医療管理プラットフォームのCareCentrixは、PCの起動やシャットダウンなどの活動が勤務時間に含まれるかどうかについて、従業員らと裁判で争っている(注1)。
2023年8月10日(現地時間、以下同)の告訴状によると、シフト制で働いていた従業員らは、勤務時間が始まった瞬間に電話対応をするよう求められたという。これは、出勤する前にPCを起動してアプリにログインする必要があることを意味する。同様に、シフトの終わりには、アプリからログアウトしてPCをシャットダウンする前に、退勤する必要があったと従業員らは主張する。こうした勤務時間前後の活動には1日当たり約9〜12分かかったという。
事例で分かる「PC起動時間は勤務時間に含まれるか」
元代理人はCareCentrixが公正労働基準法(FLSA)に違反したとして訴訟を起こした。同氏は、不可欠な活動に対する報酬を支払わなかったこと、カスタマーサービス部門の総労働時間の記録が不正確であったことなどを指摘した。同訴訟は、残業代を含む未払い賃金の支払いや賠償金の清算、従業員の権利が侵害されたと宣言することを求めている。
仕事の種類によっては、従業員はPCの起動や業務アプリケーションへのログインに費やした時間に給与を求められるかもしれない。
2022年10月、ラスベガスの家電リサイクル事業者のコールセンターで働く従業員に対して有利な判決を裁判所が下した(注2)。従業員らはFLSAにのっとり、勤務前に会社のPCを起動し勤怠管理システムにログインするのに費やした時間に対して賃金を支払うよう要求した。
裁判所によると、FLSAは従業員が勤務時間の前後に業務に費やす時間に対する補償を認めていないという(注3)。しかし、最高裁判所は「そのような業務が従業員の活動に不可欠である場合には補償の対象になる」と明言した。
従業員らにとって、勤務開始時にPCを起動することは仕事に不可欠であり、PCがなければ顧客からの連絡を受けてスケジュールを調整するという主要な義務を遂行できないため、FLSA の下で補償の対象となった。
この判決は米ネバダ州など複数の州で起こされた訴訟に関連しており、「PCを起動して業務説明書やアプリ、電子メールなどを取得することはコールセンターの従業員にとって不可欠だ」という米国労働省の指針と一致している(注4)。
企業は、勤務時間前後の活動が従業員の業務にとって不可欠かどうかを慎重に評価する必要があり、判断を間違えると重大な結果が生じる可能性がある。
2023年5月、電池製造企業のEast Penn Manufacturingは従業員らに対して2200万ドル以上を支払うことになった(注5)。この金額には、7500人以上の従業員が勤務時間後に化学物質などの危険を回避するために保護具を着脱したりシャワーを浴びたりした時間に対する支払いが含まれている。
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