IT資格の取得状況(2022年)/前編
読者のアンケート調査を基に、IT資格について現在保有している資格(35種類)と今後取得したい資格(39種類)をランキング形式で紹介する。
IT業界において、必要な能力とスキルさえあれば業務を進めることはでき、資格が必ずしも業務で必要になるとは限らない。しかし、職場によってはプロジェクトへの参画条件として指定の資格取得を求められたり、昇給、昇格の条件として設定されていたりする場合もある。また、就職、転職活動の際に、応募先に自身のPRポイントを目に見える形で示したいと思う時もあるだろう。
このように資格を求める理由はさまざまだが、資格の保有傾向に変化はあるのか。また、人気の資格やトレンドに変化はあるのだろうか。キーマンズネットが実施したアンケート調査(期間:2022年11月18日〜12月2日、有効回答件数:443件)を基に、IT資格の取得状況と、現在人気の資格を探る。グラフで使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、あらかじめご了承いただきたい。
保有するIT資格、トップ3は例年通り、4位以降で順位に変化
まず、回答者全員に対して「現在、保有しているIT関連の資格はあるか」と聞いたところ、65.9%が「保有している」と回答した。2021年11月に実施した前回の調査と比較して、「保有している」とした割合は3.0ポイント増加した(図1)。
IT資格を保有しているとした回答者に対して、保有する資格を複数選択方式で尋ねた結果、図2のような並びとなった。
最も保有割合が高いのが「基本情報技術者」で48.6%だった。2021年の前回調査と比べてトップ3までは変化は見られなかったが、今回の調査では2021年は4位だった「ネットワークスペシャリスト」が6位に落ち、6位だった「情報セキュリティマネジメント」が4位に上がる結果となった。
「情報セキュリティマネジメント」(20.5%)などのセキュリティ分野の資格はここ数年で堅調な伸びを見せ、前回の調査から今回は6.8ポイント増加した。同様に「AWS認定各種」(12.3%)が4.8ポイント、「Microsoft Azure認定各種」(10.6%)が6.3ポイント増加し、クラウド分野の資格を求める傾向は年々高まりを見せる。
取りたいIT資格39種、大幅ランクダウンのあの資格は人気に陰りか
ここまではIT資格取得の現状について見てきたが、以降ではIT資格取得の意欲とアンケート回答者が狙っている資格39種類についてランキング形式で紹介する。
今後、取得したいまたは取得予定のIT資格について尋ねたところ、2021年に実施した同様の調査では「ない」が52.7%だった。今回も同様の質問をしたところ「ある」が55.3%と、2021年の結果と比較するとプラス2.6ポイントとなり、微増という結果となった(図3)。これを従業員規模別に見ると、50人以下の中小企業以外の規模帯においても「ある」が半数を超え、IT資格取得意向はやや回復傾向にあると予測できる。
取りたい資格ランキング39位〜21位
取得したいまたは取得予定のIT資格が「ある」とした回答者を対象に、取得したいIT資格について39種類のIT資格の中から選択形式(複数回答可)で尋ねた。
39位〜30位(図4)には既に取得済みの回答者も多いためか、「CCNA」や「CCNP」「ORACLE MASTER」といった定番資格が並んだ。30位〜21位にはAIや機械学習ののスキルを認定する「E資格」や「RPA技術者検定」がランクインした。2021年の調査結果と比較すると、RPA技術者検定は10位から20位となり、大きく順位を下げた。
続いて、19位〜1位だ。まず19位〜10位では、「プロジェクトマネージャ試験」「PMP」(Project Management Professional)などのプロジェクトマネジメント系資格や、「VM ware認定資格」「LPIC」(Linux Professional Institute Certification)などのサーバ系定番資格がランクインした。LPICは2021年の調査では25位だったが、今回の調査では19位と順位を上げた。
取りたい資格ランキング20位〜1位
そして、取得したい(取得予定の)資格1位は「AWS認定資格」であった。AWS需要が伸びてか2021年も1位となり、24.0%から30.2%とプラス6.2ポイントの伸びだ。トップ10には主にクラウドベンダーの認定資格がランクインした。その他は、「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」「応用技術者認定」「基本技術者認定」などの国家資格は引き続いて人気のようだ。
「実務で必要」「転職に有利」がIT資格取得の2大動機
資格の取得を必要とするその裏には何らかの意図や目的があるはずだ。回答者がIT資格に求めるものは何だろうか。
「IT資格を取得する目的」について複数選択方式で尋ねたところ、「実務でも必要になるため」が最も多くの回答を集め43.7%、次いで「就職、転職を考えているため」が31.4%となった(図6)。
また、資格取得で「重視するポイント」を聞いたところ、「実務に生かせるかどうか」(68.5%)や「昇給や昇進など取得メリットがあるかどうか(25.7%)といった意見が多い(図7)。ただ「汎用(はんよう)性の高い資格かどうか」(41.4%)や「就職、転職に役立つかどうか」(28.4%)など就転職を重視する意見のほうが前回の調査と比較して増加傾向にあり、1年前より「就転職に生かそう」という動機が強く出ているのが今回の結果と言えそうだ。
厚生労働省が発表した全国の有効求人倍率は、2022年10月は1.35倍と、2021年10月と比較して0.2ポイント増加しており、徐々にコロナ禍以前の状態に戻りつつある。就転職を望む人にとっては売り手になりつつある市場変化も、IT資格の取得意向が高まった要素と考えて良さそうだ。
前編となる本稿ではIT資格の現取得状況や今後の取得意向、資格取得の目的や重視するポイントなどを紹介した。後編では、資格取得に至るまでの学習方法や勤務先の支援制度などについて調査結果を見ていく。
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