ワークフローツールの導入状況(2022年)/前編
キーマンズネットは2022年8月9日〜12日にわたり「ワークフローツールの導入状況」に関する調査を実施した。多くの読者がワークフローの起因した効率の低下に悩んでいた。
キーマンズネットは2022年8月9日〜12日にわたり「ワークフローツールの導入状況」に関する調査を実施した。
前編となる本稿では、「社内で書類を申請、回覧、承認する方法」や「自社が抱えるワークフローの課題」「ワークフローツール検討時の重視ポイント」を紹介する。
「承認完了まで1カ月」「電話での承認催促」「複雑怪奇な申請フロー」
はじめに、社内業務の申請や資料回覧がどのように運用されているかを複数回答で聞いたところ、「グループウェア内のワークフロー機能を使って申請する」(46.3%)や「ワークフローの専用ツール」(42.9%)が上位に挙がった(図1)。
「Excelなどのツールで書類を作成した後、紙に印刷して申請する」とした回答者は36.6%で2021年調査の30.9%より微増したが、「Excelなどのツールで書類を作成した後、メールなどで申請する」(33.2%)、「所定の用紙に手書きで記入して紙で申請する」(17.6%)は前回調査よりも数ポイント減少した。「脱Excel/ペーパーレス化」は、一進一退のようだ。
自社のワークフローに対し、従業員はどのような課題を感じているのか。フリーコメントで聞いたところ「申請書類や形態によって承認の手順やツールが異なる」「紙やExcelでの運用が残っている」「承認までに時間がかかる」といった理由で効率が上がらないという課題が挙がった。以下で、それぞれについて寄せられたコメントを抜粋して紹介する。「最悪なパターンでは、PDFを印刷して、手書き、スキャナ読込、添付という申請フローもある」というように、多くの読者がワークフローの起因した効率の低下に悩んでいた。
<申請書類や形態によって承認の手順やツールが異なる>
- 申請、承認プロセスを統一できていない。対面で申請が必要な場合があり、出社のタイミングが合わないと承認までに時間がかかる
- ワークフローの種類(申請内容)次第で、回覧、承認のパスやツールも異なる為、作業が効率化できない
- マニュアルや申請手順、申請先が幾つも存在し、何もかもが分かりづらく煩雑
- (ワークフローツールについて)全従業員のアカウントがなく、Excel申請書と混在している。
<紙やExcelでの運用が残っている>
- 総務や労組関連業務を中心に紙ベースの申請が残っている。最悪なパターンでは、PDFを印刷して、手書き、スキャナ読込、添付という申請フローもある
- 紙が行方不明になる
- 紙での回覧が必須で、手書きや押印などの手間が多い。押印のための出社が必要
- なんでもかんでもExcelで面倒
- 案件によって申請書の回覧先が異なり、承認フローの書かれたExceファイルを見つけるのも大変。さらにそれが最新のバージョンなのか、案件に対する正しいものかということも分からない
<承認までに時間がかかる>
- 決裁を急ぐ場合は、承認者に対して順番に電話で督促をする必要がある
- 承認者が外出していると承認までに時間がかかる
- 申請、承認に1カ月かかる
- 在宅勤務の日の決裁が煩雑
<その他>
- 紺屋の白袴でお客さまに自信を持ってワークフローツールを提供できない。
- 海外とのやりとりで意思疎通がむずかしい
- 承認者が内容をチェックせずにただ承認ボタンを押すだけで、承認後の間違いや不備の発覚が多い
- 書類に電子印で押印するが、簡単に印影がコピーできるので、書類承認の偽造が懸念される。
- 「Notes」から「Microsoft 365」へ移行後、「SharePoint」「Power Apps」「Power Automate」などの組み合わせでワークフロー開発してみたが、簡単と言われている割には開発コストが結構かかった。顧客へ切り替え提案するにも開発を請け負うには予想以上にコストがかかりそうで、積極的に提案しにくい。
ワークフローツール検討で重視するもの
ワークフローの課題は多岐にわたるが、ワークフローツールの導入時はどのような点を重視するのだろうか。「操作性の良さ」(79.0%)が最も回答率が高く、「導入コスト・運用コスト」(65.9%)、「安定性・可用性」(54.1%)、「帳票設計が容易」(38.5%)「保守・サポート」(38.0%)などが続いた(図2)。「操作性の良さ」は経理や総務、システム部門などへの問い合わせ対応コストに直結することから優先順位が高いと考えられる。
2021年に行った前回調査と比較すると、上位項目に変化は見られなかったものの「モバイル端末への対応」や「仮想環境・クラウド環境への対応」「柔軟なフロー設計」といった項目が、前回に引き続き4〜5ポイント伸びていることが分かった。リモートワークを想定したワークフローの効率化や、多様な業務に合わせた柔軟な設計が可能かどうかなどが引き続き注目されているようだ。
以上、前編では申請、回覧、承認などのワークフロー運用の現状と課題、専用ツールに求めることなどを紹介してきた。後編ではワークフローツールを導入している企業を対象に導入形態や連携ツール、利用満足度などの調査結果を紹介する。
なお、全回答者数205人のうち、情報システム部門が31.2%、製造・生産部門が15.6%、営業・販売部門が12.2%、経営者・経営企画部門が7.8%といった内訳であった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
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