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「生成AI」への投資意欲は? 2024年、IT投資意向調査7つのITトピックス 2024

「2024年は生成AIへの取り組みが本格化する」との予測もあるが、こうした「生成AIブーム」はIT投資と結びついているのだろうか。調査結果から浮かび上がった、多くの企業が実際に投資を予定している項目は?

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 キーマンズネット編集部は2024年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「コミュニケーション/コラボレーション」「生成AI(人工知能)」「システム内製化」「BI/データ活用」「Windows 11」の7つのトピックを挙げ、読者調査を実施した(実施期間:2023年11月10日〜12月8日、有効回答数424件)。

 第7回のテーマは「IT投資」だ。

調査サマリー

  • IT投資額はやや増加の見込みだが、伸びがやや控えめの重要員規模帯もある
  • 業務の課題として新しい項目が浮上した
  • 「高い関心を呼ぶ項目」と「実際に投資予定のある項目」にはギャップがある

IT投資額は増加の見込み 企業が実際に投資する項目は?

 2024年のIT投資額は「ほぼ同じ」が49.8%で最も多い。「増額」は14.6%、「減額」は5.9%だった。例年と同じく「ほぼ同じ」が約5割と横ばいの企業が多い。「増額」は前回調査の13.3%から1.3ポイント増加し、「減額」は2.5ポイント減少したことから、増額に舵を切った企業が微増したとみられる。

 従業員規模によって投資意欲に大きな差は見られないものの、501〜1000人の中堅企業は投資額の増加幅が比較的小さい(10.2%)傾向にある。なお、「増額」との回答が最も多かったのは1001〜5000人の企業(22.1%)だった。1001〜5000人の企業は「減額」と回答した割合も最も少なく(2.5%)、2024年度はITへの投資が最も旺盛な従業員規模帯といえるだろう。

業務の課題は「人材育成」「業務の省力化」

 業務の課題としては、割合が高い項目から順に「人材育成」(44.3%)「業務の省力化」(38.9%)「IT人材の不足、高齢化」(36.3%)だった(複数回答可)。

 前回の調査では「人材育成」が46.3%でトップ、「業務の省力化」(39%)、「IT人材の不足、高齢化」(35.3%)が続いた。将来的な労働人口の減少を見据えて「業務の省力化」「人材育成」「IT人材の不足、高齢化」は2024年も引き続き課題であるとみられる。

業務の課題
業務の課題

 課題の中で注目したいのが、「データ活用/分析」(24.8%)だ。2023年の調査では「ビッグデータ活用の取り組み」が24項目の中で19番目(11.8%)と課題意識が薄い傾向にあったが、今回の調査で「データ活用/分析」が8番目に浮上した理由は何だろうか。

 企業が扱うデータ量の増加の他、「生成AIの活用」(25%)との関連があるのではないか。生成AIを効果的に利用するために欠かせないデータ整備や、生成AIとの連携によるデータ分析の効率化への意識が高まっている可能性がある。

 ちなみに、「生成AIを利用している」を選んだ回答者に絞ったところ、重要課題として認識している項目として「生成AIの活用」(45.2%)が最も多く選ばれ、「業務の省力化」(43%)に続いて「データ分析」(34.4%)も挙がっていることから、この仮説はある程度裏付けられたと考えていいかもしれない。

関心のある項目と、実際の投資行動に「差」

 関心のある項目としては「セキュリティ対策」(46.5%)が最も多く、「生成AI」(45.3%)が続いた(複数回答可)。

関心のある項目
関心のある項目

 従業員規模による差は大きく、最も多くの関心を集めた項目は、100人以下の企業では「セキュリティ対策」(53.8%)だったのに対して、5001人以上の企業では「生成AI」(46.9%)だった。ただし、「セキュリティ対策」は100人以下の企業以外でも注目されており、500人以上の全ての規模帯の回答者の約4〜5割が選んでいる。

 一方、「生成AI」を選んだ回答者は1000人以下の規模帯では2割程度にとどまった。同じ「7つのITトピックス」の生成AIに関する調査結果をまとめた記事でも触れたように、中堅・中小企業の生成AIに対する慎重な姿勢がここでも確認された。

 それでは、2024年度に投資を予定している項目について、19項目の中から選択式で尋ねた結果を見ていこう。

 全体で選ばれたのは「セキュリティ対策」(33.7%)が首位で、「PC/PC管理」(23.8%)、「社内IT基盤」(20.5%)が続いた。

2024年に投資予定の項目
2024年に投資予定の項目

 興味深いのは、従業員規模100人以下の中小企業の投資動向だ。100人以下の企業は関心のある項目として「セキュリティ対策」(53.8%)、「PC/PC管理」(34.9%)を選ぶ一方で、実際に投資予定とした割合は「セキュリティ対策」が32.1%、「PC/PC管理」は31.1%だった。投資予定の項目としては他に「社内IT基盤」「紙の電子化、ペーパーレス化」(ともに17.9%)が挙がった。

 ちなみに、100人以下の企業で「セキュリティの強化」を重要課題として選んだ割合は34.9%だった。

 関心を持つことと重要課題としての認識、また実際の投資行動との関係をどう見ればよいのか。「PC/PC管理」「社内IT基盤」などにはある程度固定的なコストがかかり、電子帳簿保存法(電帳法)改正の対応もあって「紙の電子化、ペーパーレス化」にも予算が割かれている。こうした状況で、「セキュリティ対策」は強化したいものの、具体的な施策はまだ検討段階にあり、IT予算のさらなる増額は難しいと判断した企業が相当数存在するのかもしれない。

 また、「生成AI」は関心の高さとは裏腹に、投資を予定している企業は16.3%にとどまった。実際に生成AIを利用している割合が高く、関心のある割合も高かった5001人以上の企業でも「投資予定」との回答は24%にとどまった。

 5001人以上の企業が投資予定として最も多く選んだ項目は「セキュリティ対策」(45.8%)だった。「生成AI」(24%)は2位に入ったものの、セキュリティ対策の約半分の割合にとどまり、3位は「データ活用/分析」(19.8%)だった。

 セキュリティ対策に高い関心を持ちながらもコストの捻出が難しいとみられる中小企業と、生成AIやデータ活用といったビジネス戦略との結び付きが強い領域に高い関心を持つ一方で、セキュリティ対策に多額の予算を割かざるを得ない大企業の様子が浮かび上がった。

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