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企業への「愛着心」が低下中 採用時や1on1で注意すべきこととは?

従業員のエンゲージメント(愛着心)が低下している。従業員を企業に定着させるために、採用時や1on1ミーティングの際に気を付けるべきポイントとは。

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HR Dive

 Gallupが2022年に実施した調査によると、「仕事にエンゲージメント(愛着)を感じている」と答えた従業員は32%で(注1)、2020年の36%、2021年の34%から減少している。

 この背景には、必要最低限のことしかやらず、他の業務から手を引く「静かな退職」という考え方がある(注2)。人材市場の変化(注3)や燃え尽き症候群の増加(注4)もこの傾向を強めている可能性がある。

従業員定着に向けて企業がすべきこと

 従業員を企業に定着させるために、どのようにエンゲージメントを高めれば良いのだろうか。採用時や1on1ミーティングの際に気を付けるべきポイントを専門家が語った。

 コンサルティング企業のHorizon Consulting Servicesの社長兼CEO(最高経営責任者)であるデイビス・M・ロビンソン氏によると、企業は従業員のエンゲージメントが何を意味するのかを根本的に再考する必要があるという。同氏は2023年4月17日に行われたSociety for Human Resource Managementの講演で「企業は従業員が快適に所属できる組織を目指すのではなく、従業員の強みと目標を強調する戦略に焦点を当てるべきだ」と述べた。

 ロビンソン氏は自動車メーカーAudiの、従業員が年間最優秀従業員に選ばれた後に職を離れるという内容の広告を紹介した。同氏にとって、この広告から得られる教訓は、表彰や無料の食事、清潔なオフィス、同僚からの目に見える評価などのエンゲージメントを上げるための典型的な特典を提供しても、優秀な人材が去るのを防ぐことはできないということだ。

正しい焦点を見つける

 エンゲージメント戦略の定義は「既に仕事に愛着がある従業員から、仕事を嫌う従業員、仕事に関心がない従業員まで、組織内の従業員の分布を理解することから始まる」とロビンソン氏は言う。雇用主が注目すべきは、仕事を嫌う、または仕事に関心がない従業員だと同氏は指摘した。なぜなら、企業にとって、これらの従業員との精神的なつながりをつくることが重要だからだ。

 ロビンソン氏は、ボストン大学の心理学者ウィリアム・カーン氏が1990年の記事で述べたエンゲージメントの3つの心理的条件である「意義、安全性、利用可能性」に言及した(注5)。

 「従業員が仕事の労力に見合った効果を得ていると感じられ、その仕事に意義を見出し、仕事で自分の強みを活用できる状態を確保することで、企業は3つの心理的条件を満たす第一歩を踏み出せる。従業員を中心に考えるべきだ」

ジョブサイクルを通じたエンゲージメント戦略

 ロビンソン氏によれば、エンゲージメント向上のための取り組みは採用段階から始まるという。その段階で企業が候補者をどのようにレビューするか、採用プロセスが候補者の強みやスキルについて確認できるものかどうかを考慮すべきだ。同氏は「組織が教えることができるスキルとそうでないスキル、特に候補者自身の性格について考えるべきだ」と述べる。

 マネジャーは従業員が入社してからも重要な役割を果たす(注6)。ロビンソン氏によれば、マネジャーは従業員との会話の中で、その人の強みやその強みが生かされているかどうかを直接質問する必要があるという。例えば、以下のような質問だ。

  • もし今日退職するとしたら、あなたは何をするか。それは現在のあなたの役割とどのように関連しているか
  • あなたは現在の役割でそれらの強みを生かせているか
  • どのようにしてこの業界に入ったのか
  • あなたの自然な能力や才能は何だろうか
  • 仕事の満足感をどのようなときに感じるのか

 「これらの質問は従業員のエンゲージメント調査にも盛り込める」とロビンソン氏は述べる。

 同氏によると、従業員のキャリアパス設計はよく用いられるエンゲージメント戦略であり(注7)、役割の再設計や作成により、従業員が自身の現在の役割とキャリアパスをより密接に関連付けられるようになるという。

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