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米Microsoftが無制限の有給休暇を導入 どういった思惑があるのか

Microsoftは、米国の従業員に対して無制限の有給休暇を導入する。しかし、多くの企業で有給取得率は下がる傾向にあり、無制限の有給はさらに取得率を下げるという意見もある。

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HR Dive

 Microsoftは、米国の従業員に対して無制限の有給休暇を導入する。無制限の有給休暇は労働者の休暇取得を促進しないという考えもあるが、Microsoftの思惑とは。

有給取得率が下がる中、無制限にする狙いとは

 テクノロジー企業大手のMicrosoftは、3年近くにわたるパンデミックに起因する、人事施策の変更を試みている。例として、一部の職種で「永続的ハイブリッド勤務」を採用した(注1)。

 技術系ニュースサイト「The Verge」が入手したMicrosoftの社内情報によると、Microsoftは無制限の有給休暇に加えて、10日間の全社休業や休職、病欠、メンタルヘルス休暇、陪審員義務休暇、忌引休暇を実施する(注2)。未使用の有給休暇がある従業員には、2023年4月に有給休暇引当金が支給されるという。

 「従業員がいつ、どこで、どのように仕事をするかは劇的に変化している。無制限の有給休暇は、より柔軟な働き方に向いている」とMicrosoftの広報担当者は述べた。

 Microsoftは、柔軟性に関する規範を設定した上で管理職と従業員が連携することによる効果を強調してきた。

 Microsoftのクリス・カポセラ氏(エグゼクティブバイスプレジデント兼最高マーケティング責任者)は、2022年2月14日の同社の公式ブログで次のように述べている(注3)。「私たちの永続的ハイブリッド勤務に対するアプローチは、ほとんどの職務においてスケジュールの柔軟性を標準として受け入れ、従業員にとって最適な働き方を提供するとともに、個々人の計画を上司やチームのルールに合致させる方針だ」(カポセラ氏)。

 無制限の有給休暇は、従来通り休暇を追跡するよりも管理が容易になる可能性がある。企業が従業員に仕事以外の生活に必要な時間を提供できる可能性もある(注4)。

 しかし、人事専門家の会員制組織Society for Human Resource Management (SHRM)が実施した調査「2022 Employee Benefits Survey」によれば、この制度を導入している企業はわずか6%にすぎない(注5)。理由は、無制限の有給休暇は、他の休暇との関係で管理上の問題が生じる可能性があるためだと思われる。また、従業員に無制限の有給休暇や他の休暇と仕事を両立させるのは難しく、燃え尽き症候群を引き起こす可能性も考えられる(注6)。

 2021年にHR Diveに寄稿したCartaの元最高人事責任者であるスージー・ウォルター氏は、「無制限の有給休暇は労働者の休暇取得を促進しない可能性がある」と記している(注7)。ウォルター氏は、無制限の有給休暇ポリシーに加えて、必要最低限の休暇を規定するポリシーを提唱した。

 未使用の有給休暇は、いずれにせよ雇用主にとって今後も問題になる。有給休暇ソリューションプロバイダーのSorbetが2022年7月に実施した調査では、2019年は28%だった未使用の有給休暇の割合が、2022年には55%になったと判明している(注8)。雇用主は、休暇の取得に関して幹部や上司が模範を示し、従業員が同じように休暇を取ってもよいと思えるような雰囲気を作る必要がある(注9)。

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