リストラが続く今、人事担当者だけは削減してはいけない理由
人事職は、多くの業界で採用が増加している職種の一つだという。世界的に人員削減の報道が続く中で、なぜ企業は人事を求めているのか。
2023年1月18日にLinkedInが発表したレポートによれば、人事系の職種の多くが米国で急速に増加している職種トップ25にランクインしたという。
多様な業界でニーズが高まる人事職、その理由とは
このランキングを見ると、収益業務責任者に次いで人事分析マネジャーは2位にランクインした。これは人材分析マネジャーまたはタレント分析マネジャーとも呼ばれ、給与は約4万1600ドル〜12万2000ドルだ。これらの職種について、ニューヨークとサンフランシスコ、ワシントンD.C.、ボルチモアが採用都市の上位を占め、約4分の1がテレワーカーであることも明らかになった。また、ダイバーシティー&インクルージョン(多様性と包括性)マネジャーは3位で、従業員エクスペリエンスマネジャーは5位、最高人材責任者は15位、そして報酬担当責任者は21位となった。
このように人事系の職種がランクインしている背景について、LinkedInの広報担当者は次のように語る
「企業が職場の人種的または社会的不平等に着目するようになり、同時に従業員のリテンションを最優先するようになった。これが、多様性と包括性に関する職務が増えている原因の一つだと考えられる」
LinkedInが発表した「2023 Workforce Report」によると、テクノロジー業界ではレイオフが盛んで、景気減速の兆しがあるにもかかわらず、人事の仕事は増加傾向にあるという。
「米国では、LinkedInのアクティブな応募者1人に対して1つの求人がある。歴史的に強い労働市場であることに変わりはない。2023年1月のレポートでは、2022年の雇用は微増に終わった。過去数年間の成長を長い目で見ると、企業は依然として従業員を優先する役割を埋めようと模索していることが分かる」(LinkedIn広報担当者)
2020年と2021年のパンデミック最盛期では、より人事部の存在感が増した。「企業が直面する多くの問題は人事に関係していた」と業界の有識者は語る。その結果、人事担当者に求められるスキルや能力は拡大し、今や人事担当者は製品管理やデザイン思考、分析、データサイエンスに至るまで、多くの業務をこなすようになった。
経営幹部はこれに注目した。ある企業のCHRO(最高人事責任者)は「人事担当者は人材分析に関する専門知識を身に付けているため、レイオフや従業員不足、リテンションの問題に直面するビジネスリーダーにとって重要な戦略コンサルタントになるだろう」と語る。
人事職の需要が高まっているもう一つの理由として、農業や林業、小売業、宿泊業など、複数の業界で新規採用が増加したことがある。LinkedInの広報担当者は「採用が増加している業界では、従業員エンゲージメントやメンタリング、人材管理、多様性、公平性、包括性の向上に関する政策を支援できる人事担当者を必要としている」と語る。
2023年1月の「Future of Work」のレポートによると、DEI(多様性、公平性、包括性)職の採用は増加傾向にあり、コスト削減を検討する際に真っ先に除外される職種でもあるという。労働者はこれまで以上にDEIに関心を寄せている。Workhumanの「2023 Human Workplace Index」によれば、包括性と帰属性を優先することが採用プロセスで重要であるという。
多くの雇用主にとって経済の不確実性が高まる中で、従業員の確保は優先事項であり、企業はDEIに投資することでこれに備えてきた。
LinkedInの広報担当者は「企業がカルチャーに投資すれば従業員はさらに幸福になり、会社から支援を受けていることを実感する。それが彼らのリテンションにつながる。従業員の雇用に時間とコストがかかることを考えると、大きなコスト削減になる」と話す。
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