としていないが、自宅で利用するWebカメラについては、日本ではPC内蔵のカメラやマイクをそのまま利用するケースが多く、Webカメラが内蔵されていない場合は、従業員自身で購入するのが一般的だ。企業で一括購入数するケースも含め、比較的安価なモデルが人気となっている。映像だけでなく会議で利用する場合は音声品質もPC内蔵マイクでは課題が多く、音楽用のイヤホンなどを使用するケースも見受けられる。ノイズキャンセリング機能などが備わったヘッドセットなどを利用することで、雑音や音の跡切れなども回避しやすくなるはずだ。
一方で海外の場合は、個人向けのWebカメラであっても会社が調達して従業員に配布するのが一般的だ。オンラインとはいえコミュニケーションの重要性を認識しており、生産性向上やクリエイティブな発想につながるよう品質を求める傾向にある。従業員に最高の体験を提供するだけでなく、相手に対してもストレスを与えないように配慮するなど、コミュニケーション環境もしっかりとした投資をする傾向が強い。
また、日本は利用頻度の高い一部の会議室に導入するケースが多く、海外では全ての会議室に設置する傾向にある。どの会議室からもすぐにコミュニケーションできるようにしておかなければ、コミュニケーションロスによる機会損失につながると考えているためだ。
コロナ禍における遠隔コミュニケーションの重要性は日本でも十分に認識されており、会議室に最適なコミュニケーション環境を整備することが当たり前になるだろう。
会議に集中できる、会議室で使うからこそこだわりたい「没入感」
会議室で利用するWebカメラをはじめとした遠隔コミュニケーション向けデバイスだが、Webカメラの解像度やフレームレート、会議室全体を映し出すための画角、パンやチルト、ズームなどのPTZ(Panoramac、Tilt、Zoom)機能が価格帯によって分かれており、高額になればなるほど高品位な映像や音声でのやりとりが可能になる。
また、機能面では会議の没入感を高める機能が充実している。マルチストリームによって会議室全体を映し出した上で、人物を認識して会議参加者を個別に切り出して表示する機能が備わっているものもある。ただし、マルチストリームで会議時の没入感を表現するには、デバイス自体のCPUパワーやネットワーク帯域などのリソースを十分確保する必要がある。
USBでPCと接続するだけのシンプルなWebカメラでは、PCのスペックに依存する機能の実装は難しく、Zoom Roomsなど会議室専用ライセンスに対応できるコンピューティング機能が搭載されたデバイスが必要になる点に注意したい。
なお、マルチストリームによって会議参加者を個別に切り出して表示する機能は、現時点では特定のWeb会議ソリューションにしか実装されていない。ただ、クラウドサービスとして提供されるアプリケーションでは徐々に機能が追加され、今後多くのWeb会議ソリューションで対応が進むだろう。
製品選定における4つのポイント
大前提として会議室の広さや参加人数で選ぶ
会議室で利用するデバイスは、部屋の広さや参加人数などを基に選択することが大前提となる。定員4〜5人の小規模会議室、10人前後の中規模会議室、そして15人以上が入れる大規模会議室に分けられる。画角は広めの90〜120度ほどで、解像度はHD 1080P(フルHD)であれば十分な品質が確保できる。広い会議室で利用するのであれば、カメラのズーム機能はもちろん、複数の拡張マイクを接続することで奥にいる人の声も鮮明に拾える拡張性が欲しいところだ。
会議体験が最適化できる環境が望ましい
会議室ごとで接続手順や使い方が異なると接続のたびに時間がかかってしまい、ミーティングの開始までに時間がかかり、機会損失にもつながりかねない。それを回避するためにも、可能であればどの会議室においても使い勝手を統一し、すぐに会議が始められる環境を整備した方がいい。
例えばロジクールは「Logicool Tap」は、Web会議ソリューションを制御するコンソール機能を持ったデバイスを提供しており、机の上や壁掛けなどで各部屋に設置することで、どの部屋でも同一のユーザー体験が可能になる。ただし、コンソールはWeb会議ソリューション各社が提供するインタフェースを表示させるため、技術提携を行っているサービスベンダー以外のコンソールは表示できない。
なお、各サービスベンダーのWebサイトで、自社のサービスに適したデバイスを認定製品として設定している。企業コミュニケーションに重要なデバイスとなるため、障害時にも対処しやすい認定製品を選択することをお勧めする。
企業にとって必要なデバイスの統合管理
当然ながらデバイス管理についても考える必要がある。会議室に設置しているWeb会議用デバイスを統合的に管理するツールも欲しいところだ。Webカメラをはじめとした会議デバイスを提供するベンダーは独自の管理ツールを提供しており、それらの使い勝手についても確認しておきたい。
ロジクールが提供する「Sync」は、クラウドで会議室の各種デバイスの統合管理を可能にし、各デバイスの設定や最新ファームウェアの展開、利用状況の把握などもポータル画面から確認できる。障害発生時にはアラートを出し、ポータル画面での状況把握はもちろん、「ServiceNow」などと連携してシステム部門にチケットを発行するといったこともAPI連携で可能だ。会議室の利用状況や部屋の使用率、座席使用率といった情報もWebカメラをセンサーとすることで取得できる。
Syncは会議室に設置されたデバイスだけでなく、テレワーカーに配布しているWebカメラなどパーソナルデバイスも統合的に管理できるため、自宅で従業員が利用する“野良Webカメラ”などのリスク排除も可能だ。ハイブリッドワークでは、従業員宅のデバイスも統合的に管理したい。こうしたツールを利用することで、ガバナンスを強化できるだろう。
会議室に求められる拡張性
会議室に設置されたデバイスは各種インタフェースが備わっており、拡張性を持つものが多い。会議に必要な機能を柔軟に拡張できるものを選択したいところだ。一般的な会議室にはホワイトボードが設置されていることが多いが、オンラインでホワイトボードの内容を共有する場合、カメラで映して共有する方法もあるが、書画カメラをUSBで接続してオンラインでもスムーズに共有できれば、さらにユーザー体験を高めることができるだろう。
また会議室に入室する際に会議の予定情報を表示させるなどの連携が可能であれば、会議室の入出管理も容易だろう。普段の会議室運用に適した環境づくりに対応できる拡張性があるかどうかは確認しておきたい。
なお、会議に必要な各種デバイスはUSBケーブルで接続することが多いが、外に見えてしまっていると誰かが誤って栓を抜いてしまう恐れもある。デザイン性の面も含めて、きちんと収納した上で抜けにくいオプションがあるかどうかも見ておきたいところだ。
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