“鳴りやまないチャットツール”は企業にいくらの損失を生み出す?
従業員は、Web会議ツールやチャットアプリなどのオンラインコミュニケーションに疲れ果ててイライラし、同僚や上司、勤務先との関係性が悪くなる可能性があるという。関係性の悪化による損失はいくら発生するのだろうか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる働き方の変化に伴い、職場のコミュニケーションは大きく変わった。オンラインのコミュニケーションはWeb会議ツールとチャットアプリが主流になったが、従業員はやりとりに疲れ果ててイライラし、同僚や上司、勤務先との関係性が悪くなる可能性があるという。
コミュニケーションによる損失はいくら発生する?
コミュニケーションへの不満に対する代償は高くつくことがある。GrammarlyとThe Harris Pollはコミュニケーションに関する調査を実施した。
調査対象のビジネスリーダーは「コミュニケーションにおけるミスは、コストの増加や納期の遅れ、ブランド評判の低下、生産性の低下につながる」と述べた。また、従業員500人の企業ではコミュニケーションの問題を解決するために毎年625万ドルの損失が発生しているという(注1)。
Enboarderのアンドレア・デュモン氏(CMO:チーフマーケティングオフィサー)は、HR Diveに次のように語った。
「つながりを感じない従業員は会社を辞める可能性が高い。従業員は同僚や勤務先と真の関係を築き、帰属意識を高めることを望んでいる。彼らは大きな目的と使命に結びついた、真のエンゲージメントを求めている」
小さな積み重ねで生まれる“オンライン疲れ”
パンデミックによってリモートコミュニケーションツールは大きく変化した。Web会議は「あったらいいな」から「必須」になった。2019年12月、1日当たりの「Zoom Meeting」の会議参加者数は約1000万人だったが、2020年4月には3億人に急増した(注2)。同社は売り上げの見通しを引き下げたが、ビデオ通話や会議がなくなることはない(注3)。Web会議によるコミュニケーションでは、従業員が個別に働くのとは異なり、互いの顔を身近に見たりドキュメントを共有したりすることができ、ビジュアルコミュニケーションを促進できる。
Interaction Associatesでは、メールやチャットアプリなど非同期型のコミュニケーションが増えている。「テレワークやハイブリッドワークが増え、誰もが同じ時間に同じ仕事をするわけではなくなってきている」と、Interaction Associatesの最高執行責任者であるクリス・ウィリアムズ氏は言う。このようなコミュニケーションは、労働時間や時差のギャップを埋められる。
しかし、非同期型のコミュニケーションツールを常にチェックする必要があるとなると、従業員は摩擦やフラストレーションを感じるかもしれない。GrammarlyとHarrisのレポートによると「回答者の49%がタイムリーな返答を送ることに苦労している」と答えた(注1)。「複数のコミュニケーションチャネルから大量のメッセージが届くと、従業員は本当にうんざりし、不安が高まる」とウィリアムズ氏は語る。
このような場合、チャネルをどのように使うべきか、企業は明確なガイドラインを設定する必要があると同氏は指摘する。
またウィリアムズ氏は、「マネジャーは非標準的な勤務時間の場合、通常の勤務時間内にメッセージが表示されるようにスケジュールを組まなければならない」と付け加える。土曜日の午後4時にメールやチャンネルメッセージを送ると、従業員は休日にいつでも連絡取らなければならないとプレッシャーを感じてしまう。
テレワーカーやハイブリッドワーカーを冷遇しない
コミュニケーションツールは技術的に進歩しているにもかかわらず、テレワーカーやハイブリッドワーカーは、オフィスワーカーと同様の扱いを受けなければ疎外感を感じたり、リーダーから罰せられることを懸念したりする。これらの従業員は、職場の近接性バイアスによって自分が責を負わないところで昇給や昇進の話から取り残されてしまうと感じることがある(注4)。マネジャーはそのような偏見を持たれていることに気付いていないかもしれない(注5)。
「雇用主と従業員は、特にチーム内、チーム間および組織とのコミュニケーションに関して計画的になる必要がある」とデュモン氏は述べる。
就労形態がハイブリッド型の職場では、複数の人がオフィスにいる時間帯を意識してスケジューリングする必要がある。「そうすれば週に1〜2日、ヘッドセットをつけて、電話ボックスで仕事をしながらミーティングするようなことはなくなる」と同氏は言う。例えばあるクライアントは、営業とマーケティングが同じ日に来社するようにしている。
「人事担当者は、つながりやコミュニケーションレベルなどの問題について従業員がどのように感じているかを定期的にチェックする必要がある。これによって組織の状況を把握でき、従業員が世界のどこで働いていてもつながりを感じられるようになる」(デュモン氏)
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