「Microsoft 365」と「Google Workspace」の利用状況(2022年)/前編
オフィススイートと言えば「Microsoft Office」に代表されるパッケージ型が長らく主流であったが、ここ数年でSaaS型への移行が進んだ。代表的なSaaS型オフィススイートである「Microsoft 365」と「Google Workspace(旧G Suite)」の利用はどこまで進んだのだろうか。
業務系アプリもサービス化が進み、徐々にサブスクリプション型、SaaS(Software as a Service)型に切り替わる中、オフィススイートもその波を受けている。代表的なSaaS型のオフィススイートに「Microsoft 365」「Google Workspace(旧G Suite)」がある。Microsoft 365に至ってはリリースから約10年が経過するが、2022年現在、両ツールの利用割合はどの程度のものか。
本稿は、キーマンズネット編集部が実施したアンケート調査「Microsoft 365とGoogle Workspaceの利用状況」(実施期間:2022年3月18日〜4月8日)を基に、企業における両ツールの利用実態を調査した。また、2022年3月に実施されたMicrosoft 365の価格改定について、ユーザー目線でどう受け止めているのかを尋ねた。
Microsoft 365は2.1ポイント増加、中小で根強いパッケージ型
業務で利用するオフィスツールについて尋ねたところ「Microsoft 365/Office 365」が45.7%、「Microsoft Office(パッケージ型)のみ」が22.6%、「Microsoft Office(パッケージ型)とMicrosoft 365/Office 365を併用」が16.3%であった(図1)。
併用を含めるとMicrosoft 365/Office 365の利用割合は67.4%、Microsoft Office(パッケージ型)は43.1%、Google Workspaceは14.3%となる。この結果を2021年4月に実施した同様の調査と比較したところ、「Microsoft Office(パッケージ型)」が0.6ポイント微減する代わりに、「Microsoft 365/Office 365」が2.1ポイント増加するなど、わずかながらSaaS型のオフィススイートの利用割合が増加傾向にある。
Microsoft 365などのSaaS型オフィススイートは継続的なコストが発生するためか、「Microsoft Office(パッケージ型)」については、100人以下の中小企業で利用割合が高い傾向にあった。利用しているバージョンは「Office 2016」(40.5%)、「Office 2019」(33.0%)が多く、全体の7割を超えた(図2)。2023年4月にサポート終了を迎える「Office 2013」は10.3%だった。
「Microsoft 365実質値上げ」に対するユーザー企業のつぶやき
2022年3月にMicrosoft 365/Office 365の一部のプランの価格が改定された。対象製品は「Microsoft 365 Business Basic」「Microsoft 365 Business Premium」「Microsoft 365 E3」「Office 365 E1」「Office 365 E3」「Office 365 E5」で、それぞれ月額1〜3ドル値上げされた格好だ。
アンケート回答者に「Microsoft 365/Office 365の値上げを知っていたか」と尋ねたところ、「知っている」が51.5%、「知らなかった」が48.5%となり、ほぼ回答を二分する結果となった(図3)。
今回の価格改定についてMicrosoftは「機能追加やイノベーションを続けるため」としているが、ユーザーはこれをどのように受け止めているのだろうか。Microsoft 365/Office 365の価格改定を「知っている」と回答した221人を対象に率直な意見を求めたところ、意見が3つに分かれた。中には値上げでも値下げでもない折衷案を提示する声もあった。
価格改定に「否定的な」意見
- できれば世界の景況感がもう少し回復するまで値上げは待っていただきたかった
- これ以上機能を追加したりUIを弄ったりしなくてもいいので値上げはやめてほしい
- 必要最低限の機能で良く、機能追加やイノベーションはあまり望んでいない
- (実装する機能を)必要最低限の機能に絞るなどして値上げ幅を抑えてほしかった
この他、「値上げによってITに疎い経営陣がさらにアップデートをしなくなってしまう」「値上げは致し方ないとは思うが、これからまた値上げがあるのか心配」といった声もあった。
否定的な意見ばかりではなく、ベンダー側の事情を酌み取る肯定的な意見も見られた。
価格改定に「肯定的な」意見
- これまで価格が据え置きだったため、値上げは仕方がないと思っている
- 機能の追加分を考慮すると、ある程度は納得できる
- 値上げは喜ばしいことではないが、安ければ良いという商品でもないと思う
- 使いやすさのための機能追及によるバージョンアップでの価格改定は仕方ない
中には「セキュリティの確保などコストがかかる点に関しては理解できる。コストに見合うパフォーマンスを期待している」など値上げを受容しつつ、今後のパフォーマンスに期待を寄せるユーザーもいた。
また、その他の意見として、値上げは仕方がないとしながらもユーザーが納得感を得られる「第三の案」を提示する声もあった。
その他の意見
- 機能制限をして価格を維持するメニューがあってもいいと思う
- 製品やサービスの組み合わせが複雑なため、何が値上げになったのかが分かりにくい
- 値上げするのであれば、ストレージを増やすなどのメリットを付加した方がいいのではないか
- 付加機能を必要とする人に対して課金するようにしてほしい
- 値上げに際して猶予期間を設けるなどの措置を講じるといいのでは
パッケージ型からSaaS型への移行、半数が「No」の理由
COVID-19の影響でテレワークが浸透したこともあってか、SaaS型のオフィススイートの利用率が高まりを見せるが、Microsoft Office(パッケージ型)からSaaS型オフィススイートに移行を検討している企業はどの程度あるのだろうか。
SaaS型オフィススイートに移行する予定はあるかと尋ねたところ、51.5%と半数が「移行する予定はない」と回答し、「分からない」は33.0%だった。「移行予定」は「検討中」を含めて15.5%と2割にも満たない結果となった(図4)。
移行しない理由として最も多かったのは「ソフトウェア予算が圧迫されるため、パッケージ型オフィスツールが同梱されたPCが販売されている限りは移行しないだろう」「いつまでも利用料を払い続けなければならない」「費用がかかり、最新の機能を使わなければならない必要もないため」など継続的に発生するコストを懸念する声だ。
他にも「SaaS型ではネット障害が起きたときに何もできなくなる」「業務系、基幹系のシステムでOfficeを利用しており、都度のバージョンアップに対応できないため」「更新によりUIや機能、使い勝手が変わるため」といった、SaaS型は自社の利用に不都合だとする声もあった。
SaaS型へ「移行予定」「検討中」の理由としては、「テレワークを実施したいから」「パッケージよりも機能が充実していて、管理が楽になるため」などがあった。
その他は「事業部門がまだクラウドツールの利用に消極的なため」「企業グループ全体での指示待ち」といった意見だ。オフィスツールはほぼ全従業員が利用するツールであることから、慎重に検討を進めざるを得ないのだろう。
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