「Microsoft 365」と「Google Workspace」の利用状況(2023年)/後編
「Microsoft 365」と「Google Workspace」に対する満足度について、2022年の調査と比較すると微減する結果となった。クラウドサービスは、アップデートが加えられるにつれて利便性が増すものと考えられるが、満足度低下の原因はどこにあるのだろうか。
本企画では、前編、後編に分けてキーマンズネットが実施した「Microsoft 365」と「Google Workspace」に関するアンケート調査(実施期間:2023年1月20日〜2月3日、有効回答件数:441件)を基に、両製品の利用状況をお伝えする。
前編ではMicrosoft 365とGoogle Workspaceのユーザー当たりの月額コストや契約プランに関する調査結果を紹介した。後編となる本稿では、両製品に対する満足度と付帯するアプリやサービスの活用状況について、調査結果を紹介する。Microsoft 365に関する不満点では記憶に新しい障害に関するコメントが寄せられた。
無駄なスタンプなんていらない、安定性を渇望するM365ユーザー
Microsoft 365とGoogle Workspaceの満足度を聞いたところ、「満足」と「まぁ満足」の合計値は、Microsoft 365は77.6%、Google Workspaceは83.1%だった(図1、図2)。2022年4月に実施した前回の調査と比較したところ、Microsoft 365はマイナス8.6ポイント、Google Workspaceはマイナス7.1ポイントで、この1年で満足度が微減した。
次に、満足度低下の理由を回答者のコメントから探る。
Microsoft 365に対して「やや不満」「不満」とした回答者に対して、その理由を聞いたところ、寄せられたコメントは大きく分けて4つに分類できる。
1つ目は「障害や遅延、不具合」に関する声だ。2022年7月と8月に発生した「Microsoft Teams」の障害に加えて、2023年1月末にも数時間にわたって「Microsoft 365」のアプリが利用できなくなる大規模な障害が発生した。短期間で度重なる障害が発生したことから、このことに関するコメントが目立ったと思われる。
- 障害が発生する頻度が高い。影響範囲が大きいため、(ベンダー側で)事前に検証の上、しっかりと対策してほしい
- Microsoft側のトラブルで(アプリが)使えなくなり大変困った
- ニュースになったが、重大なトラブルが発生することがある
- Microsoft 365はよくトラブルが発生する印象がある
残りの3つは「アップデート」「UIの変更や使い勝手」「価格」に関する不満だ。アップデートやUIの変更に関する不満は、クラウド型コラボレーションツールに対してよく聞かれる声だ。「値上げ」に関しては、Microsoft製品の法人向けライセンスおよびサービスの価格引き上げのアナウンスに反応したものと考えられる。
「アップデート」に関する不満の声
- アップデート通知からアップデータ実施までの猶予期間が短く、対応が面倒
- 返信候補表示やスタンプの追加など無駄なアップデートが多い
- 使用していたオプションがアップデートによって急に利用できなくなった
- 必要のない機能のアップデートが多すぎで、検証に時間が取られる
- 予告なく頻繁にアップデートされ、その都度設定をし直す必要がある
「UIの変更や使い勝手」に関する不満の声
- 使い慣れてもまた細かい操作やタブの位置などを覚える必要がある
- 起動も動作も遅く生産性が下がった。パッケージ版の方がずっと快適だった
- UIの悪さが改善しない。相対的に改悪と感じる印象が強い
- 相手先もMicrosoft 365を利用していなければ、Teamsなどでファイルを共有できない
- 国産グループウェアと比べて使い勝手が悪いように感じる
「価格」に関する不満の声
- 値上げが多くて、機能も足りない
- 一方的に月額費用が値上がりする
- 料金変更が多い上、公式アナウンスがないときもある
- バージョンが上がるごとに価格も上がり、保守期間も短くなっている
一方のGoogle Workspaceでは、2022年の調査と同様に「互換性」の1点に不満が集中した。MicrosoftのOfficeアプリなどを併用しているユーザーも多く、ファイルのやりとりのしづらさが不満として反映された。
- Microsoft Officeとの親和性が悪い
- Google スライドをPowerPointやWordに変換すると、文字崩れする
その他の意見としては、「『Google サイト』で管理者泣かせのアップデートがあり、苦労する」など、一部でアップデートに関するコメントもあった。
情報共有に自動化、アプリ開発、M365とGWSの活用事例
Microsoft 365やGoogle Workspaceは、文書作成や表計算などのオフィスアプリにさまざまなサービスを加えたスイート製品だ。付帯するアプリやサービスを活用してこそコストに見合った価値を享受できる。それらをどこまで活用できているのだろうか。
まず、Microsoft 365について「Excel」「Word」「PowerPoint」「One Drive」などのOffice以外のアプリを利用したことがあるかどうかを尋ねたところ、「使ったことがある」が48.6%、「使ったことはない」が43.5%、「使おうとしたがやめた」が7.0%だった。
Google Workspaceも同様に「Google ドキュメント」「Google スプレッドシート」「Google ドライブ」「Google カレンダー」以外のアプリを使ったことがあるかどうかを聞いたところ、「使ったことがある」(84.5%)、「使ったことはない」(12.7%)、「使おうとしたがやめた」(2.8%)となった。
それらのアプリの具体的な活用法をフリーコメントで聞いたところ、Microsoft 365では「アプリ開発」「自動化」「情報共有」「資料作成」の4つに分けられる。
目立ったコメントとしては、非IT部門の人材による「市民開発」に関するコメントだ。近ごろのローコード/ノーコード開発ニーズの高まりが反映されたものと思われる。
「アプリ開発」に関するコメント
- 「Microsoft Power Apps」や「Microsoft Power BI」などでアプリの開発をした
- 「Microsof tPowerAutomate」とPowerAppsを使ってローコード開発を実践した
- 「Microsoft Access」を用いて社内システムの開発をした
「自動化」に関するコメント
- Power Appsでメール送信など自動化
- Power Automateで情報収集作業を自動化した
「情報共有」に関するコメント
- 「Microsoft SharePoint」をファイルの共用手段、部門ポータル、ワークフローとして利用している
- 「Microsoft Stream」で社内行事の動画を管理、配信した
「資料作成」に関するコメント
- 「Microsoft Visio」でネットワーク図や社内配置図を作成した
- アンケートの作成から回収までを「Microsoft Forms」対応した
- 「Microsoft Planner」でタスク管理
一方、Google Workspaceで最も多かったのは、情報共有や管理に関するコメントだ。
- 情報共有ツールとして「Google Currents」と「Google サイト」を利用した
- 「Google Keep」でタスク管理、「GoogleDataStudio」でレポーティングサイトを作成した
- 「Gooogle フォーム」を利用して情報収集や、スプレッドシートとの連携による情報管理
Microosft 365とGoogle Workspaceのユーザーが増加傾向である一方で、満足度低下の要因となったサービス障害や不具合などが懸念されるところだ。ユーザーからのフィードバックを基に、今後、サービス改善が進むことを願いたい。
全回答者数441人のうち情報システム部門が36.7%、製造・生産部門が17.2%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が15.4%、経営者・経営部門が6.8%などと続く内訳であった
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