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ITデバイス管理にいくらかけている? 1人当たりの相場が明らかにIT資産管理ツールの利用状況(2023年)前編

IT資産管理ツール市場の年平均成長率は6.32%になると予測され、多くの企業で導入が進んでいる。前編となる本稿では、企業における導入状況や利用実態を紹介する。IT資産管理の1人当たりの相場が明らかになった。

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 ハイブリッドワークを採用する企業が増えたことで、必然的にエンドポイントセキュリティの重要性も増し、IT資産管理ツールが再注目されている。

 グローバルインフォメーションが2023年8月に発表した「IT資産管理(ITAM)市場の規模とシェア分析- 成長動向と予測(2023年〜2028年)」によると、グローバルでの市場規模は2023年の18億5000万米ドルに、2028年には25億2000万米ドルに成長し、予測期間におけるCAGR(年平均成長率)は6.32%と予測されている。

 そこでキーマンズネットは「IT資産管理に関するアンケート(2023年)」を実施した(期間:2023年10月6〜20日、回答件数:189件)。前編となる本稿では、企業におけるIT資産管理ツールの導入状況や利用実態を取り上げる。

全体では6割が導入 進むSaaSの導入

 はじめにIT資産管理ツールの導入状況を聞いたところ、リプレースの有無に関わらず「既に導入済み(リプレース予定なし)」(48.1%)と「既に導入済み(リプレース予定あり)」(11.1%)を合計すると「導入済み」とした割合は59.2%であり、「導入を検討中」は6.9%であった。一方、「必要性を感じるが検討しない」は20.1%、「必要性を感じない」は13.8%となり、「導入していない」とした割合は約3割となった(図1)。


図1 導入状況(出典:キーマンズネットの調査、以下同様)

 従業員規模別に見ると、「導入済み」とした割合は、100人以下の中小企業では29.4%であったのに対して、5001人以上の大企業では82.5%と3倍近くの差があった。これは2021年と2022年に実施した同調査を比較しても見て取れる傾向で、100人を超える規模からIT機器やソフトウェア、ライセンスなどの資産管理が煩雑になり、ツールに頼らざるを得ないことを示唆している。

 IT資産管理ツールの利用形態は「パッケージソフトウェア」(48.0%)、「SaaS」(32.0%)で、2022年10月の前回調査と比較するとSaaS利用が10.2ポイントも増加した(図2)。2021年10月の前々回調査からは14.1ポイント増と、中堅〜大企業を中心にSaaS利用が進んでいる。


図2 導入形態

ツール導入“1ライセンス”の相場価格は?

 次に、IT資産管理ツールで管理対象とするクライアント台数を調査したところ、全体では「101〜500台」(28.0%)、「1001台〜5000台」(18.4%)、「1万台以上」(16.0%)が上位に続いた(図3)。

 従業員規模別で見ると、101〜500人企業では「101〜500台」が、1001〜5000人企業では「1001台〜5000台」が最多であり、全ての規模帯で同じ傾向であった。どの規模においても管理台数と従業員数がほぼ同数かそれ以上でツールが全社利用されている。


図3 管理対象とするクライアント端末の台数

 1ライセンス当たりの導入コストは「1000円未満」(35.2%)、「1001〜3000円未満」(24.8%)と、全体の6割が3000円未満と回答した(図4)。

 この結果を従業員規模別に見ると、管理機能が豊富な上位プランを求める企業が多いためか、1001人以上の大企業帯で1ライセンス当たりの費用がやや高めの傾向にあった。とはいえ、過半数は3000円未満と回答しており、この価格帯がツールの相場と言えそうだ。


図4 1ライセンス当たりの導入コスト

テレワークで生じるセキュリティリスクが喫緊の課題に

 続いて、導入しているIT資産管理ツールで管理対象としている端末や機器を聞いたところ「Windows端末」(98.4%)が大多数で、次いで「タブレット端末」(30.4%)と「スマートフォン」(30.4%)、「USBメモリなどの外部記憶媒体」(26.4%)となった(図5)。


図5 利用されている機能

 1年前の前回調査からスマートフォンが7.0ポイント、タブレット端末が5.1ポイント増加しており、テレワークなど社外業務で利用される端末の管理対応が急がれているようだ。

 こうした変化は、IT資産管理ツールで「利用される機能」や「導入時に重視するポイント」にも現れている。IT資産管理ツールを「導入している」とした回答者に対して主に利用している機能を訪ねたところ、3位「インベントリ収集」(47.2%)や5位「OSの更新管理」(38.4%)、6位「セキュリティパッチ管理」(36.8%)などが前回調査と比較して順位を上げていることから、セキュリティ対策が喫緊の課題となっているのが分かる。

 テレワークは各所に端末が分散することで、OS更新状況やセキュリティパッチの適用状況がより見えづらくなりセキュリティリスクが増すのが理由と考えられる。


図6 ツール導入時の利用されている機能

 関連して導入時に重視するポイントでも「管理項目、機能」(15.2%)や「セキュリティ関連機能の充実」(10.4%)を重要視する割合が年々増しており、近年では「導入コスト」や「導入、運用のしやすさ」に並ぶ導入時の重視ポイントとなっている(図7)。


図7 ツール導入時の重視ポイント(1位)

 以上、前編ではIT資産管理ツールの導入状況や利用実態を紹介した。後編ではIIT資産管理で生じたトラブル例を参考に、企業でのIT資産管理の課題や今後を考察する。

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