生産性向上ではない、強制出社の"隠された目的"
大学の研究者は、オフィスでの業務を義務付ける取り組みは、従業員の満足度を損ない、企業の利益も向上させない可能性があることを明らかにした。
ある大学が発表した新しい研究によると、オフィス出社の義務化は、従業員の満足度を損ない、企業の業績向上にも結び付かないという。
従業員をオフィスに呼び戻すのは、オフィス内での仕事が利益や生産性を高めるという信念からではないため、生産性は上がらない。本当の目論見とは。
オフィス出社の本当の目論見
ピッツバーグ大学のマーク・マー氏(ビジネス管理の領域における准教授)と、ジョセフ・M・カッツ氏(博士課程の学生)は以下のように述べた(注1)。
「私たちの研究結果は、管理職がオフィスへの復帰を権力の維持のために利用したり、業績不振の責任を従業員になすり付けるために利用したりしているという従業員の懸念と一致する」
両氏は、次のようにも述べている。
「私たちが集めた証拠は、経営者や株主がオフィスへの復帰を評価する際に役立ち、パンデミック後の効果的な職場政策を検討する企業に指針を提供できるだろう」
両氏は、オフィスへの復帰命令について、S&P 500に認定されている企業からサンプルを取ることで調査し、匿名レビューサイトを運営しているGlassdoorによる職場満足度のデータも用いて従業員への影響を調べた。企業がオフィスへの復帰命令を発表した後の従業員の総合的な職場満足度や、仕事と生活のバランス、管理職の評価の変化を調べるために差異分析テストを実施した。また、財務パフォーマンスと企業価値に対する影響も評価した。
最終的に研究者たちは、企業がオフィス復帰の義務化を展開するのは「従業員に対するコントロールを強化」するためであり(注2)、従業員を「業績悪化のスケープゴート」として利用するためであると結論付けた。また、管理職が従業員をオフィスに呼び戻すのは、オフィス内での仕事が利益や生産性を高めるという信念からではないという。
研究者たちは「企業は、従業員にオフィス復帰を強制すべきではなく、在宅勤務で成果を上げている従業員には在宅勤務を継続させるべきだ」と述べている。さらに、毎月1回、対面でチームビルディングすることで、企業文化が醸成され、ハイブリッドワークの共同作業における問題解決やブレインストーミングに役立つという。
2024年のオフィスへの復帰に関する動きは企業によって異なる(注3)。一部の従業員はオフィスへの呼び戻しに応じている一方、他の従業員は退職計画を実行に移している。
人事および採用ソフトウェアを開発するiCIMSの最新のレポートによると、従業員によっては、オフィスに戻るよりもバーチャルで対応できる国外での仕事を検討している(注4)。約3分の1の従業員が「企業がフルタイムの出社を義務付けた場合、新しい仕事を探すことを検討する」と答えている。
トレンドが変化し続ける中、従業員をオフィスに戻す際に、雇用主には注意すべきポイントがある(注5)。何よりも、リーダーは従業員への信頼を示し、従業員の希望と企業のニーズの両方に基づいて柔軟な計画を立てる必要がある。
出典:RTO may be a ‘power grab’ that doesn’t improve performance, researchers say(HR Dive)
注1:Return to Office Mandates Don’t Improve Employee or Company Performance(University of Pittsburgh)
注2:Return-to-Office Mandates(SSRN)
注3:Return-to-office trends are mixed as some workers heed the call ― and some call it quits(HR Dive)
注4:Employees ponder virtual, out-of-state jobs to avoid return-to-office mandates(HR Dive)
注5:4 mistakes to avoid when calling employees back to the office(HR Dive)
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