想像以上に歴史を変えてきたMRP “3人の始祖”から振り返る(1/3 ページ)
ERPの祖先的存在でもあるMRPには半世紀以上の歴史があり、製造業の在り方を長年にわたり大きく変えてきた。本稿ではMRPの始祖とされる3人から歴史を振り返り、そのメリットデメリットを見直していく。
資材所要量計画(MRP)は、製品の製造に必要な資材と部品を算出するシステムだ。資材と部品の在庫の把握、追加が必要な物資の特定、生産や購買のスケジューリングという3つのステップに分かれる。
歴史を変えてきたMRP
MRPは可能な限りコストを抑えて適切な在庫を確保するためのものだ。製造事業の効率性や収益性、柔軟性の向上に寄与する。工場労働者の生産性と製品品質の改善、人件費と材料費の抑制ができる他、製品需要の増加に対する迅速な対応、在庫切れや生産遅延の回避にも役立ち、結果として増収や安定化にもつながる。
MRPは製造業で広く使われており、手ごろな価格の消費財が増えて広く普及したのに間違いなく貢献している。こうしてMRPは多くの国々の生活水準を向上させてきた。MRPの登場から半世紀で製造業者が成し遂げたような急激な事業拡大は、MRPの計算とデータ管理を自動化する機能がなかったら、おそらく実現できなかっただろう。
MRPの仕組み
MRPシステムは部品構成表(BOM)の情報や在庫データ、基準日程生産計画(MPS)の情報から、必要な資材とその資源が製造の過程で必要になるタイミングを計算する。
BOMとは、製品を作るのに必要な資材や半組立品などの部品を数量と併せて網羅したリストであり、各項目の「親子関係」が分かるようになっているのが一般的だ。階層の最上位に「親」となる完成品がある。
BOMの在庫品目は「従属需要」と「独立需要」に分類される。独立需要品目とは階層のトップに位置する完成品のことだ。完成品の数量を決める際は、確定している発注を確認するとともに、市場の状況や販売実績などの指標を検討して需要を予測し、その需要を満たすための数を判断する。
一方、従属需要品目は完成品を作るのに必要な原料と部品だ。各品目の需要は、BOMの階層で1つ上に位置する部品を作るのに必要な数で決まる。
MRPはこの従属関係の追跡および管理と、基準日程生産計画が定める日までに必要な数量の算出に用いられる。別の言い方をすると、MRPは、製品の生産に必要な品目の発注と追跡のための在庫管理・制御システムといえる。
MRPのもう一つの重要概念はリードタイムだ。リードタイムにはさまざまな種類があるが、一般的なのは「資材リードタイム」(資材の発注から受け取りまでの時間)と「生産リードタイム」(資材がそろってから製品を作って出荷するまでの時間)、「顧客リードタイム」(顧客が注文してから最終的に受け取るまでにかかる時間)だ。リードタイムはMRPで計算するが、一部を業務責任者が指定して手動で入力することもある。
製品を作るのに必要な品目を指定する部品構成表(BOM)はMRPの重要なデータ源だ。
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