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情シスが記者になってみて思うこと編集部コラム

筆者はアイティメディアで編集記者になる前、情報システム部で5年半ほど勤務していました。「情シスが記者になってみて思うこと」を気軽に書いてみようと思います。

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 アイティメディアで編集記者になる前は、ある酒造メーカーの情報システム部(以下、情シス)で5年半ほど勤務していました。グループ会社の食品メーカーも含めると、500人弱の業務を支えるシステムを運用しました。大方の中堅・中小企業の情シスと同じように、業務範囲は多岐にわたります。基幹システムや周辺システムのお守り、ベンダーコントロール、PCやアカウントの管理、ヘルプデスクなど、いわゆる何でも屋です。

 なんやかんやあってメディア業に飛び込みました。いざ働いてみると、情シスとメディアのギャップ、情シスと経営層のギャップ、情シスとベンダーのギャップなど、さまざまなギャップを感じたものです。本稿は編集部コラムということで、「情シスが記者になってみて思うこと」を気軽に書いてみようと思います。

情シスとメディアのギャップ

 まずアイティメディアで記事を書き始めて思ったのは、「メディアの記事内容は情シスの現状とそれなりに離れている」ということです。

 メディアは毎日最新の情報を紹介します。新しい技術や流行のSaaS、効果的なセキュリティ対策などです。私が元情シスとして思うのは、情シスの現場は流行や最新のものからほど遠い、もっとレガシーな世界だということです。

 記事の中では、世の中はクラウドが当たり前のように書かれていますが、実際はそうではないと私は知っています。私の前職は(今は知りませんが)、オンプレ率ほぼ100%でした。オンプレサーバのリプレースなどは力作業が多く、先輩と数十キロのサーバをラックに設置するのが日常でした。たまにサーバラックに指を挟んで血まみれになるまでがオンプレの業務です。

 セキュリティ系の記事に関しても、情シスとのギャップを感じます。近年企業に深刻な打撃を与えるインシデントが増えていることからか、多くのすばらしいセキュリティ製品がリリースされています。私たちは「入れたらこんなすばらしい効果がある!」と記事にしますが、情シスからしたらショーウィンドウの中の売り物を眺めている気分になっていることでしょう。

 境界型からゼロトラストなどに切り替えたほうが良いのは言うまでもないです。しかし、境界型から切り替えるためには、情シスが長年かけてコツコツ作り上げてきたインフラを大きく入れ替えることになります。また、ゼロトラストを実現するにはお金が必要です。しかし、企業はまだまだセキュリティに対する理解が甘く、予算を確保するのは一筋縄ではいきません。インフラを変える手間と予算を手に入れる労力を考えると、どこか遠い話のように感じる気持ちがよく分かります。

情シスと経営層のギャップ

 メディアで働き始めて思うのは、「経営層は経営層なりにITで経営をより良いものにしたい思いがある」という、当たり前のことです。簡単に言うと、DX(デジタルトランスフォーメーション)でしょう。

 私は情シスのいわゆる“実務部隊”だったので、経営層の考えや方針はあまり理解していませんでした。肌身をもって感じていたのは「安定稼働」「コスト削減」、この2つがミッションだということです。結果、私が情シスのころ(約2年半前)は、DXとは無縁の生活を送っていました。

 改めてDXの定義を確認すると、経済産業省は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

 定義には「データとデジタル技術を活用」とありますが、企業内のデータを網羅できている部門は情シスしかないでしょう。なので、データを活用した全体最適の仕組みを構築するには、情シスが適任です。講演やイベントなどのDX成功事例では、情シスが旗振り役として優れた役割を発揮しているのを散見しますし、間違いないでしょう。

 しかし、情シスとしての至上命令を(私のように)「安定稼働」「コスト削減」と考えていると、DXを推進するための「ビジネス目線」が圧倒的に不足します。企業は情シスを旗振り役にしたい気持ちがあるのは分かりますが、情シスのスキルとのギャップをかなり感じます。経営層は、DXを推進するためには、適切な人材に適切な経験を積ませる必要があるように思います。

情シスとベンダーのギャップ

 情シスとベンダーのギャップは、上述した情シスとメディアのギャップに似ています。多くのユーザー企業は思っているよりレガシーで、新しいサービスを提供し続けるようなベンダーとはギャップがあるという点です。ただベンダーはベンダーなりの努力しているようにも思います。

 例えば、SaaSを提供するベンダーは「カスタマーサクセス」という職種を設ける傾向があります。カスタマーサクセスとは、顧客がサービスを通してより大きな成功をできるよう支援する職種です。

 私は取材先のサービスを使わせてもらうことがあるのですが、その際カスタマーサクセスのサポートを受け、良心的に思うことが多いです。カスタマーサクセスの対応次第で顧客のサービス利用が終わってしまうかもしれないため、顧客への対応マニュアルが練られているように思います。

 私がベンダーと情シスにギャップがあると感じるかどうかは、フロントパーソンである広報さんやマーケターさんに左右されるところがあるので、一概には言えない部分が多いです。

情シス向けの記事は難しい

 メディアが情シス向けに記事をつくる難しさがある理由に、情シスが担うIT環境が企業によって千差万別であることが挙げられます。情シスの属人化が問題になることが多いように、情シスが必要とする情報は人それぞれ異なります。

 個人的には、AI(人工知能)を活用するなどして各情シスが適した情報に触れられるような仕組みが求められていると思います。Googleで必要な情報を収集するのを自動化するようなイメージです。Amazonのレコメンド機能に近いかもしれません。

 作り手側としては、「スクリプトの書き方」といったハードスキルに寄ったものよりも、「システム移行のコツ」などソフトスキルに寄ったものの方が多くの方に読まれるのではと思います。ただ、多くの方に読まれなくても、インサイトの深い良記事は長く愛読いただけます。

 今回のコラムは、私の経験に基づいて書かれたところがほとんどなので、メディアや関係者全てに当てはまるものではありません。あくまで、情シスがメディアに入ってみて感じたこととしてとらえていただけたらと思います。

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