ABBYYがAI OCRサービスに本人確認機能を追加で何が可能になった?
ユーザーに負担がかかるオンラインでの本人確認を、いかに簡素化、効率化するかは、金融機関など本人確認を必要とする企業にとってこの課題にアプローチするオールインワンの本人確認ソリューションをABBYY ジャパンが発表した。どのような強みがあるのか。
「難解な本人確認プロセスはビジネスチャンスの喪失につながっている」。AI OCRやプロセスマイニングサービスを提供するABBYY ジャパン(以下、ABBYY)の代表取締役社長の前田まりこ氏はそう述べる。
世界規模でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む今、消費者がオンラインで商取引する機会は激増した。金融サービスで新規口座開設やユーザー登録をする際に「本人確認」が必要になるシーンも増えた。
米国連邦取引委員会のレポート(注1)によると、個人情報の盗難やなりすまし詐欺などによって、2021年には280万人以上の消費者が59億ドルの損害を受けた。この数値は前年よりも70%以上増加している。詐欺行為防止を目的とした本人確認に対する企業の対応がますます重要になってきた。本人確認を怠った企業に対して統括機関から多額の罰金を科される事態も起きている。
一方で、オンラインでのフォーム入力といった本人確認のためのフローが消費者にとってネックとなり、約68%が離脱しているというデータ(注2)がある。これは銀行や証券会社、クレジットカード会社など、本人確認を必要とするサービスを提供する企業にとって大きな機会損失だ。本人確認プロセスを簡素化できれば、ユーザーのストレスを軽減し、途中離脱の抑制につながると前田氏は話す。
こうした課題を解決する手段としてABBYY ジャパンは、2022年10月24日、身分証明や本人確認をオンラインで行うソリューション「Proof of Identity」の提供開始を発表した。AI OCRサービス「ABBYY Vantage」とプロセスマイニングサービス「ABBYY Timeline」に搭載されるツールだ。Proof of Identityによって、何が可能になるのか。
読み取りや顔照合などの機能を提供
「Proof of Identityは、本人確認プロセスにおいてユーザーの利便性とセキュリティ、効率性を確保することを目的に開発した」と前田氏は話す。機能は以下の通りだ。
- 本人確認情報の読み取り。モバイルキャプチャーやドキュメント仕分け
- 本人確認情報の確認。画像の改ざんによるなりすましの検出
- 顔照合(NIST(米国国立標準技術研究所)の評価におけるトップクラスのアルゴリズムをベースにした極めて誤りの少ないもの)
- ドキュメントのトレイリング(文書処理中心の本人確認)
- 例外処理(特定の取引に対する任意の人手による監査)
- プロセス改善の可能性を見つけるためのプロセスインテリジェンスとマイニング
銀行、証券、保険などの金融サービスにおける口座開設や顧客書類の確認、住宅ローン申し込み、クレジットカードの申請など、本人確認が必要となる手続きは多い。こうした手続きにProof of Identityを利用することで、迅速な口座開設や事務処理コストの削減、不正行為の削減などが期待できる。スムーズな本人確認プロセスの提供は顧客満足の向上にもつながる。
文書処理のプロセスと合わせることでメリットを最大化できる
ABBYYジャパンシニアプリセールスエンジニアの近井英樹氏は、Proof of Identityを利用した本人確認プロセスの一例を紹介した。
Proof of Identityの本人確認プロセスは「ID読み取り」「ID検証」「顔照合」の3ステップだ。「ID読み取り」のフェーズで、ユーザーはID(運転免許証や保険証などの身分証明書)の画像をPCまたはスマートフォンでアップロードする。
スマホでIDを撮影する際は、スマホのカメラをIDに向け、最適な位置とサイズにIDが収まると自動的にシャッターが下りる。シャッターボタンを押す必要がないので、手ブレすることなく鮮明な画像を撮影できる。また、裏表が逆だとエラーが表示されるため、間違った面を撮影する心配はない。画像をアップロードすると同時に、IDが本物なのかどうか、改ざんされていないかどうかの検証が行われる。
次にユーザーはスマホで自撮り画像をアップロードする。インカメラを自分に向け、枠内の最適な位置に顔が収まると、自動シャッターが下りる。この段階で、先ほどアップロードしたIDの顔写真とセルフィー写真が一致しているのかどうかが照合される。
ID以外の必要書類(申込書など)がある場合もスマートフォンで撮影、アップロードする。AI OCRを使って書類の情報を読み取り、必要な項目が漏れなく入力されているか、氏名や住所などの記載内容がIDと合致しているかが照合される。記入漏れがあればエラーが示されるので、修正して再度アップロードする。紙の書類でやりとりする時のように、内容の不備による差し戻しに手間と時間がかかることはない。
こうした流れで、ユーザーにとってはストレスなくスムーズに本人確認手続きを完結できる。企業側にとっては、本人確認プロセスを半自動的に処理できるというメリットがある。
Proof of Identityが搭載されているのは、AI OCR「ABBYY Vantage」とプロセスマイニングサービス「ABBYY Timeline」だ。これらと合わせてProof of Identityを活用し、社内の業務システムと連携させることで、本人確認を含むドキュメントプロセスをワンストップで自動化、効率化できる。「当社のAI OCRと組み合わせて使っていただくことが、競合製品との差別化のポイントとなる」と近井氏は話した。
最後に前田氏は、「今まで時間とコストをかけていた作業を自動化することは、顧客と企業の双方にメリットをもたらす。
ABBYY ジャパンでは、本人確認業務が多い銀行や証券、生命保険、不動産などの業種にターゲットを絞り、導入を拡大する予定だ」と意気込みを語った。
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