「基本情報は受けてもムダ」は本当? 受験して感じた応用情報との違い
IPAが実施する「基本情報技術者試験」と「応用情報技術者試験」のどちらを受験するか。新任IT担当者の悩みの種の一つだ。IT記者が実際に受験して感じた両試験の違いや難易度、おすすめの勉強法を紹介する。
今や毎年約20万人が「ITパスポート試験」(以下、ITパスポート)を受験し、約10万人の合格者が生まれている。合格者達が悩むのがズバリ「次、何受けるか」だ。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はITパスポートの次のレベルの試験として「情報セキュリティマネジメント試験」と「基本情報技術者試験」(以下、基本情報)、さらにその次のレベルの試験として「応用情報技術者試験」(以下、応用情報)を用意している。今後もIT関連職に就くつもりであれば、まず基本情報を射程に入れる人が多いだろう。
そこで「よし、受けてみるか」と基本情報について調べてみると、ふとこんな見出しが目に入る。「基本情報なんて受けてもムダ。応用情報から受けろ」「応用情報のほうが簡単」。「じゃあどっちを受ければいいんだ……」と迷いながら、結局受けずじまいの人も意外と多いのではないだろうか。
「応用情報の方が簡単」ってホント?
「どうせ後で受験するなら最初から応用情報」というのは分からなくもないが、「応用情報の方が簡単」というのは本当なのだろうか。本稿では、筆者が実際に受験した感想や「なぜ応用情報が簡単に感じるのか」を考察する。
まず結論から言うと、筆者は「基本情報のほうが簡単」だと感じた。基本情報と応用情報は試験範囲はほぼ同じだが、求められる知識の深さが異なる。書店で参考書を試し読みしてみると分かるが、基本情報の参考書の方が1項目ごとの内容が少なく、学習範囲が広くても読み進めやすい。基本情報のほうが学習を進めやすいだろう。
また、基本情報が難しく感じる一因として、科目B試験のアルゴリズムとプログラミングに関する問題がある。特に、以前はJavaやPythonなど個別のプログラミング言語の問題も出題されており、ITパスポートとの違いに面食らった受験者もいただろう。しかし、現在は疑似言語の問題に統一され、試験時間も短縮された。十分なアルゴリズムの学習が必要なことに変わりはないが、かなり受験しやすくなっているだろう。まずは試験範囲全体を学習し、試験前はアルゴリズムの対策に注力するのがお勧めだ。
応用情報が「簡単」に感じるのはなぜ?
ちなみに、応用情報の午後問題は企業におけるシステム開発やIT戦略策定のケースに関する文章を読み、記述式の問題に回答する形式だ。そのため、国語が得意(数学が苦手)な人は「応用情報の方が楽」と感じる気持ちも分かる(筆者も数学が大の苦手だった)。しかし、前述したように基本情報よりも深い知識が求められるため、基本情報を飛ばして応用情報の学習に入ると、何が書いてあるか分からず苦戦する可能性もある。
これは推測だが、「応用情報のほうが簡単」という言説の正体は、「ITパスポートから基本情報へのステップアップよりも、基本情報から応用情報へのステップアップの方が簡単」または「実務を通して既に知識があったため、またはかなり気合を入れて勉強したため、いきなり応用情報を受けてみたけど合格した(から基本情報は受けなくていい)」なのではないだろうか。
どちらも応用情報にしっかり合格しているのでとやかく言うことではないのだが、筆者としては順当に1つずつステップアップすることをお勧めしたい。受験料や参考書代はかかってしまうが、まずITパスポートでITに関する基礎知識を習得した上で、基本情報でシステム開発の全体像を把握し、応用情報で実際のケースに当てはめて考えられるようにする。このように順を追って勉強することで理解も深まり、定期的に同じ範囲を学習することになるため記憶の定着にもつながる。もちろん、実務を通して基本情報レベルの知識を既に備えているのであればこの限りではないが、IT関連職に就いたばかりの人やこれから就く人は参考にしてほしい。
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