出社すると賃金割増? オフィスワーカーが優遇される理由
多くの雇用主がテレワーカーよりオフラインワーカーに多くの賃金の支払いを検討しているという。オフィス出社が優遇される背景とは。
オフィスで働くからといって給与が上がることはない。しかし、状況は複雑化しており、多くの雇用主がテレワーカーよりオフラインワーカーに多くの賃金の支払いを検討しているという。
オフィス出社が優遇される背景
テレワークに関するさまざまな調査の結果から、オフライン回帰の現在地が分かる。
HR関連の団体WorldatWorkのマルタ・ターバ氏(コンテンツ戦略担当 副社長)は、「一般的に、従業員が自宅ではなくオフィスで働くことだけを理由に、雇用主がオフィスワーカーに高い基本給を提供することはない」と述べた。しかし、現実はもっと複雑だと彼女は続ける。
「報酬の考え方が地理的条件に基づいていることの方が一般的だ。例えば、生活コストの高い都市にオフィスを構えるテクノロジー企業は、その地域から離れてテレワークで働く労働者の給与を調整するかもしれない。また、雇用主はオフィスで働く従業員に、通勤や食費、交通費、介護に関連する手当を検討する可能性もある」(ターバ氏)
近年、オフィスでの労働に高い給与を支給する組織を散見するようになった。2022年3月のBBCの報道でスタンフォード大学の経済学者ニコラス・ブルーム氏は、「オフィスに戻った従業員には5〜10%の賃上げの可能性がある」と語った(注1)。ウォール・ストリート・ジャーナルは2021年、不動産情報会社のCoStar Groupが「従業員を誘致するために新車と休暇費用の全額負担を提供した」と報じた(注2)。
しかし、ターバ氏によれば、報酬プランにおいて重要なのは、勤務地ではなく仕事への貢献であることが多いという。「雇用主は、公平かつ公正な方法で従業員に報酬を与えるべきで、労働の構造ではなく、従業員が何に貢献しているかに帰結する」と同氏は言う。
2023年のPayscaleのレポートによると、72%の企業が2023年の昇給決定に業績を織り込んでおり、67%が市場調整と人材獲得競争を、54%がインフレと生活費を考慮事項として挙げている(注3)。
現地勤務の影響力に対する認識
調査結果により出社の利点が幾つか分かる。例えば、2021年のガートナーの調査(HR Diveとの電子メールで共有された調査結果)では、68%のリーダーが「オフィス勤務者の方がテレワーカーよりも優れている」と回答し、80%の役員や管理職が「オフィス勤務者の方がテレワーカーよりも昇進する可能性が高い」と回答した。
従業員も同じように、オフィスワークに魅力を感じているかもしれない。2022年に米国人材派遣協会が実施した調査では、米国の回答者の半数以上が「ボーナスや昇給、昇進などの面で、フルリモートの従業員よりもオフィス勤務の従業員の方が競争上有利と考えている」と回答した(注4)。
しかし、実際に従業員のパフォーマンスを検証すると、そのような認識は正確ではないことが分かる。ガートナーのケイトリン・ダフィー氏(HRプラクティスのリサーチ・ディレクター)は「オフィス勤務以上ではないにせよ、ハイブリッド環境でも同様の生産性を生み出せることを示している。従業員はさまざまな環境で成長する。どのような環境で働くかを選択できることで、異なるワークスタイルを持つ人々の潜在能力や個性を引き出し、最高の仕事ができる」と述べた。
同様に、2024年の人事マネジメント・コンサルティング企業のMercerのレポートによると、完全にフレキシブルなワークポリシーを導入している組織では、生産性の向上がその決断の「主な原動力」となっている。また、64%の労働者がテレワークの方が生産性が高いと回答した(注5)。
出典:Extra cash for in-office work? HR should think more broadly about pay, experts say(HR Dive)
注1:Should in-office workers be paid more?(BBC)
注2:Barbados Trip? A Tesla? Returning to the Office at This Firm Has Its Rewards(THE WALL STREET JOURNAL)
注3:2024 Compensation Best Practices Report(pay scale)
注4:Employees say in-office workers have a ‘competitive advantage’(HR Dive)
注5:Workforce 2.0(Mercer)
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